渡しそびれた大切な物(コトバ)〜2〜





オリンピックへの切符をかけた最終予選。
僕たちは今、オーストラリアと戦っている。
アウェイ戦ではそのパワー溢れるプレイに敗れたけど・・・今度はホームで、3点差をつけて勝たなければならない。
そうしなければ、僕たちの夢は終わってしまう。
オリンピックへの切符が・・・

「岬!!」

横をみると、立花兄弟が僕からのボールを待っていた。

そこで、ふと昨日の立花兄弟との会話が頭に蘇ってきた・・・―――

***

「だから・・・岬、明日のオーストラリア戦で放つ・・・俺たちのスカイラブハリケーンが、多分最後のスカイラブハリケーンになるんだ。」
「立花兄弟・・・」

立花兄弟が言う意味が、どういうことを指しているのか・・・それは、自分たちにとっても、この二人にとっても、とても辛いことであった。
僕は思わずそのことを口にした。

「でもそれをしてしまったら君達のオリンピック本戦出場は・・・それに・・・もしかしたら選手生命だって・・・」
「まあそこまではいかねえと思うが」
「そういう可能性もあることも事実だな」

「でも明日オーストラリアに3点差以上で勝つにはこの技が絶対必要だということも事実だ」

そういう立花兄弟二人の目は、揺るぎがなかった。
全日本の勝利だけを見据えていた。

「オリンピックアジア予選最後の大一番を飾る俺達の・・・”ファイナルスカイラブハリケーン”」
「その技を完璧に決めるために、そのセンタリングは岬、おまえに上げてほしいんだ。」

そう言って二人は強気な目で笑い、僕を見た。
でも、僕は・・・―――

***

(こい!岬!俺達は必ず決める!!)

チラッと立花兄弟の方を見ると、二人もこちらに合図を送っていた。
確かに絶好のチャンス。これを決めれば今後の試合の運びも有利になる。
・・・だけど・・・やっぱり、僕は・・・

「岬!?」

立花兄弟の声が聞こえた。でも僕は、スカイラブを使わず先取点を奪えるならその方が・・・

「タケシ!」
「岬さん!」

うまく的のマークを交わしてフォローに来てくれたタケシをワンツーリターンをし、ボールをゴールへと運ぶ。
だけど・・・

「わっ!?」

オーストラリア側からの2段タックルを受け、そのボールは奪われてしまった。
でもそのボールも敵の足から離れ、日本のコーナーキックとなった。
その時・・・

「どういうことだ岬!!」
「ふざけんな岬!!」

立花兄弟の罵声が聞こえ、そちらを見ると・・・

「おまえの夢は・・・おまえのオリンピックにかける想いはそんなハンパなものだったのかよ!!」

その言葉に、体が震える。そんな筈がない。僕は昔からオリンピックに出場して日本を優勝させることが夢だったんだ。

「昨日も言ったはずだ!おまえがその優しさからの迷いを試合中は捨てないかぎり、おまえは大空翼に一生追いつくことは出来ないんだよ!!」
「!!」

言葉を失った。僕は・・・まだ甘い?
立花兄弟にスカイラブをなるべく打たせたくないという判断は・・・間違い?
本当に日本の勝利を願うなら・・・これは、避けられない道・・・?

僕は、迷いを捨てるべきなんだろうか・・・

「もういい、おまえには頼まねえ!!松山、おまえがコーナーを蹴ってくれ!!ゴール前に高々と上げてくれ!!」
「えっ」

立花兄弟の頼みに、松山が困惑している気配を感じた。
ダメだ・・・松山は何も知らない。
そして、責任感のある彼がそのボールを高々と蹴ったら・・・間違いなく、自分を責めるだろう。

「いや・・・コーナーは僕が蹴る」

「えっ」
「岬・・・」

今、みんなの方を振り返ることは出来ない。何故なら・・・僕は・・・
この涙は僕の甘えだ。僕の悔しさだ。

プレーに迷った時僕はこう考える・・・もしも翼くんだったらどうするのだろうかと・・・
もしも翼くんなら立花兄弟にスカイラブを使わせることなく、きっと自分の力で先取点を取ることができただろう。

でも・・・僕には、今・・・

それが、できなかった。




―――――――――――――――――――
長々と待たせてしまってすみません!
「渡しそびれた大切な物(コトバ)」の2話目です。

急に話は飛びますが、今回はほぼGOLDEN-23の10巻の始めの話を書いています。
次もこれの続きです。

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