不思議なアイロニー


9/22〜10/27までの拍手お礼文、君の世界番外6、双子のイヴとネズミ


「ねぇ、ネズミちゃん」
「…なんだよ」
「ふふっ、すごいしかめっ面。皺が刻まれてるよ?」
「うるさい」


ニー


アメリカから帰国してきてから、何故だかイヴはネズミの部屋に入り浸っていた。
勝手にベッドを占領して一日中ごろごろしながら、ネズミをからかう。

「おい、イヴ」
「んー?」
「出てけよ、自分の部屋があるだろ」
「えー。だって、寂しいじゃん」
「は?」
「つれないなぁネズミは。せっかくお兄ちゃんが帰って来てるのに」
「はあ?」

くすっ。
何がおかしいのか、イヴは小さく笑い、立ち上がる。
長い髪がさらりと揺れた。日本にいた時はウィッグを被っていたが、アメリカに行っている間に伸ばしたらしい。

「ネズミ」

イヴはなめらかな動作でネズミを捕まえると、真正面から灰色の瞳を覗き込む。

「な、なんだよ」

じり、とネズミは後ずさるが、すぐに背中に壁が当たる。
両肩にイヴの手が置かれていて、動けない。

「…ね、あの人に本気なの?」
「は?」
「ケーキ、作ってたでしょ」
「なんで、そんなこと聞くんだ」
「おれ、奪っちゃおうかなぁ、その人」
「は、イヴ、何を」
「…ふふっ、冗談だよ、ネズミ。でも…」

すっとイヴは目線を逸らし、ふぅとため息をつく。
それからおもむろに、ぎゅうとネズミを抱き締める。

「…イヴ?どうしたの?具合でも悪い?」
「ううん」

ネズミの肩に顔を埋めたまま、イヴは幼子のように首を振る。

「なんか…おもしろくないなぁって」
「は?」
「おれだけ、仲間はずれじゃん。学校、行きたいなぁ…」
「え、でも、おまえまた、すぐにアメリカ戻るだろ?」
「まだ1ヶ月こっちにいるし…。あ、そっか」
「イヴ?」
「行きたいなら、行けばいいんだよな。ちょっと国際電話…」
「え、何を…」
「父さんに電話する。すぐ転入手続きしてもらうもんね」

イヴは、ぱっとネズミを放り出し、軽い足取りで電話に走っていく。
部屋には憮然としたネズミが取り残されていた。


ネズミ、ネズミ!

……。

あっ、無視すんなよ。早速来週から、おれも学校行けるぜ!

…そりゃあ、良かったな

てことだから、今から制服買いに行く

あっ、そう。お兄ちゃんいってらっしゃい

おまえなぁ。一緒に来てよ

やだ

ふんっ、拒否権なんてあるわけないだろ、ネズミちゃん。ほら行くよー


(つづく)

今回は紫苑さん不在ですごめんなさいm(__)m
でも次回はネズミのクラスにイヴが転入してくるので、担任の紫苑先生もきっと出番あります。きっと。

イヴとネズミが大好きすぎて…!
イヴ×ネズミ…マイナージャンルなのは分かってます、ええ(・ω・´)
あ、いや、君の世界は紫ネズだけども…



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