はいでえ!比嘉中!! | ナノ
思い切り楽しんで:しんみり:全員
思い切り楽しんで
せっかくやって来た東京。
全国大会で負けたからって、気持ちを引きずって何もせずに帰るのはもったいない。
それは旅館での朝食の時間。
「永四郎!わったーモノレールに乗りぶさん!」
昨日はメイド喫茶に行って帰るなり永四郎君に叱られた。
今日はおとなしくするべきかとも考えたけど、せっかくの東京だ。
遊ばなくってどうする。
裕次郎と慧と昨日話してて、今日はモノレールに乗ろうと決めた。
三人で知念と永四郎も行くだろ?と言えば、永四郎はご飯を口に運んでこっちを見ようともしない。
知念は俺達が企画を提示したときに楽しそうにしたけど、そんな永四郎を見て困った様に俺たちの方に視線を向けた。
「ほら、永四郎も行ちゅん!」
「うちなーにモノレールは無いんばーよ!」
「行きたいなら君たちだけで行けば良いじゃない」
やっぱりそうくるか。
俺はそういう返事が来るだろうって予想してたから良かったけど、裕次郎なんて落ち込んでしまった。
甲斐は一人でも欠けるのが嫌なんだ。
皆で一緒に遊びたいってよく言ってる。
永四郎は大概付き合うけど、今日断ったのは気分が乗らないからなんだろう。
そりゃそうだ、だって俺たちは一昨日全敗した。
確かにそれを考えると悔しい。
でもそんな考えたところで変わりもしない過去の事をうじうじ考えて、今の時間を無駄に過ごすのはもったいない。
永四郎は完璧主義者だから負けが許せないのは分かるけど、そんなに一人でモヤモヤ考えてどうするよ。
落ち込みすぎだ。
息抜きしなくちゃやってられないだろうに。
「永四郎もいちゅん!」
わざと裕次郎に言えば、裕次郎は一瞬ポカンとした後すぐにニヤリと笑ってかけてもいない眼鏡を正した。
「もちろんです」
口調まで真似して、しかもそれが似てるから笑ってしまう。
知念も笑いたいのを堪えてるけど、肩が揺れてるから分かる。
「こら二人とも」
「良いさぁ、永四郎君もいか」
「知念君、行きたいなら君も行きなさい。俺は残ります」
「ブー!もう決まったさぁ、木手もいちゅん!」
「こら甲斐君、勝手に決めないの」
「ぬーがや!木手は高所恐怖症ばー?」
「それはありませんよ」
「じゃあ決定!」
永四郎は仕方ない。と言いたげに溜め息をついた。
そうそう、それでこそ永四郎だ。
こういうわがままには折れなくちゃ。
「仕方ありませんね」
「っしゃー!」
折れた永四郎に、裕次郎がガッツポーズする。
絶対に口には出さないけど、永四郎がお父さんで裕次郎が小さな息子みたいだ。
休日に父親に遊ぼうってねだるのが頭に受かぶ。
「早く食っていちゅん」
隣の慧はもう朝食を平らげて暇をしてる。
食べることに集中してたから、お前はさっきまで静かだったのか。
「やーが早すぎるだけさー」
「やーが喋りすぎなんどぅ」
「早食い」
「煩い」
「デブ」
「ふらー」
「こら!すぐ喧嘩しない!」
「わんは悪くない」
「わんも悪くない。あにひゃーが悪い」
「……さっさと食べて出掛けましょうか」
「はーい」
ご飯を口の中に運ぶ。
別に不味いわけじゃないけど、やっぱり沖縄料理が食いたいと思ってしまう。
モノレール乗り場について切符売り場に来ると知念が口を開いた。
「凛君、まー行くばー?」
「知念はまー行きぶさん」
「え?」
「わったー東京知らんさー。だから考えられるわけ無いやっしー」
「あのねぇ平古場君。無計画でしょ」
「じゃあ永四郎は行きたい場所あるんばー?」
「急に言われてもねぇ」
「だろ?」
「君達いつから計画してたの」
「寝る少し前。な、裕次郎」
「うん」
「まったく……」
切符を売る機械の上にある駅名と値段。
残念ながら駅名見たってそこがどんなところか想像できるわけもなく、ここに行こう!と言うのはない。
「三駅くらい先で良いさー」
「ちゃっさーが?」
「290」
切符を買って、ホームに行って驚いた。
「これどうやって乗るんば?」
モノレールが来るだろう所とホームの間に胸元までの壁がある。
「落ちないようにじゃないんですか?」
「へぇー。本当だ。高い!」
裕次郎が中を覗き込む。
壁の向こうを見下げると、確かに段差が激しい。
これは落ちたら危ないな。
「どらっ!」
「わっ!」
身を乗り出していた裕次郎の背中を押してやると本気で目を見開いて、すぐに身を引っ込めた。
「やめろ凛!」
「びびってやんのー」
「あにひゃー!」
「やめなさい二人とも!」
裕次郎が俺を落とそうとしてきて、永四郎が怒る。
怒られてやんの。
「凛が先さぁ!」
「二人とも、ゴーヤー……」
「わんも!?」
「ごめんちゃい」
「まったく」
「凛君に裕次郎君、そろそろ来るって放送が流れてるよ」
「しんけん?!」
モノレール線の先を見る。
本当だ。来てる。
しまった。ここ三番車両だ。
「先頭車両乗るさー!」
「走るどー!」
「競争やさー!」
「永四郎君、いか」
「そうですね」
先頭に向かって走る。
モノレールが来ると、扉の部分の壁が開いた。
「いっちばーん!」
「にっばーん!」
「さんばーん!」
「四番」
「もう少し静かに乗りなさいよ」
永四郎が何か言ってるけど知らない。
先頭に、進行方向を向いた席がある。
「わん先頭席!」
すぐさま座って外を見る。
「たけー」
「あれだあれ!えーっと」
「人がゴミのようだ!」
「それどぅ!」
慧が言った台詞に笑う。
金曜ロードショーで先週やってたのを皆で見たから皆ネタが分かる。
「何でしたっけそれ」
「ムスカムスカ。悪役の名言やっさー永四郎」
「あぁ」
思い出したように頷いて、永四郎も下を見る。
「くぬ電車、よく落ちないね」
「怖いこと言うなっしー、知念」
「でも裕次郎君怖くないの?」
「考え出したら怖くなるやっしー。やめー」
「あ、ごめん」
「杞憂ですよ知念君に甲斐君」
永四郎が難しい言葉を使う。
きゆうって何だっけ?
まぁ良いか。
「あっ!おい」
裕次郎の帽子を取って被る。
「安全確認よし!しゅっぱーつ!」
「もう出発してっど、平古場」
前方を指差して言えば、慧が揚げ足とりを言ってくる。
「デ……」
「凛君喧嘩はよしてさぁ」
知念がすぐに止めに来るから口を閉じる。
なんだよ、知念は慧の見方かよ。
「ちねーん」
「ぬー?」
つり革を持ってる知念に座席を立って近づけば、知念は少し身を屈める。
「また東京来て乗ろうな!」
「うん」
「永四郎もだぞ!」
「また乗る気ですか」
「当たり前やっしー!デブと裕次郎を見ろ」
永四郎が慧と裕次郎を見る。
俺も向き直れば二人は窓の向こうを見下ろしてバルスバルス言ってる。
確か破滅だか破壊だかの言葉だろ、それ。
「で、平古場君。降りたらどうするんですか」
「さあ?」
「……戻りますか」
「えー!戻るのはつまんないから……秋葉原にいちゅん!」
「何で秋葉原に限定されてるんですか」
「あそこは異空間さー、永四郎も見るべきだぁ。メイドとかが普通に道端にいて写真撮られてたさー」
「そんな場所行きたくありません」
永四郎が思いきり行きたくないって顔してるし雰囲気でかもし出してるけど、永四郎がテニスを忘れる位衝撃を受けるにはあそこくらいしかないだろう。
「いか」
「行きません……何か遊園地とか近くに無いんですか」
「わったーは東京について知らんやっしー」
「おーい。秋葉原いちゅん?」
「おう」
「俺は行きませんよ」
「駄目駄目」
「あ」
「ねーやが?」
慧が思い出したように手を叩く。
何だ何だ。
今度は何の提案だ?
メイド喫茶に単身乗り込む男は次はどんな提案をしてくれるんだ?
「東京タワー行ってない」
「あ!」
「あっ!」
「そこにしましょう」
でも東京タワーって何があるんだ?
ただ展望するだけだ。
きっとあまり楽しくない。
でも面白い場所って言われてすぐに思い浮かばない。
「知念は何処か行きたくないんばー?」
「わん?」
知念に助け船を求めれば、少し悩んだ後にぽそりと言った。
「浅草?」
「それまーにある?」
「知らない。名前だけ」
駄目だ。
しかも浅草とは渋いチョイスだ。
いや、知念らしいけど。
仕方ない。
「おいデブー」
「さりんどぅ」
近寄れば嫌そうな顔をされる。
俺だって暴言吐く奴に近づきたくねぇよ。
でも仕方ないんだ、永四郎に聞かれたら困るからな。
「他に面白いところはまーば?」
「面白いところ……今日って何曜?」
「日曜」
「なら竹下通り」
「何がいる?」
「ゴスロリ」
「よし決定!」
これは刺激が強そうだ!
慧、良い提案だ。
そこだけは誉める。
「何がですか」
「今日は竹下通りにいちゅん!」
「どこですかそこ」
「学生向けの通りさー」
慧がすぐに返す。
分かってんなぁこいつ。
「永次郎もいかいか」
「……そうですね」
「ぬーが売ってるばー。楽しみさー」
マズイ。
裕次郎は楽しめる性格だから良い。
永四郎を驚かせる企画だから永四郎も良い。
知念には、申し訳なさを感じてしまう。
昨日一人で秋葉原を慧を探して歩き回ったのは異空間にひとりぼっちみたいで怖かったって言ってたし。
いやでも、今日は皆で行くからな。
大丈夫大丈夫。
*〜ぶさん=〜したい
*いちゅん=行く
*いか=行こう
*まー=何処
*ちゃっさーが?=いくら?
*あにひゃー=この野郎
*しんけん=マジ
*さりんどぅ=殺すぞ
〜戯言〜
収集がつかなくなった。
この後、木手が竹下道りでどん引きすれば良い。
知念は皆がいるから心細くないし平気。
知念にゴスは似合うと思うので、凛に服を薦められりしてたら良い。
甲斐は楽しむ。
凛は木手を無理矢理引っ張っていって頭の中を空にさせていれば良い。
田仁志は普通に見て楽しんでいれば良い。
田仁志≠オタクですよ。
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