デスノ 跡継ぎ | ナノ
HELLOWEEN
散歩をしているとカボチャの中身だけくり抜いた、お化けの様な顔を切って作った物が飾られていた。
「気になる?」
見上げると、ケイが笑みを浮かべていた。
「あれは何ですか?」
「ジャック・オ・ランタン。ハロウィンっていう催しが10月31日の夜、つまり1週間後の夜にあるんだよ。それの飾り」
聞いた事の無い単語。
ケイと手を繋ぎながら歩く世界は葉が舞う。
私達はもう長袖だ。
街路樹も葉よりも枝が目立つ様になってきている。
黄色い葉を踏むと、パリッと鳴ってクッキーみたいにバラバラに割れてしまった。
「万聖節の前夜祭をハロウィンって云うんだ。古代ケルト暦では10月31日が1年の終わりの日。新年と冬を迎える祭りで、簡単に言えば死んだ人や悪魔がこの世にやって来ると云われる日だな」
「やって来るんですが?」
「神話上だよ。だからこうやって、悪魔に見立てた物を飾るんだ。それに子供達は悪魔の格好をして悪魔に仲間だと思わせるんだよ。人間だと悪戯をされるから」
ああそうだ。とケイは笑った。
「ハロウィンは子供達が『Trick or treat(ごちそうくれなきゃ悪戯するぞ)』って言って家を周り大人からお菓子を貰うんだ。地域でやってる遊びで、子供はそれに自由参加だからビショップも加わるか?」
「……私は、いいです」
ケイやワタリだから話が出来るのであって、きっとまだ私は周りに馴染めない。
同い年くらいの人と付き合った事が無いから、どうすれば良いかも分からない。
ケイは普通にそうか。と言って笑い、でもどうせだから何かしようと言って雑貨屋に入る。
仮装の服がたくさん売っていた。
「ビショップはどんな格好をしてみたい?」
ケイは服を見ながら、私に問うてくる。
様々な服。
見た事も無い物ばかりで、私は困惑よりも胸が踊った。
跡継ぎ
Halloween
店の女の人が今は売れて品数が少ないがもう少しすると入庫すると言ったので、その日は買わずに店を出た。
私は初めてのハロウィンに期待が膨らむ。
手を繋ぎながら帰る最中、ケイは小さなカボチャを三つ買い、店員は蝋燭をおまけしてくれた。
空いてる方の手に蝋燭とカボチャの入った袋を下げながら、これでランタンを作ろう。ケイはそう言った。
私は嬉しくてどうしようもなかった。
家に帰り着くと、ワタリが玄関を開けてくれた。
暖かい空気が頬にかかる。
「ただいまワタリ」
「ただいまワタリ」
「お帰りなさい、ビショップ、ケイ。ケイ、何を買ったんですか?」
「カボチャだ」
「小さいですね」
「ランタンを作るんだ」
「ああ、ハロウィンですか?」
「そうだ」
ワタリは微笑みながら良い考えですね、と言う。
私達は靴を脱いで、手を洗いに行く。
「カボチャは切って放置しておいてどれ位保つんだろうな」
ケイがふと、そんな事を言った。
一週間後のハロウィン。
今からランタンを作って平気なのだろうか。
「まぁ今回のは小さいし、試し作りって事にしよう」
「はい」
今日作れるのが嬉しくて返事をすると、ケイは笑みを浮かべながら私の頭を撫でてくれた。
手は洗い立てだからどこか冷たかったけれど、優しさは変わらない。
リビングに行くとテーブルの上にまな板と包丁、カッターナイフが置かれていた。
私は少しナイフが怖かったけれど、ケイが手を繋いでくれたからそれ程怖くなくなる。
「ワタリ、有難う」
ケイが用意をしてくれたワタリに言い、ワタリは良いですよと言う。
「ところでワタリ」
「何でしょうか」
「カボチャは三つあるんだが、よければ一緒に作らないか?」
ワタリが珍しく驚いた顔をした。
そしてよろこんで。と言い、三人でテーブルを囲んだ。
包丁で頭になる部分を切り取るとカボチャの中身は種と綿が多くて、身をくりぬかなくても中身は空洞になった。
油性ペンで切り取りたい場所を表面に書きカッターナイフを刺す。
「固いけど平気か?」
「はい」
カボチャは固くて、カッターナイフは少しずつしか進まない。
でも確かに切れていて、目の部分が出来た。
半月形の目。
曲線が難しくて、カクカクしている。
ワタリは私より早く出来ていて、とても上手だった。
ワタリはそれを工作と料理は似ているからだと言う。
「出来たのか?」
「……目の部分だけですが」
見せると、二人ともが私のカボチャをジッと見るので恥ずかしくなった。
「上手だな」
「上出来ですね。ケイはどうですか?」
「……」
ワタリに問われ、ケイはカボチャを見せる。
「苦手なんだよ」
そう言って見せるカボチャは、目が大きく丸かった。
怖く無い、優しそうなランタン。
「個性があって良いじゃないですか」
「有難う」
ワタリの言葉にケイは苦笑しながら、カッターナイフを動かし始める。
私も口を描いた油性ペンのインクに刃を立てる。
一番最初にランタンを作り上げたのはもちろんワタリ。
ケイは目の丸い、口を大きく開けて牙を見せるランタン。
私は一番最後で、でも焦る事も無くゆっくり作れた。
「凄い凄い。上手だなL」
頭を撫でてくるケイ。
手は暖かくて気持ち良い。
せっかく作ったのだからとカーテンをひいて部屋を暗くし、ランタンの中に蝋燭を入れて火を燈す。
口と目から光が出て、炎の揺らめきで影がゆらゆらと揺れる。
「私のは明る過ぎるな」
大きな口と大きな目。
ケイのは炎が発する光を外に注ぐ。
カボチャが輝いているみたいだ。
ケイみたいだと、そう思えた。
雑貨屋で私は黒いマントと帽子を選んだ。
「ウィザードか。サイズも合ってるな。じゃあこれを買おう」
店員の女の人の処に行くと、店員は私達が店に寄った事を覚えていたらしく、ケイに話しかけてきた。
「いつも一緒に散歩していますよね。仲が良くて羨ましいです」
店員は弟がいるらしいが、仲があまり良くないと言う。
ケイは弟さんは照れてるだけですよ。と言い、これを買いますとようやく言えた。
「お姉さんは仮装しないんですか?」
「いえ、私はさすがに……」
「弟君もお姉さんの仮装姿見てみたいよね?」
突然話を話した事も無い人にふられ、とっさにはいと言ってしまう。
「ほらほら、お姉さんも可愛い弟君の希望にそわなくちゃですよ」
「そうですね……」
ケイは困った様に笑う。
私がちゃんと断れば良かった。
そう思う反面、ケイの仮装姿をやはり見てみたかった。
「売り上手な店員だったな。あの店は安泰だよ」
ケイは帰り道、笑いながら言った。
「仮装かぁ。やってみたい気もしてたんだ」
思いもしない言葉。
驚いて見ると困った様に笑っていた。
「でも気恥ずかしくてな。それに大人が仮装の服を買うのかも分からないから、止めてたんだ。ビショップがあの時頷いたから出来るんだよな。有難う」
ケイの言葉に、不安が拭われる。
ケイが買ったのは私と同じやつで大人用の物だ。
大人用は魔女か白いキモノと云うやつかフランケンシュタインしか無くて、最初ケイは私と同じになるからと白いキモノを選んだのだが、店員がおそろいの方が良いと進めて、ケイはじゃあと魔女の服を中のサイズと大のサイズを買った。
家に帰って、大きい方をワタリに渡すケイ。
「旅は道連れ世は情け。一緒に着てくれるか?」
「私は構いませんよ」
断られそうだなと帰り道にケイは言っていたので、着ると言う返事にケイが少し驚いた顔をする。
「以外ですか?」
「少しな」
ワタリはしゃがんで私と視線の高さを合わせる。
「ビショップは何になるんですか?」
「ウィザードです」
「ではこの家は魔法使い一家になるんですね」
私達は本当の家族では無いけれど、家族だ。
10月31日は魔法使いの家族になる。
嬉しくて、幸せだった。
10月31日。
午前中に散歩をすると空気は冷たかった。
でも繋いだ手はあたたかくて、やはり私は散歩が好きだ。
その後ケイは何かやる事があるからとワタリの研究室に行ってしまう。
ワタリは何をするつもりなんでしょうね、と言った。
私はやる事も無くて、寂しさを感じる。
しばらくしてリビングに来たたケイはソファに座り、私を抱き抱えてくれた。
午後になって夕焼けの時刻。
私達は仮装した。
マントと帽子をかぶるだけだけれど、雰囲気がいつもと違って楽しい。
「夜になると子供たちがお菓子をもらいに周って来るから、その姿を見せてごらん」
「ケイもその時行くんですよ」
「ワタリは?」
「私も出ますよ。ケイもですよ?」
「分かってるさそれくらい」
ケイは私とワタリの前でなら魔女姿を恥ずかしいと思わないらしいが、他の人の前に出るのは渋っている。
年を重ねると外聞ばかりに目をやる様になって困るとケイは言った。
魔女姿のケイはお菓子を袋に詰めている。
来た子供に配る物なのだろう。
私も詰めるのを手伝う。
「市販の菓子より、ワタリの菓子を詰めた方が喜ぶと思うんだが」
私もそう思った。
ワタリのお菓子は美味しいから。
「手作りだと親が嫌がりますからね」
ケイはそうだな。と言い、詰めるのを再開する。
外が暗くなった時、チャイムが鳴った。
「ビショップ、行きましょう。ケイも」
靴を履いて、外に出る。
息が白くなるんじゃないかと思う程寒かった。
「「トリック オア トリートっ!」」
門の処に居るのは私と同い年くらいの人達と、私より年上の人達。それと大人三人。
皆バラバラに仮装していて団体だから、見ていて少し面白い。
「I'm scared.(それは怖い)」
そう言いながらケイは笑顔でお菓子の包みを一人ずつ渡す。
ワタリもだ。
「有難うございます」
大人の女性一人がケイに言う。
「いえいえ、そちらこそお疲れ様です」
「皆さんで魔法使いですか。クウォークさん、そちらの子は?」
「甥です」
おばさんが私に名前を訊いてくたので、ビショップと名乗る。
「ビショップ君も一緒に行かない?」
誘われて、言葉につまる。
「周りの子も年が近いし、大丈夫よ」
知らないおばさんに手を握られ、何て言えば良いのか分からない。
「ほら、行きましょ。一周したらちゃんと家まで送りますので」
「はい。ビショップ、何事も経験だよ。楽しんでおいで」
強引に手を引かれ、次の家の方に足を進めざるをえない。
門の処で手を振るケイとワタリに見送られる。
角を曲がった途端に、知らない人に話しかけられる。
私より年上の男の人。
11歳くらいで、縦幅と横幅が共に大きい。
「お前あの屋敷に住んでんのか?」
「え?あ、はい」
屋敷とは、あの家の事だろう。
他から見てもやはりあの家は特別大きい。
「すげえなぁ」
何が凄いのか、いまいち分からない。
「お化けとか出たりすんの?」
まさか。と言いたくなる事を問う男の人におばさんが咎める様にこらっと言った。
「でもワイミーさんとクウォークさんってどういったご関係なのかしら。ビショップ君は知ってる?」
問われて、どう答えれば良いのか困惑する。
ケイは『L』で、ワイミーは『ワタリ』で、『ワタリ』は『L』をサポートする人。
でもワイミーもケイもそんな事関係なく、生活している。
家族みたいなもの。
「家族です」
そう答えると、おばさんはあらあらと言った。
そして違うおばさんに話しかける。
「家族ですって。血の繋がりは無いはずよね?」
「やっぱり訳ありなのよ。ワイミーさん発明家でしょ?一風変わってるし。お金もあるでしょうし」
お金がどうしたのだろうか。
分からずにいると、また話しかけられた。
「ビショップ君。クウォークさんってお仕事何してるの?」
仕事は探偵。
でもそうは言えなくて、黙っているとまたおばさん達は勝手に話だす。
「やっぱり無職かしら」
「ワイミーさんに頼りっきりなんじゃない?」
「嫌ねぇ、最近の子は」
ケイを悪く言われたのだと、何故か分かった。
ケイが悪く言われるのが凄く嫌で、悔しくて、悲しくて、ケイを悪く言うこの人が嫌いになった。
一緒になんて居たくない。
ケイを、ワタリを悪く言う人と一緒に居るなんて嫌だ。
手を振りほどいて、元来た道を走る。
後ろで名前を呼ばれるけれど、私は駆けた。
地に足が着く前に次の足を前に出す。
角を曲がって門の処に行くと、ケイとワタリが門前に立っていた。
「あれ?ビショップっ」
ケイに突進する様に抱き付く。
ケイはすぐに私を抱きとめてくれた。
背中をあやす様に優しく叩いてくれる。
「お帰り、ビショップ」
「お帰りなさいビショップ」
暖かく迎えてくれる。
ケイとワタリはこんなにも優しい。
なのにあんな言い方、酷過ぎる。
悔しくて、悲しくて、胸の中が苦しい。
頭の中もぐちゃぐちゃする。
後ろから私の名前を呼んで息をきらせながら来る女の人。
ケイを悪く言う人。
嫌いな人。
「ビショップ君、あー疲れた。急に走り出したら駄目じゃない。帽子も、はい」
「届けて下さって有難う御座います」
ワタリの声。
きっとワタリが受け取った。
こんな人に感謝を言う必要ないのに。
ケイの腰に抱き付いたまま、力を強めた。
離れたくない。
「ワイミー、これ持ってて」
「はい」
ケイは背中に手を回しながらもう片方の手で頭を撫でてくれる。
呼吸が少しずつ元に戻って来る。
「何かあったんですか?」
私を抱き締めてくれているケイがその人に問う。
「さあ。急に走り出したらこっちもビックリで……」
「そうですか」
「やっぱり親元でないと、我儘になるのかしらね」
我儘で私は走ったんじゃない。
あなたがあんな事を言うから。
だから聞きたくなくて、逃げたんだ。
なのに自分の非を認めない言い方。
正当化する言い方。
悔しくて、腹正しくて、喉が痙攣する。
ケイは一度私の背中をポン、と叩いた。
「子供の前でそういうのは言わないであげて下さい。大人が思う以上に、子供は内容を把握して傷付くんですから」
初めて聞いたケイの厳しい口調。
おばさんは何も言わず、歩いて去る音だけがした。
「珍しいですね」
「自分でもそう思う。ビショップ、外は冷えるから中に入ろう」
いつも通りの口調。
優しい声。
「はい」
離れたくないけど、このままでは歩けないから離れる。
するとワタリが抱き上げてくれた。
家に入って靴を脱ぐからと床に下ろしてもらい、靴を脱いでからリビングに向かう。
「L」
ケイが笑顔でソファに座りながら膝を示し、私においでと言ってくれる。
向き合う格好でケイの太股の上に座る。
今は、抱き締めて欲しいし私が抱きついていたいから。
だから向き合う格好で、ケイに抱きついた。
心臓の音が優しくて気持ち良い。
「……L、何があった?嫌な事は、言った方がすっきりするぞ?」
言ったら、ケイとワタリが傷付くのではないだろうか。
勝手にケイは無職だと蔑むのも、ワタリが発明家だからと変わっているというのも。
背中をポンポンとされた。
「L、ほら、嫌だった事を言ってごらん?私たちは大丈夫だから、な?」
優しくて、優しい人を傷付ける人が嫌いだ。
「ケイとワタリの事を悪く言うんです」
「例えば?」
「ケイがワタリに頼ってばかりで無職だとか、ワタリは変わっているとか言うんです」
「……私はあながち外れてはいないけど……言われて悔しかったのか?」
「はい」
「そうか」
ケイが小さく笑ったのが雰囲気で分かった。
「おかしいよな、今私は嬉しいよ」
本当に嬉しいのだと言う様な声。
「私たちの事を言われて悔しがってくれたって云うのが、凄く嬉しい」
悪く言われたのに、ケイは私が怒った事が嬉しいと言う。
背中をあやす手は優しい。
頭を抱えてくれる手も優しい。
優しい人を悪く言わないで欲しい。
ケイは『L』で世界を守っている人なのに、なんで悪く言うのだろう。
なんであんな人の世界の為に、ケイは世界を守るのだろう。
「L、あの人を嫌いになってるだろうから言うけど、世界はあんな人ばかりじゃないからな」
まるで心を詠んだかの様なタイミング。
驚いてケイを見ると、ケイは笑っていた。
「世界にはたくさんの人がいるんだよ。それを忘れちゃいけない。今日接した人がたまたま合わない人だっただけだ」
ケイは優しく、諭す様に言葉を紡ぐ。
頭を撫でる手はどこまでも優しい。
「私やワタリ、仮装を買った店の店員、他にもLは一時一瞬であっても様々な人と出会っているんだ。その人達とならLは一緒に居て気分を害さないだろ?だからな、全部が全部、外にはああいう人しか居ないとは思わないでくれ」
外にはたくさんの人が居て、今日合った人がたまたま私と合わなかっただけ。
ただそれだけ。
たった一度の出来事ですべてそうだと決め付けるのは良くないのだ。
ケイが言うから信じられた。
あのおばさんに言われても、私は信じたりしないから。
「あの人噂好きなんだろうな。それである事ない事言うのか。噂は人を潰すって、多分知らないんだろうな。無知故の行為か、末恐ろしいよ」
ケイは笑って、冗談っぽく肩を落とす。
そしてきゅうっと抱き締められた。
あたたかい。
これでこの話はもうおしまい。
あのおばさんの事で頭を占められるなんて嫌だから、これでおしまい。
ワタリが手を洗わないならこれで拭いて下さいと、ウェットティッシュを持ってきた。
ウェットティッシュで拭くと、消毒液のスッとする匂いが手からするのがなんだか不思議だった。
「やっぱり手を洗いに行くか」
「はい」
膝から降りて、二人で手を洗いに行く。
「無臭と石鹸以外の匂いが手からするのは嫌だよな」
ケイの意見に私は賛同できた。
リビングに戻ると、ワタリがテーブルに食事を運び始めていた。
料理に使われるくらいの大きさのカボチャが、顔のパーツを切り抜かれてテーブルの上に座り、周りをケーキや食べ物が囲っている。
「いつ作ってたんだ?」
「昨日の夜です」
「ワタリは下に寝室があるからな」
だから二階に居る私達は気付かない。
ワタリはきっと驚かせるつもりだったのだ。
そしてそれは成功している。
大きいジャック・オ・ランタン。
ワタリが作ったやつだから、とても上手だ。
その周りにある小さな三つのジャック・オ・ランタン。
私達が一週間前に作ったもの。
お祭りの様な空間。
グラスに注がれたジュース。
ワタリはパンプキンパイは初挑戦だから味に自信が無いと言ったが、とても美味しかった。
ケイも美味しいと言い、三人でテーブルを囲んで食事をする。
私はこの空間が大好きだった。
「ケイ」
「ん?」
グラスを持とうとしていた手を止め、ケイはワタリを見る。
「渡さなくて良いんですか?」
「……あぁ、そうだった。何処に置いた?」
「台所です」
ケイは立ち上がり、台所へ。
戻って来た時、手は後ろに隠されていた。
「L、今日限定で子供が大人に言う台詞を言ってみて」
「……Trick or treat.(ごちそうくれなきゃ悪戯するぞ)」
「I'm scared.(それは怖い)」
ケイは笑って、後ろに隠していた物を私に渡してきた。
綺麗にラッピングされた物は、カップケーキ。
プレーンとチョコと抹茶の三種類。
「今回は私一人で作ったんだ。試しに食べたんだが味は普通だった」
ケイの手作り。
いつ作っていたのだろうか。
「ありがとうございます」
純粋に嬉しい。
ハロウィンは、私とケイとワタリで凄く楽しめた。
それだけで十分だった。
〜戯言〜
ハロウィンネタ。本当はLの誕生日。(書いた当時は知らなかったんです)
本当はケイさんにもワタリさんにも仮装させるつもり無かったのですが(本人が嫌がりそうなので)、L一人だけ仮装もどうかと思いまして、店員を使って皆さん魔法使いにしました。
本文中でケイさんが『ウィザード』と言っていますが、あれは男の魔法使いを指します。
女の魔法使いはウィッチ。
発音が違わない事を祈ります。
それにしても、書いてて楽しかったです。
久しぶりに明るい(途中暗かったですが)内容が書けて、満足しました。
そういえば、イギリスではハロウィンよりもガイ=フォークス祭の方が支流だそうです。
でも日本だとガイ=フォークスは内容があまり通じないだろうし、なにより夜に人形を焼くシーンがあるのでやめました。
ハロウィンはアメリカが支流らしいです。
イギリスにワイミーズハウスはあるのに……。
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