渡しそびれた大切な物(コトバ)〜4〜





オリンピックの切符をかけたオーストラリア戦。
結果は・・・4−1。最後に岬が決めて、俺達はオリンピックへの切符を取ることができたのだ。

その後みんなで記念写真をとって・・・みんな、笑っていた。
岬も笑っていた。

そんな岬をみて、俺の心に小さな疑心が湧き上がる。

なんだかスッキリしない。気持ち悪い。
せっかく予選を勝ち抜いたってのに・・・なんなんだよ、この感情は。

確か・・・昔もそんな感じになったことがあった覚えがある。
そう、あれは・・・

***

「もう、行っちまうのか?」
「・・・うん、もう行かなきゃ。父さんが待ってるから・・・」

そうだ、この時。この前夢で見た、懐かしい昔の記憶・・・。

「・・・お前は・・・」

俺は、その時幼ながらも感じたんだ。岬は・・・

「・・・何?」

その時の岬の顔は、俺が何を言おうとしてるのかわからないという顔だった。
・・・いや、もしかしたら言って欲しくなかったのかもしれない。だからわざとあんな顔したのかもしれない。

「・・・っ、何でもねぇ。」

そう。俺は・・・言えなかったんだ。
言ったところで子供の俺達にどうにかできることじゃなかった。
それにあの時は、自分の勘違いかもしれないって思ったんだ。

「変な松山。」
「・・・うるせぇ。」

そうして、いつもどおりの会話をして、何もなかったように、俺達は別れた。

でも本当は俺、あの時岬に聞きたかった。

お前さ、本当は・・・

***

「・・・松山?」

岬に声をかけられ、ハッとする。
気がついたらみんなが俺の方を見てた。

「・・・あ・・・え?」
「松山、キャプテンのインタビューだって言ってたけど・・・」
「大丈夫?具合、悪いのかい?」

岬や三杉、それに共に戦った仲間たちが俺を心配そうに見ている。
俺は辺りを見渡し、もう一度岬の顔をみた。
岬は本当に心配そうに俺の顔を見ていた。

(・・・岬、お前は・・・)

俺はそんな岬の顔を見て、グっと拳を握り締めた。そして一瞬俯く。
もう一度顔を上げた時には、気持ちを切り替えて笑っていられる様に。
そうだ、今はオリンピックの切符を決めたばかりなんだ。翼がいない今は俺がしっかりしなくちゃいけない。
そう思い、気合を入れて顔を上げた。

「・・・よし!行ってくる!」
「本当に大丈夫か?」
「当たり前だろ?こんなおいしい瞬間を逃してどうすんだよ!」

笑いながらそういう俺に、皆もどっと笑いながら「いつもの松山だ、これなら大丈夫だな。」と言っていた。

インタビューに行く瞬間、もう一度ちらりと岬を見ると・・・

その瞳は、遠くを見つめていた。




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「渡しそびれた大切な物(コトバ)」の4話目です。

原作では確かここで終わってるんですよね。
今回は比較的短めかもです。

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