大親友であり大天使でもあるプロンプトからのお叱りという名の応援を受けた後、オレはダッシュで今日泊まるホテルの部屋に向かった。イグニスは部屋で休むって言ってたし多分部屋にいるはずだ。扉を開けて勢いよく部屋に転がり込んだら、迷惑そうに眉を寄せてオレを見下ろすイグニスと目が合った。
「…普通に入ってこれないのか?」
「イグニス! 聞きたい事があんだけど!!」
「何だ?」
バッと立ち上がってイグニスの肩をガシッと掴む。鬱陶しそうな顔をされたけど気にせずに「イグニスの最近の変な行動ってオレへのアピールなの??」って超ド直球に聞いてみた。でも他に確かめ方分かんないし仕方ないね。イグニスは「変な行動…」と呟いて顔を歪めている。…うん、言葉間違えたな。
「最近のイグニスが変だってプロンプトに相談したんだけどさ、プロンプトが"イグニスが超頑張ってソラにアピールしてる"って言うから。どうなのかなって」
「…そんな事を言われたのか」
「あとオレに別れ話された後でイグニスがめっちゃ落ち込んでて、慰めるの大変だったって話もプロンプトから聞いた」
「プロンプト…」
イグニスが片手で顔を覆って大きな溜め息を吐く。…あっ、もしかしてプロンプトが言ってたって言っちゃダメだった感じ?? やっべ、普通に言っちゃった。もしもこれが原因でイグニスに怒られたらごめんな、プロンプト。
「そんでさ、確認なんだけどさ…イグニスって、実は結構オレのこと好きなわけ?」
周りから鈍感鈍感言われるオレでも分かるくらい、イグニスは今の一言にイラッとしたようだった。イグニスはさっきよりもデカい溜め息をもっかい吐いて、オレを睨むように見つめてくる。そんな溜め息ばっか吐いてたら幸せ逃げちゃうよ? イグニスが不幸になるのはイヤだなあ。
「…慣れないアピールをしてまでお前の気持ちを繋ぎ止めようとする程度には、好きだが?」
半ばヤケクソ気味にそう吐き捨てるイグニス。…マジか。オレに気を使ってるとか旅の空気が悪くなるとか、そんな理由で言ってるんじゃなく? マジでオレのこと好きなの? イグニスみたいな頭よくてカッコよくてもう完璧としか言えないような人が、オレみたいなのを好きなの??
「その顔からしてまだ信じてないらしいな」
「オレみたいな奴の何処が好きなの?」
「…全部、だ。お前のどうしようもなく馬鹿なところも間抜けなところも鈍感なところも、全部引っくるめて好きだ」
「ん…? それ、惚れる要素なくない??」
「俺もそう思っているが、仕方ないだろう。本当の事だからな」
オレが微妙な顔をしているのに気付いたイグニスは本日三度目の溜め息を吐き、それから静かにオレに顔を近付けてきて…そして―――ちゅ、と軽く触れるだけのキスをしてきた。頬とか額とかにじゃなく、唇に。…え、これ現実? オレ、イグニスとキスしちゃったよ!?
「俺は好きな相手にしかこんな事はしない」
で、でもキスなんてしようと思えば誰とでも出来るじゃん? …とは言えなかった。だって、イグニス…思わず笑っちゃうくらいめっちゃ顔真っ赤なんだもん。こんなちょっと触れるだけのキスで顔真っ赤にするくらいなのに、オレに一生懸命慣れないアピールしてくれてたの? イグニスなりに必死になってオレとの関係を繋ぎ止めようとしてくれてたの??
「ソラが望むなら、これ以上の事だって…しても、構わないと思っている」
「イグニスからそんなこと言われると思わなかったな。…オレのこと、ホントにそんなに好き?」
「最初からそう言ってるだろう」
イグニスの真っ赤になった顔見て、オレは"何で今まで信じてあげられなかったんだろう"って疑問に思うくらい、スッと気持ちを受け止める事が出来た。マジでイグニスはオレのこと好きなんだ、ってやっと分かった。嬉しくて嬉しくて、イグニスに飛び付くように抱き着いて、ぎゅーって腕に力を込める。
「今まで信じなくてごめん」
「ああ、本当にな」
「じゃあ、改めて…イグニス、これからもオレの恋人でいてください!!」
「…言われなくとも、そのつもりだ」
もう一回、今度はオレからイグニスにキスをした。照れて顔を逸らすイグニスに向かって「イグニス、大好き!!」と大声で伝える。「耳元で大きな声を出すな」って怒られちゃったけど、それから「俺も好きだ、ソラ」と返してくれた。もう、幸せ過ぎてニヤニヤが止まらなかった。
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リクエストBOXより
イグニスと勘違い、プロンプトに叱られるの続きを読みたいです。
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