その他夢小説 | ナノ
立場とか年齢とか、そんな障害物なら簡単に越えてみせるのに
立場とか年齢とか、そんな障害物なら簡単に越えてみせるのに
人って登るのには意欲的ですが、降りるのには消極的ですよね。
木登りとかも、登るのは平気だけど飛び降りるのが苦手な方とか、よくいらっしゃるではないですか。
あれと一緒です。
「元就様、好きです」
「知っている」
「愛しています」
「聞き飽きた」
「ではなんと言えば私に振り向いてくれますか」
「何を言っても無理だ、諦めろ」
「私、諦めだけは悪いんですよ」
「諦めだけではなかろう、頭も悪い」
「いいえ、賢くなりましたよ、前に比べたら。だって字が書けます、読めます」
「その回答が頭の悪さを示しているんだ」
「それは失礼しました」
私と貴方の間にある障害は、身分であり知能であり……つまるところ沢山あるのだ。
その障害を壁であらわすと、私はその壁を必死に登った。
否、登っている。
自分でどうにか出来るものはどうにかしている。
ただ、身分だけは産まれもってのものだからどうしようもない。
そこだけ地面から自分の方に傾いて生えた高く聳える壁になっていて、元就様が壁に腰掛けているのが見えるのに私は登れずにいる。
だから元就様、貴方が降りてきて下さい。
そうすれば、二人並べるんです。
降りてきて下さい。
「元就様、愛しています」
「煩い」
「好きなんです」
「喧しい」
「だから早く、私の元に降りてきて下さい」
元就様が訝しげな顔をこっちに向けてくる。
垂直な壁だって私は登って見せました。
でもこちらに傾いた壁を登るのだけはどうしても出来ないんです。
「降りるも何も、貴様は今ここに居るだろう」
分かってもらえないもどかしさ。
でもそんな元就様も大好きです。
だから私は今日も貴方に近づけるよう、障害物を登ってゆきます。
07/05/15
- 22 -
[
*前
] | [
次#
]
←
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -