はいでえ!比嘉中!! | ナノ
早く来い来い:ほのぼの:平古場+知念
早く来い来い
「ちねーん」
『……あい?』
「寝てた?」
『うん。凛君どうしたの』
「ゲームが進まん」
『ゲーム?』
「うん」
『凛君が?なんだばー?』
「良いから来いよ」
『はあ?』
「待ってるから、来いよ」
『……着替えてから家出るから、待ってて』
「あい」
「だーっ!無理!」
やってられっか!
GAME OVERと書かれた画面に、コントローラーを投げ捨てた。
ソファに身を預ける。
知念早く来ないかなぁ。
そう思って窓の外を見て、思わず眉間に力が入る。
先程まで太陽の光が燦々と照りつけていたのに、何てことだ。
今では陽射しはなくて、どこからともなく現れた鼠色の雲が空を覆っている。
いつものスコールだ。そう思っているのもつかの間、すぐに雨が降りだした。
雨粒はどんどん大きくなって、横殴りになり雷が鳴る始末。
「勘弁してくれ」
まだ知念が家を出たか出てないかの時刻。
スコールが来る前の空なんて見ればすぐ分かるから、きっと止むまで家にいるだろう。
これじゃあ知念、遅れるな。
ちらりとテレビ画面を見るとそこには相変わらずGAME OVERとだけ記されている。
安くなっていたから買ったホラーゲーム。
夏休みだし、暑いから涼むには良いだろうと思って普段なら絶対に手を出さないホラーゲームに手を出した。
今日は休日だというのに朝早くに叩き起こされて、家族皆が出掛けてるからと留守番を言い渡されて、眠気も覚めたから暇がてらやり始めた。
始めたのは良いけど操作は難しい上に、日本特有の忍び寄る恐怖感を味わえるこのゲームに流石に絶句した。
何だこれは。
一人でこんなので出来る訳がない。
しんと静まり返った家でこれをやった自分を嘆くしかない。
普段なら気にもとめない音に反応してしまう。
背後に変な気配を感じる。
これはもうあれだ、誰か呼ぶしかない。
くだらないと言われて終了しそうな木手は呼ばないとして、田仁志は呼んでも来そうにない。
頭に受かんだ有力候補は甲斐か知念。
甲斐となら別のゲームをやって良い気晴らしが出来るだろう。
しかしせっかく買ったのだ、安かったにしてもお札は飛んだ。買った本人としては積みゲーにするのは悔しい。
甲斐にホラーが駄目だとからかわれるのは癪に障る。
あいつに弱味は見せたくない。
知念なら、ホラーが苦手だとバレても言いふらしたりからかったりする人間じゃないから平気だ。
それに知念は普段はやらないくせにゲームが上手い。
ここは知念にクリアを頼むしかない。そう思って電話をした。
「あーもー、降んなー」
なのに現状は何だ。
スコールのせいで知念は来そうにない。元々家は近い方じゃないのに。
自転車を普通にこいで30分はかかる。
どしゃ降りの雨に雷鳴。
怖いの怖いの飛んでいけ
そんなことを考えてもむしろ思考は恐怖を膨張させて今では怖いことしか考えられない。
とりあえずチャンネルを変えよう。
リモコンを手にとって、押すが反応がない。
バシバシとリモコンを叩いて再度挑戦しても変化はない。
勘弁
恐怖がどんどん強くなる。
テレビの方まで行っても良いが、チャンネル変更は画面の真下にある。
先日、どれだけ嫌がっても両親が自分の反応を楽しむために一緒に見させられたホラー映画が脳裏に浮かぶ。
テレビ画面に近づいて、ボタン押した瞬間に画面から手が出てきて捕まったりしたら確実に心臓が止まる。
いやいやいや、あれは人が作り出した映画であって、現実に起こりうるはずがない。
そう分かっていても、怖いものはやっぱり怖い。
秒針がやたら大きく聞こえる。
じっと待つこと20分、突然チャイムが鳴った。
何々?何が来たの?
外は相変わらずのどしゃ降り。
家族は夜に帰ると言っていた。
玄関に向かう。
これで扉を開けたら死人でしたとかだったら自分は殺されるだろう。
でも今は一人が怖いのとちょっとした期待から、誰かを確かめずに扉を開ける。
「来たよ」
そこにはびしょ濡れの知念がいた。
「何で今来る」
「凛君が呼んだ」
「雨ひどいよ」
「着替えたら家出るって言ったから」
「いつもより早くね?」
「風向きが追い風だったからこがなくてもチャリが走った」
「びしょ濡れじゃん」
「タオルと服貸して」
「うん」
招き入れてからタオルを取りに走る。
静かな家はやっぱり怖くて、無駄に会話を弾ませる。
「ちねーん!」
「んー?」
「お前のパンツが二枚も家にある」
「俺の家には凛君のパンツと服もあるよ」
「知念ところには皆のがあるんだろ」
「永四郎君だけ無いけどね」
「あいつ几帳面だよな」
「らしいと言えば、らしいけど」
玄関に戻って知念にタオルを渡す。
「けど?」
「気を使われてるみたいだなぁって」
「ふーん。知念シャワー浴びんだろ?ほら上がれよ」
「うん」
勝手知ったる他人のなんとやら。
知念は身体の水を適度に拭ってから浴室へ向かった。
「ちねーん」
廊下に腰かけて、脱衣所のその向こうにある浴室にいる知念に声をかける。
「んー?」
「今日ここに泊まれよ」
「はあ?何で」
何でって、一人は怖いから。
でもそんなこと言えるわけがない。
後でバレるって分かってても口で言うのは男の沽券に関わる。
「今日はゲーム大会だ!」
「だったら裕次郎君呼びなよ」
「裕次郎は駄目!」
「慧君」
「あにひゃーデブはもっとだ!」
「永四郎君」
「誘ってもこないに一票」
「二票」
「つうわけで知念、泊まっていけ」
「凛君のお母さんは?」
「帰りは夜。急に泊まるのはいつものことさぁ」
「まぁ、そうだけど」
シャワーの音が止まる。
水の音ってやっぱり怖いんだよな。
「じゃあ知念が夕飯作ってよ」
「わんはまだ朝も昼も食ってない」
「しんけん?」
「しんけん」
「わんの昼の分を食べるさぁ」
「凛君は?」
「冷蔵庫にあるモンで知念に作ってもらう」
「それが目的か」
「だって知念料理上手いじゃん」
ドアが開く。
いよっ。と手を上げると頷かれた。
知念はリビングの方に行って、テレビ画面を覗く。
「これ、凛君の?」
「おう」
「ホラー苦手なのに」
「安かったから買った」
知念は暫く黙ったあと、コントローラーを拾った。
どうやらやってくれるらしい。
説明書を読まずにやるあたりが、やっぱり類友だよなと思わせる。
「一からやる?」
「一から進んでない」
「あい分かった」
スタートを押して、レベルを選ぶ。
知念は迷いなく一番難しいのを選んで、話を進め始める。
写真に霊が納まるって設定らしいけど、心霊写真かよ。
こえぇ。
怖い怖いと思いつつ、見たがるのはもはや人の本能だ。
知念は楽しんでいるらしくとても冷静で、話を攻略無く進めていく。
こいつ、ゲームのセンスあるな。
主人公の女の子が自分の時はなよなよしてたのに、知念が操ると逞しいったらない。
「ぎゃーっ!」
「こいつの髪、バッハみたいだ」
「バッハ?音楽室の?」
「うん」
「バッハ動き気持ち悪」
「ちょこまかと、この……」
「ひえぇぇ、まぶやー」
「バッハにネガ何枚も使いたくないな」
「ちょっ!早くシャッター切れよ近すぎ!殺される!」
「もうちょいもうちょい、よし!」
「すげっ!零ショット!」
〜戯言〜
ゲームは 零 だと考えていただけると分かりやすいかと
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