モノノ怪 短編 | ナノ
学園パロディ
テストが終わった時、皆が大概声を出す。
声と言ってもそれは意味を成さない音で、例えてるなら感嘆。そう感嘆なのだよ明智クン。
そして音の語尾が上がる者と、語尾が下がる者に分かれる。
勿論その分かれ目は、テストの出来次第な訳で。
私は今回も残念なことに、終わった瞬間に解放感に浸って語尾を上げられず、テスト結果を思って溜め息もどきを吐いた。
溜め息もどきなのは、溜め息を吐いたら幸せが一つ逃げてしまうからだ。
光陰矢のごとし
命短し学生諸君
「そんなに危険、なんで?」
「危険だとか危険じゃないとか以前の問題だね。例えるなら地雷を踏んでヤッベー動けねー動いたら爆発だぜ?って状況」
「なら、動かなければ、良いじゃないですか」
「ノンノンノン、それにはタイムリミットがついてるわけ。だから動こうが動かまいが死亡フラグは立ってる訳よ」
「でしたら、潔く、赤点の対策でも、しなさいよ」
「嫌だよ、今日は一緒に映画見る約束したじゃん」
チケットももう学割で買ったんだから、今更帰って勉強しろなんて止めてよね。
見たい映画が開始するまで後一時間とちょっと。
時間潰しと腹ごしらえを兼ねて入ったファミレスで一緒に食事を摂るのは、薬売り。
勿論本名が薬売りな訳ではなくて、家が薬局だから薬売りとあだ名がついただけ。
それは小学校に入学した時についたあだ名で、幼稚園の時から仲が良かった私は別のクラスにいたのに何故かその呼び名が感染して10年経った今でもその呼び方は変わらない。
というか、今更名前で呼ぶのは変な気がして、私は周りが名前で呼ぼうが薬売りと呼んでいる。
それを本人も良しとしているみたいなので、私も気兼ね無く薬売りと呼ぶ。
あぁそれにしても午前で学校が終わる日は午後が自由だから文句のつけようがないね。
これでテスト期間でもなければどれだけ心安らかだろう。
毎日午前だけで良いよ。
これからも今後も午後がフリーなら毎日遊ぶよ、お金が許す範囲内でね。
「何問くらい、解いたんで?」
「覚えてない」
「使えない脳味噌だ」
「使える脳ミソなら苦労はしないって」
「そうですね」
「ちくしょー。お偉いさんに下々の気持ちなんか分かりゃしないんだ!」
「分かろうという気も、ありません」
「薬売りの脳ミソ欲しい。よし、今年のサンタさんへのお願いはこれにしよう」
「そんな可愛くないお願い、サンタも断りますよ」
「サンタさんはケチだ」
「犯罪者にしたいんですか、両親を」
「交換なら良いんじゃない?」
「良くない。俺は、名前の脳味噌は、嫌だ」
「熨斗をつけてあげるよ?サイズはM、ちょうど良いでしょ」
「何が良いんだ、返品します。あ、クーリングオフって、書きました?」
またテストの話かよ、この馬鹿野郎。
その話題に触れたくない乙女心も分からんような奴に育てた覚えはないんだけどね。
幼馴染みにこんなに繊細かつ豪快な女の子がいるのに、何でこんな風に育ったのやら。
私の方が逞しい。
否、今はそういうことではなくて。
「書いたような書いてないような」
「結構あそこの関連問題、点数高かったんです、けどね」
「そう言われると書いたような気がする」
「都合の良い頭ですね」
あぁ畜生薬売りめ。
そうだよ私の脳ミソは良い解釈しかしないんだよ。
そんなの長い付き合いから知っているくせに、私に期待させるようなことを言うんだからタチが悪い。
「でもさ、忘れたことってどうしても良い風に考えちゃうよね。夏休みの宿題を最後までやらないのもまさにそれだよ。未来の自分にヨロシクできるからやらないの。お分かり?」
「よくそんな弁明が出来ますね、呆れを越えて、尊敬、します」
「じゃあもっと敬いなさいよ」
「嫌ですよ」
「うわっ可愛くない」
「男が可愛くて、どうしますか」
「愛でてやるよ、近う寄れ」
「女の言う、台詞、ではない」
「性別で差別はいただけないね。男女平等を私は申し出るよ」
「世の中そんなに、甘くは、ない」
「うっせ」
フリードリンクで注いできたジュースを飲む。
ファミレスで働いている子に一杯四円にもならないと言われた時にはボッタクリだと騒いだけれど、経営ってそんなものだよと言われて納得した。
知っててフリードリンクを選ぶんだから、私は社会、と言うよりこの会社の運営に貢献してる。
頭が悪くても社会に貢献できるんだから私って存在する価値が大分あるね。
外を眺めると、私服の人ばかり。
それはそうか、平日だしね。
そう思うと昼過ぎの今、制服の自分達はちょっと異質な存在。
ズル休みとかだったらちょっと気が引けるけど、今はテスト期間だから堂々と出来る。
この貴重な感覚が、私は好きだ。
ブレザーの下にまだセーターを着ているけれど、陽射しを受ければ暑く感じる今日この頃。
周りの服も重たさがなくなり始めている。
「……これから春かぁ」
呟けば、薬売りはそうですね。とやる気のない言葉。
「映画まで後どれくらい?」
問えば袖を少し捲って、腕時計を見てる。
細い腕。
本当、産まれてくる性別間違えちゃってるよ。
「50分、ですね」
「なっげー」
「汚い、口調だ」
ストローを噛む。
癖ではなく、中にある不満を解消する行為だ。
「早く見たいなー」
「そうですね」
先に買った全席指定の映画館の券。
見易い中央が取れたから、今日は良い日なんだと思う。
だからテストも、たぶん大丈夫。
あぁやっぱり私はお気楽だ。
でも人生という時間は少ないんだから、何事も楽しんでいなくちゃね。
うん、お気楽最高!
〜戯言〜
紗夜様のリクエスト『学園パロディ』です。
どうでしょうか?
パロディって難しいですね。
こんな物でも、お口に合ったならば幸いです。
どうでも良いですが、
高校生は羽化したてで羽の乾いていない蝶々だと思っています。
中学生は蛹で、小学生はイモ虫。
若いって素晴らしいと書いてて思いました。
どうでも良いですね。
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