君の隣は特等席


9/13〜9/21までの拍手お礼文、君の世界番外5


すぅ。

そんな寝息が聞こえてきそうな安らかな寝顔で、ネズミは机に突っ伏して眠っていた。
紫苑の授業中にしては珍しい事だ。

久しぶりに見るネズミの居眠りに、紫苑はくすりと笑った。





授業が始まって5分と経たないうちに、ネズミはことんと机に頭を乗せ、寝入ってしまった。
起きろと注意しようとした紫苑だったが、その寝顔があまりに天使だったため、起こすことができなかった。

紫苑は教壇で授業をしながら、熟睡しているネズミをそっと見る。

よっぽど、疲れていたんだろうな。

そう思って見ていたら、ネズミの隣の席の女の子が、同じようにネズミを見ていることに気付く。
彼女も顔を和ませ、ネズミを起こすわけでもなく、ネズミを見ている。

あの子、ネズミのことが好きだったのか。

不思議と嫉妬は感じない。
彼女の視線に、暖かい母性愛のようなものを感じたからだろうか。
それとも、優越感からか。

優越感…ね。

そんなもの、感じるはずがない。

ネズミは誰にも捕まらぬ蝶。
ひらりひらりと自由に飛ぶ彼は、つかの間ぼくの肩で羽を休めているだけ。
だからいつか、きみはぼくを離れていくのだろう。

ぼんやりと、そう思う。
寂しいような切ないような思いに胸を締め付けられながら、紫苑は事務的に授業を進める。
教科書を読み解き、ポイントを板書し、最後にプリントを配る。

「今日の授業のまとめプリントだ。今から解いて、残りは宿題ね」

起きている生徒は、宿題を減らそうとシャーペンを握る。
ネズミは起きただろうかと見遣ると、すやすやと眠っている。
起こさないようにと誰かが気を遣ったのだろうか、配られたプリントを頭に載せている。

するり。かさっ。

ネズミのプリントが滑り落ちる。

…あ。

すると、隣の女の子が床からそれを拾い、すっとネズミの机へ置く。

その一連の動きに気付きもせず、ネズミは眠り続ける。
結局、ネズミが目を覚ましたのは終業のチャイムが鳴った時だった。


あ、起きたんだ。おはよう、ネズミ

ん…?ああ…。…って、えっ、おれ、ずっと寝てた…?

うん、ぐっすり寝てたよ、寝顔すっごく可愛かった

ちょ…っ、起こしてよ!普通、教師なんだから起こすだろ!

えー、だって起こすの勿体なかったから

は?

天使みたいだった。きみのお隣の席の子が、羨ましいな



end.

今回はしっとりです。
ネズミに癒されながらもちょっと寂しくなる紫苑さん。
目が覚めたネズミは、紫苑にずっと寝顔見られてたことに怒ってますw
でも怒るネズミも可愛いなと、紫苑さんはやっぱりデレるww



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