はいでえ!比嘉中!! | ナノ
むしゃくしゃ:しんみり:平古場+知念
「わんはやーが嫌いだ」
その一言に、当番日誌を書いていた男の手が、止まった。
むしゃくしゃしてやった
今は反省している
知念の手は、身体に比例して大きい。
その手がシャープペンを動かして綺麗な字を書き残していく。
それを知念の前の席に座って眺めていた平古場が急に嫌いだと言ってきたから、文字は増えることをやめてしまった。
放課後の教室。
白いカーテンがゆらゆら揺れながら、数秒だけ、平古場と知念の間を遮る白い壁となる。
知念は書く姿勢のまま頭だけ動かして、平古場を視界に入れる。
風の吹くままに揺れる金髪は、金の稲穂のようだ。
何も言わずに己を見る知念に、平古場は無表情から少しだけ眉根を寄せた。
もっとも、それは一瞬であって、すぐにまた元の無表情に戻ったのだが。
「わんはやーが嫌いだ」
二度目の言葉を知念は黙って、平古場と同様に無表情のまま言葉を聞く。
「ムカつく」
「……」
「ふらー」
「……」
「嫌いだ」
「……」
「消えろ」
知念は平古場から視線を外すと、何も言わずに当番日誌を閉じる。
シャープペンは筆箱にしまうと鞄に入れた。
「……」
「……」
平古場は何も言わない。
知念もやはり何も言わずに席を立って、廊下まで行くと後ろ手に扉を閉めて教室を出ていってしまった。
平古場は頭をがしがしと掻く。
それからすぐに席を立つと走って、閉められた扉を勢いよく開けて、廊下に飛び出すと知念の歩いていった方に叫んだ。
「ふりむん!」
歩みを止めた知念が振り返って、平古場を見る。
平古場は走り寄って、自分の目線の高さにある襟元を掴んだ。
「えー知念!」
「……」
「ぬーかあびれ!」
「……ぬー」
「そうじゃねえやっし!」
「まだ言い足りなかったか」
「違うわふらー!」
下から睨み付けてる平古場に、知念は一体なんだと眉根を寄せた。
そんな知念に、平古場は余計表情を険しくする。
「な!ん!で!やーは悪口言われて言い返さない!」
「凛くんの悪口は、無い」
「くぬっ……良いこと言うな」
「いい加減襟離してくれ」
「まだ離さねぇ。消えろって言ったら本当に出ていくふりむん何処にいる!」
「……ここに」
「認めんな!少しは何で急にとか、理不尽だって思ったりとかするだろ!第一わったーは友達だぞ?何であっさり……あぁもう何なんだよ!」
「何か……」
「あ?」
「わんが何かをしたかと思った」
「は?」
「気付かない内に嫌われる事をしたと思った」
「何でそう思うかな」
「性分だ」
「あのなぁ、知念は友達相手だとまず疑わないから駄目やっさ。何でも鵜呑みにすんな、少しは疑え。今のだって本心じゃなくて、ただ虫の居所が悪かったとか、癇癪起こしてたとか、あるだろ!とにかく!わんは知念の友達で、嫌うわけ無い!まずそこに気付け!気付けっつうか分かれ!何言ってんだこいつくらい思え!」
「……気を付ける」
「気を付けるじゃない!知念の友達をやめたいと思うわけないからな!だから悪口を言ってもそれは本心じゃねぇ!」
「うん」
「だからあっさり身を引こうとすんな!」
「うん」
「よし!指切りな」
ようやく解放された襟元。
代わりに平古場の小指が差し出されて、知念の長い指が通常サイズの小指と絡み合って、それが上下に動かされる。
「ゆーびきーりげーんまーんうそつーいたーらはーりせんぼんのーます!ゆびきった!これでよし」
「……」
「これでわったーは永遠の友達だ」
「そっちの指切りか」
「ちげーよ。沢山意味つまってんだ」
知念はそうか、と沢山の意味が何か曖昧なままだというのにゆびきりを受け入れた。
「機嫌が悪いのか」
「おう!悪い!」
「ぬーがあった?」
「知念が悪い」
「解答になってないさぁ」
「虫の居所が悪い」
「八つ当たりか」
「そうだ」
「そうか」
「……」
「……」
「ごめんな知念」
「別に、気にしてない」
「気にしろよ!」
「言い直す、今はもうしてない」
「ならよし」
〜戯言〜
何が言いたいのか分かりませんね。
ただ(平古場から一方的な)喧嘩をしても仲直りするよって話です。
ただし、知念が怒った時はなかなか口をきいてもらえなくて、平古場が甲斐や木手に助けを求めていたら可愛いですね。
これからは平古場が「嫌いだ!」と言っても、知念が「はいはい」と受け流されとけば良い。
まるで兄弟ですね。
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