第2話 3




 男共の熱い視線が注がれる中、逞しい身体を惜し気もなく晒して歩き、カウンターでマスターに軽く挨拶した恭輔さんが、特濃の雄汁を手にして俺達の陣取るボックス席へと向かってくる。

「よう、シュウ。久しぶりだな」

 さっきまで尖った空気を身に纏っていた兄貴分が向けてくれた温かい笑顔に、パッと世界が明るくなった。

「恭輔さん! お久しぶりです」
「少し痩せたんじゃねぇか」
「メシ、作るのが面倒でサボってました」
「馬鹿、しっかり食わねぇとそのうち身体壊すぞ」
「うっす……!」

 パシッと俺の胸を叩いてから隣に腰を降ろし、挨拶代わりにみんなと乾杯する恭輔さんの横で。
 俺はというと、一人感動に浸りきっていた。

 真っ先に俺を見つけて声をかけてくれた事も、本気で心配して叱ってくれた事も、嬉しい。

「シュウの兄貴ってば、恭輔さんが来るのを今か今かってずっと待ってたんすよー」
「コウキ! 余計なコト言うんじゃねぇ!」

 今か今かと待っていたのはお前の方じゃねーか。お喋りめ。

「そうか。そんな健気な弟分にはガッツリ何か食わせてやらねぇとな」

 軽く笑って、最近不摂生続きの俺のためにと大量のフードメニューを頼んでくれる恭輔さんの優しさに、またしても感動して胸が熱くなってしまった。


 特別扱い……というワケではないが、恭輔さんは俺がまだ褌を締め始めたばかりのヒヨッ子の頃から、何かと気にかけてくれている。

 オヤジ連中の多い褌仲間の間では、恭輔さんも俺も比較的若い部類に入るから、二つ三つ下で年が近い俺を弟分として可愛がってくれているだけで、それ以上の深い感情はないと分かっているんだけど。

 俺だって別に、恭輔さんと特別な仲になりたいだなんて身の程知らずな事は考えてないから、いいんだ。

 ただ、一度は触ってみたいと思わせる引き締まった形のいいケツとか、中のブツの凄さを想像させる前袋の半端ない膨らみとかをこっそりじっくり見ながら。
ムラムラ幸せな気持ちで、恭輔さんの側にいられるだけで十分だった。


「恭輔さん、マサの褌見てやってくれよ。ラメ入りなんだと」
「おー。マサさん、冒険したな」
「タケのだって、よく見ると総刺繍なんだぜ」
「俺も龍模様の黒猫にしたんすよ!」
「大分褌が似合うようになってきたじゃねぇか、コウキ」
「へへ」
「シュウは硬派だから、白の六尺が似合うな」

 褌話に夢中になりながら、運ばれてきたデカマラソーセージをはむはむ口に運ぶ。

 いつの間にか、恭輔さんに注がれていたはずのフロアの熱い視線が、俺の口元に集中している事に気付いた。



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