渡しそびれた大切な物(コトバ)〜3〜





今、僕の心は激しく揺れている。
でも、コーナーキックの位置に行くまで、それを全て消してしまわなければならない。
邪念は余計なミスに繋がる。
それでも、僕の涙は止まらなかった。
僕が・・・僕が、うまく先取点を取ることができれば・・・こんな風にはならなかったはずなのに・・・

***

「俺達のことを心配してくれるのはありがたいことだけど・・・その優しさは捨てろ、岬。だって・・・」

「オリンピックに出て金メダルをとること・・・・それは岬、おまえの夢なんだろ」

「そしてそれは俺達黄金世代(G-23)全員の夢でもあるんだ!!」

立花兄弟をみると、二人は笑っていた。

「夢のため・・・」

「明日は頼むぜ!」
「俺達に最高のセンタリングを上げてくれよ」

***

歩きながら、昨日話した二人との会話を思い出す。
二人の意思はもう決まっている。
それなら・・・それを無下にすることは・・・できない。

夢のため・・・
このチームをオリンピックに導くため・・・

僕は・・・

優しさを捨てる!

そう思い、コーナーキックの位置につきボールを置いて、涙を拭った。

目の前に見えるのは、ゴールと立花兄弟。
僕がすることは、もう決まっている。

優しさを捨てる代わりに・・・僕は最高のセンタリングを上げる

頼むぞ・・・
立花兄弟!

そのボールは高く高く舞い上がった。
そして政夫と和夫がそのボールに合わせて走る。

「政夫!」
「和夫!」

チームの皆も驚愕の声を上げた。
これは、僕と二人と・・・監督しか知らない約束。

「これが俺達最後の飛行(フライト)」
「見せてやるぜ!!」
「・・・!!」

―――話はつきました。
―――吉良監督。

―――明日・・・絶対に欲しい早い段階での先取点・・・

―――必ず取ろう!
―――はい!!

立花兄弟が飛ぶ体勢に入る。目が離せなかった。

「これが俺達の・・・」
「ファイナルスカイラブハリケーンだ!!」

「な・・・」
「なにィ!?」

敵、味方・・・どちらとも驚愕していた。まさかここで、封印されていたスカイラブハリケーンを行うとは誰も思っていなかった。僕ら以外は・・・
その時・・・

「・・・!!」
「ぐっ!!」

・・・聞こえた。聞こえてしまった。
二人の両足の異常を示す鈍い音が・・・

「後は頼んだぜ、みんな!!」
「これが俺達の置き土産だ!!」

政夫を土台として、高さを誇るオーストラリア守備陣のその誰よりも高く舞った・・・和夫の遥か上空から叩きつけるヘディングシュート。
ボールはゴールマウスの中でワンバウンドして、そして天井ネットに突き刺さった。
二人は見事に決めた。そして約束を守った。
ファイナルスカイラブハリケーンを見事に決めた。

だけど・・・その代償はあまりにも大きすぎた。

だから僕らは、この二人のプレーを無駄にしてはいけない・・・。
すかさずボールを取りに行った。

「とるぞみんな!立花兄弟の決死のプレーに応えるためにも前半のうちにもう1点とるぞ!!」

「おうよ岬!」
「そうだ、岬の言う通りだ!」
「もう1点取るぞ!」

ありがとう、政夫、和夫。
君たちの”闘志”に必ず応えてみせる。

必ず、オリンピック出場を決めて、みんなで夢を叶えるんだ・・・!!




―――――――――――――――――――
「渡しそびれた大切な物(コトバ)」の3話目です。

これも前回の続きで、原作をもとにして書いてます。
でも、この原作を見ると・・・立花兄弟すげえ・・・
かっこいいですね!!
凄く泣けます・・・

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