近頃、ツナがモテている。

「……。」

小学生からずっと一緒のツナ。初めて同じクラスになったのは小学校3年生の時だから、かれこれ8年ほどの付き合いだろうか。
中学生の頃の彼は「ダメツナ」なんて二つ名をつけられていた。勉強もダメ、運動もダメ、身長も普通、体格がしっかりしているわけでもないし、その上本人がダメツナを受け入れてしまっていることが何よりの問題だった。

『どーせ俺なんてやっても…。』

それが彼の口癖になったのは高学年の頃だ。多感な高学年、中学生にとってツナは格好の的だったのだと今は思う。家が近かったこともあり、登下校で彼と仲良くなった私は少しずつ自信を無くしていく彼の姿をずっと見てきた。

そんなツナを変えたのはあの家庭教師だった。
ツナをボンゴレファミリーのボスにする。
最初は突拍子もないおとぎ話と思っていたが、彼の近くにいたが故に私も必然的に巻き込まれていく形となり、それは決しておとぎ話ではないと身をもって知らされた。
一つ試練を乗り越えるたびに、彼は少しずつ変わっていった。否応なしに肉体も精神も鍛えられ、典型的なもやしっ子だった身体はほんの少しずつたくましくなっていったし、自信のなさから瞳に影を落としていた表情は、徐々に昔の柔らかく温かい表情が出てくる時間の方が長くなっていった。

そしてこの春。
中学ではもうダメツナとしてのイメージが独り歩きしていたため、彼の変化に気づく者はほとんどいなかったが、意図せずツナは高校デビューを果たすこととなった。元々顔立ちが悪いタイプではないし、リボーンに散々鍛えられたおかげでしゃんとした彼の姿は、もう山本君や獄寺君と並んでも霞むことはなくなった。

「ねえねえ、A組のあの3人組!」
「今年の1年の3トップっぽいよね?え、誰派?」
「私沢田君派かなあ〜。」
「分かる!沢田君癒し感やばくない?この前私プリント拾ってもらったけどほんと優しいのー!」

すれ違った3人組の女子がきゃあきゃあと声を上げる。緩く巻かれた髪、ふわりと漂う甘い香り。女子高生を謳歌する彼女たちはあまりにも眩しかった。
ツナが中学生の頃はダメダメだと言われていたなんて知ったら、彼女らはどう思うのだろうかなんて最低なことを考えながらがらりと教室のドアを開くと、放課後の教室には噂の彼しかいなかった。

「あれ、奏。忘れ物?」
「今日部活で提出しなきゃいけない書類忘れた。ツナこそ何してるの?」
「え…いや、今日提出の課題、うっかり半分やってなかったんだよね…。」


指先から紡ぐ幸福論



prev | next

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -