はいでえ!比嘉中!! | ナノ
入学式:ほのぼの:全員
白ではないスーツに袖を通す。
鏡に映った自分は見慣れない姿。
それにちょっとした照れ臭さを感じて、でもやっぱり嬉しくて、変な気分。
「裕次郎!へーくしーよーさい!」
時計を見ると針が時間の経過を教えていて、慌てて玄関に向かう。
「忘れ物やねーらん?」
多分。と答えて靴を履く。
向かう先は、高校。
入学式
着いた高校は、もう人で溢れかえっていた。
「あんまーや先んかい受け付けんかいいちゅんわね」
「あーい」
周りを見回していると、人が多くても背の大きい奴はすぐに見つけられる。
「ちねー!」
少し下を向いていた知念が振り返って、俺の方を向くと笑った。
隣に誰かがいるのだろう、何か話している。
「うきみそーち、知念」
「うきみそーち、裕次郎君」
「遅いよ甲斐クン」
「ごめんちゃい、木手」
「携帯鳴らしても出ないからヒヤヒヤしたさぁ」
「しんけん?」
鞄の中を漁ると、携帯が入ってない。
慧君はやっぱり、と言う。
きっと今頃枕元で着信有りを告げるようにチカチカ点滅しているに違いない。
「また遅刻かと思ったさぁ」
「もう中学生じゃないやさ、遅刻はしないどぅ」
凛はどうだろうなと笑う。
そういう凛こそ遅刻するくせに、と言うと、これからは知念が朝寄ってくれるから平気だと笑った。
知念と凛の家は近所だし(なんてったって小学校も一緒なんだ)、知念が学校に行く途中に凛の家はあるから朝一緒に行くのだという。
羨ましい。
俺は小学校も皆と違うし、朝寄ってくれる人がいないから、遅刻する可能性が結構高いんだ。
いや、でも、待てよ。
「慧君、木手」
「何?」
「ぬーがや」
「やったーの行き道の途中に、ちょっと横道と通ったらわんぬ家があるやしが」
「……自分で起きなさいよ」
「まぁ通り道やし、いいやさ木手」
慧君の台詞に木手は眉根を寄せて、それから仕方ないね。と言った。
「よっしゃ!」
これで遅刻の心配はない。
凛は木手に起こされるのはごめんさぁと言った。
木手が笑う。
「……木手?」
「起きなかったらゴーヤーですね」
「あきさみよー!」
しまった。
木手に起こされるって、リスクを背負うものなんだ。
さよなら清々しい朝。
こんにちはゴーヤー攻めの朝。
「知念クンもゴーヤー持っていきなさいよ。平古場クンはなかなか起きないよ」
「……考えとく」
知念のことだから持っていかないんだろうな。
知念は優しすぎるんだ。
ブツ、と放送機がマイクの電源を入れた音をとらえる。
つい反応して、皆でスピーカーを見上げてしまうのは中学校からある癖だ。
『新入生の皆さん、体育館に入場してください』
お互いを見合う。
今日から始まる高校生活。
木手と知念は安全圏だった。
慧君はきっと大丈夫という圏内。
俺は五分五分。
凛は危険で、最後まで1ランク落とせって言われていた。
けれど皆で同じ制服。
同じ敷地内。
それが凄く嬉しい。
クラスはまだ分からないけれど、クラスが離れても俺たちは一緒で、それは変わらない。
「ほら甲斐クン、行きますよ」
前方を歩く木手、知念、慧君、凛。
望んだ未来が今、ここにある。
「今行くさぁ!」
*へーくしーよーさい=早くしなさい
*忘れ物やねーらん?=忘れ物はない?
*あんまーや先んかい受け付けんかいいちゅんわね=お母さんは先に受け付けに行ってるわね
〜戯言〜
入学をUPしていなかったのに気が付いて、今更ですがUPします。
皆が同じ高校行っていたら良いという妄想の産物。
彼等がばらばらになるのは大学からで良いです。でも休みがあるたびに地方に行った子達は戻ってきて、皆で過ごせば良いと思います。
もし大学云々の話題で喧嘩はしても仲直りすれば良いんだよ。
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