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act.09
何故?
だって大切なんだ。
Why?
私が居た村が襲われたのは夜。
理由は分からないが村は襲われ、翌朝の今は炭と人肉の焼けた悪臭だけがあたりを支配する。
私はすぐに逃げたので平気だったが、村は壊滅した。
せっかく住みやすい村だったのに、残念だ。
私は此処に居ても意味がないので、奇襲の人たちが向かった方角と逆に進む。
次に着いた場所も、もう村とは呼べなかった。
同盟軍の勝利で終わった戦いから15年。また国家規模での戦争が始まっているのか?
私は溜め息をつく。北に来るんじゃなかった。
もしかしたらハルモニアが真の紋章探しに躍起になっているのかもしれない。
そのために小さな村すら襲って真の紋章を探しているのだとしたら、この光景の理由が分かる。
いくらなんでもハルモニアに食ってかかる国はいないだろうから。
此処から先もきっと壊滅した村しかないだろう。
まっすぐ行けば5日程度でハルモニア国家に入る。
引き返せば壊滅した村と奇襲をした人が居る。
少し悩んで、旅には使わないようにと決めていたはずのテレポートを使った。
ハルモニアの城壁でレナという上官らしい人に簡単な質問と一度手袋を外すのと、契約書(国内で事件を起こさない等)に記名するようにと言われ、さっさと書いて入国した。
旅人達から聞いた話とはだいぶ異なっていて、呆気にとられる。
旅人達からは
「入国検査の時に、真の紋章を持ってないかとか言って全身素っ裸にされた」、「入国検査の時の兵士の態度が気に入らない」等だったので身構えていたのだけれども。
運が良かったかな。
国内を歩いていて、道を行き交う兵の多さに驚いた。私が鈍かったのだろうか、戦争はもう始まっているのかもしれない。
しかしドコとドコが?
私はもう戦争には首を突っ込みたくないと思っているのだが、戦争が起きれば彼に逢えるかもしれないと淡い期待もしてしまう。
首を振って溜め息。
15年もこんな事を考えている自分が嫌だ。彼はもう私を忘れているだろうに。
寂しいけど、現実を見ろ自分。
人混みを過ぎていくうちに、横を荷物を持った綺麗な少女が通った。
私は振り返って見ると、少女もこちらを見ていた。
「……」
私は少女を知っている。
忘れるはずがない。
十年くらい前、彼と逢うきっかけをくれた少女だ。
だいぶ綺麗な大人に育っている。
「セラちゃん?」
「ミョウジさん」
ああ、やはり彼女だ。
魔術師の塔にいるはずなのに……買い出し?
「何か買いに来たの?」
ハルモニア国内でしか手に入らない特産について知らないから、是非知っておきたい。
それを別の国で売れば少しは財布が潤う。
「はい、甘い物を少し」
セラが中身を見せてくる。
それはどこにでも売っている物で、浮き足立った気持ちがすぐに姿を消す。
「セラちゃん」
「はい」
「時間あるかな?」
「……はい」
「何か食べながら話そうか。私は朝から何も口にしてないんだ」
ハルモニアにテレポートで入ることは出来ない。
城壁にそういう仕掛けがあるそうだ。昔聞いた話なので今はどうか知らないし、そういう仕掛けは無さそうだったけれど。
だがセラの買い物は仕掛けが有るか無いか知らずに危険を犯してまで来るような用事ではなかった。
つまりハルモニア国内に来るには私が先ほどレナという女性にするように言われた事をしなくてはいけないのだ。
どこでも売ってる物を買うのにわざわざ審査を受ける?そんなのよほどの変わり者じゃなければない。
私はレストランの奥の席に座る。
席は個別に壁で仕切られていて、この店だけなのか、ハルモニア式なのかと考えを巡らせる。
密会専用に見える。
今の私には有り難いけど。
「セラちゃんも紅茶で良いかな」
「はい」
オーダーを頼んで、人が去ったのを確認してからセラを見ると俯いていた。
私は手のひらに汗をかいたまま強く拳を握った。
「セラちゃんは今、何処に住んでいるんだい?」
「……魔術師の、塔です」
「嘘は言わずに話そうよ。別に私が何かすることも、言いふらすこともないから」
少しして紅茶が届いた。
人の気配は遠ざかる。
「……ハルモニアに」
「そうなんだ。彼も?」
「……はい」
嫌なことが起きているのは、セラの表情から読みとることが出来る。
だいたい、真の紋章に煩いハルモニアに、真の風を持った彼が住んでいること事態摩訶不思議だ。
入国検査で私は手袋を外させられたのに、彼はどうやって逃げたのだろう。
やはり城壁の仕掛けというのはなくなってるのか?
「セラちゃん、私は一週間は此処にいるから」
「ハルモニアにですか?」
私は頷く。
そして国外近辺の村や町が襲われていることを話した。
彼女は私を見ずに下を見ていた。
「だから、辛くなったり一人で抱えれないことがあったら、いつでも私の処に来ると良いよ」
「はい」
「……宿を探さないとだな。どこか安くて良いところ知らないかな」
セラは少し悩んで、それならばと店を出た後に宿屋に案内してくれた。
私は感謝を言って、去っていく背中を見送った。
一人部屋に入って、すぐにベッドに俯せになる。
これから何が起きるのか、何でこんな事になりつつあるのか想像できなかった。
数週間待ったが音沙汰が無かったので、私は出国手続きを済ませる。
以外と綺麗な国だと思った。
私が見られたエリアは、町並みと普通の国民だけだけれど。
またこれから戦乱の世か。私は棍を回す。
何処に行こうか迷って、テレポートを使った。
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