デスノ 君と私は足してゼロ | ナノ
悲憤慷慨
メロ追悼企画の作品です。
嫌な予感がした人はバックステップでカカッとお戻り下さい!
2010年1月25日(月)
風呂上がりの私の元に、一本の電話が入った。
君
と
私
は足して
ゼロ
悲憤慷慨
「もしもし」
『……』
「もしかして、ワイミーズハウスを絶賛家出中のメロ君ですか?」
『その言い方腹立つな』
「久しぶり、メロ」
『ああ、久しぶりだな、シャリ』
「……」
『……』
「で、何の用?」
『シャリは、知ってるか?』
「何を」
『……Lの事』
「ああ、知ってるよ。ロジャーから聞いた。Lもワイミーさんの事もね」
『そうか、知ってたのか』
「うん。私の代は、私一人しか生きてないって事もね」
『……そうか』
「B、獄中で死んだんだってね」
『Bらしい死に様だよ』
「そうだね」
『……』
「……」
『……』
「ねえ、メロ」
『ん?』
「何で私がメロからの電話か分かった理由知りたい?」
『ああ、知りたいな』
「自分で考えなさい、愚か者」
『なんだそりゃ』
「私達の代の名言。教師に質問に行くと、いっつも言われるんだ」
『へえ』
「まあ、言ってみたかっただけ。この番号、ワイミーズの人しか知らないんだ。ニアは電話してこない薄情者だし、ロジャーは電話番号通知して電話してくるからね。で、非通知はメロだろうなって思ったって訳」
『簡単な理由だな』
「謎ってのは紐解けばそんなもんだよ」
『ははっ。シャリらしい』
「お褒め預かり光栄ってね」
『褒めてねぇよ。……なぁ、シャリ』
「ん?」
『死神って信じるか?』
「どうだろうね。私は居ても良いと思うし、居なくても良いと思う」
『居るって言ったら信じるか?』
「半信半疑」
『だろうな』
「うん」
『俺さ、死神に追われているんだ』
「……その死神は何処まで来ているの?」
『もう、かなり近くだな』
「そう」
『そうだ』
「振り切れないの?」
『無理だろうな。いや、逃げる事も可能だけど、逃げたら、負けるんだ』
「死んで勝つ方法なんて無いと思うけど?」
『いや、俺が勝つんじゃない。俺一人じゃ勝てない。だから、俺達が勝つんだ』
「……そう。もう、覚悟を決めているんだね?」
『ああ』
「何でそんなに死神と戦うのか私には分からないな」
『死神が、BもLもワタリも殺したからだ。それに、俺はあんな奴に負けたくない』
「勝気だね」
『負けず嫌いだと言ってくれ』
「死神が、BとLとワイミーさんを殺したんだ」
『ああ』
「じゃあさ、その死神の名前、教えてくれるかな」
『何でだよ』
「知っておきたいから」
『夜神月』
「うん、記憶した」
『何があっても、シャリは何もするなよ』
「しないよ」
『それがいい。シャリは馬鹿だからな』
「生きていくには馬鹿になるのが一番なんだよ」
『その考え方、俺は結構好きだったぜ』
「ありがとう」
『ああ、そうだ。ありがとうで思い出した』
「ん?」
『年末、ハウスに帰ってきては俺にサッカーシューズ買ってきてくれてただろ?あれ、ありがとうな』
「え?今更?っていうか渡した時もありがとうって言ってたじゃん。改めて言う必要は無いでしょ」
『言いたいんだ。ありがとうな』
「どう致しまして」
『ロジャーには口止めしてたけど、俺がハウスを出て行った年に何も知らずにシャリが来て、買ってたサッカーシューズをいつか俺が帰って来た時にって、ロジャーに渡しただろ。あれ、受け取ったから』
「それは良かった」
『まぁ、もうサッカーしてないから一回も履いてないけど。そもそも足もでかくなって入らないし』
「何てこった」
『本当、何てこっただな』
「良い品だし、中古としてでも売れるんじゃない?」
『売らない』
「そっか」
『ああ』
「ねぇメロ、いつ死ぬの?」
『明日かな』
「明日!?急だね。急すぎない?」
『仕方ない。そういう巡り会わせだ』
「そっか……」
『シャリを知っている奴、どんどん減っていくな』
「本当にね。後はニアとマットとロジャーくらいだよ」
『寂しいか?』
「いや、別に」
『強いな』
「私は強いよ。メロと似た感じで、ハウスを飛び出してアメリカに行って、一人暮らし始めるような奴だから」
『そうだな。行動力は俺たち、似てるな』
「同じ出身地だしね」
『ははっ、違いない』
「メロ、今何処に居る?」
『何だ急に』
「明日死ぬなら、せめて骨くらいは拾いに行こうかなってね。どうせ拾ってくれる人居ないんでしょ?」
『今の俺は犯罪者だから、関わらない方が良い』
「っはは!ちょ、笑わせないでよ。犯罪者だから関わるな?Bとよく一緒に居た私には通用しない言葉だよ」
『平穏な生活を捨てる事になるぞ』
「だーいじょうぶ。そうしたら、また新しい地に行って、そこで仕事探して生活始めるから」
『馬鹿だな、シャリ。面倒事を嫌ってたくせに』
「年のせいかね?」
『老いたな』
「まあね、そこジャパンでしょ?」
『……なんで分かった?』
「私もハウス出身だよ」
『一般人のような生活しているのかと思ってたけど、そうでもないみたいだな』
「いや?一般人だよ。社会の駒としてセカセカ働いているからね」
『そうか。ああ、ジャパンに来るならお願いがあるんだ』
「何?」
『マットがたぶん逮捕されるから、身元引受人になってくれないか?』
「は?あの引き篭もりのマットもそっちに居るの?」
『酷い扱いだな』
「だってあいつ、ゲームしかしてなかったじゃん。ニアと二大引き篭もりだと思ってた」
『基本は引き篭もりだけど、動くときは動くぜ』
「そうなんだ。うん、分かった。マットは引き取るよ」
『ああ、頼んだ』
「メロ」
『ん?』
「死んだら天国で会おう」
『バッカ、俺は地獄だ』
「もしメロが地獄だったらLが蜘蛛の糸でメロを救うよ」
『どんな解釈だ』
「Lはなんだかんだいって、身内に甘いからね。メロが何人殺していようが、あの脳味噌で救済方法を練って実行するよ」
『……やりかねないな』
「でしょ。あ、先にLやB、ワイミーさんに会うんだから、私の事もよろしく言っといてよ」
『いや、Bは明らかに地獄だろ。Lとも犬猿の仲だし、LはBを天国に救い出そうなんてしないぞ』
「それなら、メロが天国に行った後に、メロがBを救ってやって。頼んだ」
『難しい注文だな。まあ、やってみるよ』
「うん、よろしく。私も後30年くらいしたらそっち行くから」
『ああ、待ってる』
「そしたら、のんびりティータイムでもしよう」
『そうだな、少し、のんびりしたいな』
「メロは頑張り過ぎだからね、ワイミーさんの淹れた紅茶飲んで、Lの武勇伝でも聞いてな」
『そうするよ』
「最後の一仕事、頑張って。私は今から空港に行くよ」
『ああ、じゃあな』
「達者で」
『ありがとう』
何がありがとうだ、馬鹿野郎。
私よりも十歳も下のくせに、死ぬとか、何なんだよ。
悟りきってんじゃねぇよ。
畜生。
畜生、畜生!
私は急いで服を着替えた。
目指す先は、ジャパン。
拾った骨は、Lの墓の傍に埋めてやろう。
悲憤慷慨(ひふんこうがい)
世の中の不義不正や運命に対して、悲しみ憤ること。
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