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「おはよう、ゆきくん。暇かと思ってお見舞いに来たよ」

「暇なのはあなたの方でしょう? 帰ってください」

 真っ白い病室で本を捲っていたこれまた色白な青年は、実にいい笑顔で僕に言い放った。うん、元気そうで何よりだ。

「相変わらずつれないね、君は。前に入院中は退屈だって言ってなかった?」

「ええ、まあ、退屈ではありますけど……」

「けど?」

「あなたと話していると疲れるんですよね。何故か」

「あはは。それ、よく言われる」

 ベッドの脇に勝手に椅子を置いて、何食わぬ顔で会話を続ける。幸くんは一瞬だけ眉間に皺を寄せたけれど諦めたのか元々その気がなかったのか、それ以上僕を追い出そうとはしなかった。

「ま、適当に話したら帰るよ。事務所の方、圭介けいすけくんに任せてきちゃったし」

「それは今すぐ帰るべきでは?」

「今日は来客予定ないから平気平気」

「どこが平気なんですか、どこが。そういうことばかりしていると、いつか姫川ひめかわさんに刺されるんじゃないですか?」

「圭介くんなら刺す前に殴ってきそう」

「そういう話じゃありません」

 はあ、と大きな溜め息こそつくものの幸くんの顔はどこか楽しそうで、時間を割いて話しに来た甲斐があるというものだ。もっとも圭介くんに刺される、もとい殴られるという話は洒落で済まないから長居はできないのだけれど。

【某日昼、病院にて】


何かあれば


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