新妻紫苑さん


ドアを開けると、こげくさい匂いを含んだ煙が押し寄せてきた。
急いで煙の流れてくる台所へ向かう。

「お…おい、紫苑!?大丈夫か?」
「けほっ、ん、ネ…ネズミ?」

もうもう湯気と煙が立ちこめるなかで、紫苑はフライパン片手に涙目で立っていた。

「ごめんネズミ…まだお風呂沸かしてな…」
「いや、いいから!それよりこの煙は?」
「ちょっと焦がしちゃって…」
「は?え…ちょ、ばか、換気扇回せよ!こもっちゃってるだろ」
「あっ、忘れてた。そっかあ、換気扇かあ」

のほほんと笑う紫苑に嘆息し、換気扇のスイッチをパチンと付ける。ついでにネズミは窓も開け放した。
とにかくこの煙をどうにかしなければ。

ネズミが動き回っている間に、紫苑は苦心して作った料理を皿に盛り付けていく。

「…できたよ、ネズミ」
「うん?」
「おなか、すいたでしょ?…あんまり、上手くは…出来なかったんだけ…ど」

テーブルには、焦げたサンマの丸焼きやら、焼きすぎたモヤシ炒めやら、茹ですぎて原形を崩したホウレン草などが並んでいた。ちなみにご飯は、水が多すぎたようでほとんどお粥状態。お茶碗のなかで米粒が不気味に肥大していた。

「ネズミが前、火が通ってないものは嫌だって言ってたから…そしたら加減を間違えたみたいで…」

自分のものはよそわず、ネズミの正面に座った紫苑は項垂れ、ぽつりぽつりと言葉をこぼす。
ネズミは黙って箸を取り、どろりとした料理の数々を全て腹におさめる。

「…ごめんね、ネズミ…次はもっと…ぼく…」

しおれた紫苑は今にも泣きそうだ。
ネズミは流し台へ食器を持っていき、たらいの水にしずめた。
ふと三角コーナーが目に入る。
そこには、けっこうな量の失敗作の残骸が捨ててあった。苦労のあとが伺える。

ネズミはくるりと振り向き、力なく俯いた紫苑の髪に触れる。

「紫苑」
「ネズ…」
「ありがとな。じゃ、」

その細い顎に手をかけ、上向かせる。
深い色の聡明な瞳を覗き込み、ネズミは微笑んだ。

「つぎ、あんたいただいていい?」


fin.
2011.12.07

リアタイでの、リツイート書き換えの話から派生。
「失敗した料理を黙って全部食べてくれるネズミさん」でした!
男前ネズミさんが…最後の一言で台無し/(^o^)\

ていうか私…失敗した料理っていうのを…あまり食べたことなくて…失敗料理の描写がいまいちorz
母がね、適当に何でも作れるので…まずいもの出された記憶がない…。
自分でも…パン焦がしたのと、塩胡椒だと思って振りかけたらバジル入りの岩塩で味付けが妙になったあばばば、っていうのくらい…かな。
ガーコと実験的にレンジだけでポテトサラダ作ったあれも、けっこう食えたし!
まだ私自身に料理の経験あまりないんで…やっぱり知らないことは書けんね(・ω・`)経験積まなきゃ!


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