詰め合わせ | ナノ
黒田ユメヲは消極的



思えば、いつも行動を起こすのは私の方だった。好きだって告白をしたのもそうだし、手を繋いだのだってそう。全部、ぜーんぶ私から。しかも、付き合って半年以上経つのにそれ以上の進展はない。もしかして、好きなのは私だけ? そんな風に不安になった時もあったけど、ユメヲの妹のミユキちゃんは「お兄ちゃん、家に居るといつもソラさんの話ばっかりしてるんですよ!」とか言っていたし、ちゃんとユメヲも私の事を好きらしい。

私の想いが一方通行じゃないのには安心したものの、半年以上経って手繋ぎ止まりはどうなんだろう。ユメヲが初めての恋人だから遅いとか早いとかはよく分からないけど、そろそろ…キス、とか…してもいいんじゃないのかな。少なくとも私はしたいと思ってる。いつまでも手を繋ぐだけなんて嫌だもの。キスくらいしてみたいと思うのは、恋人なんだからおかしくなんてないでしょう?

ユメヲと一緒にソファーへ腰掛け、テレビを見ていたとある日のこと…二人きりのその空間の中、私は今日こそ進展してみせると意気込んだ。いつもは少しだけ距離を空けて座ってるんだけど、私はユメヲと距離を詰めて彼の肩にもたれかかった。ユメヲの身体が強張ったのが伝わってきて、反応を窺う為に彼を見上げてみる。


「…ユメヲ」

「ど、どうした?」

「顔、真っ赤なんだけど」


ユメヲは私がちょっと肩にもたれただけで顔を真っ赤にさせていた。…こんな調子じゃあ、"キスして"なんてとてもじゃないけど言えないなあ。今まで私から行動してばかりだったんだから、キスくらいユメヲからしてきてほしいんだけどね。


「っ、ソラ…!」


とか思っていたらユメヲが私の両肩をガシッと掴んで、真っ直ぐにこちらを見つめてくる。男らしくて熱っぽい視線が何だかユメヲっぽくなくて、ちょっぴりドキドキした。これって…期待、しちゃってもいいの? 至近距離でユメヲの瞳を見つめ返した、数秒後。ユメヲはわざとらしい咳払いをしながら私から視線を逸らしてしまった。もう…このヘタレ、意気地無し、ネガティブ男!

私は不満げにムッと口を尖らせ、そしてユメヲの胸ぐらを掴んで引き寄せる。驚いて固まるユメヲの頬に手を添えて、唇に触れるだけのキスをしてやった。ユメヲは目を見開き、耳まで真っ赤に染め上げて…それから両手で顔を覆う。何なの、その反応。乙女か。思わず笑っちゃった。


「今度はユメヲからキスしてよね」

「…お前は男前だな」

「何それ、全然嬉しくない。…男前な彼女は嫌い?」

「嫌いだったら、こんな反応するはずないだろ」

「そこは好きってハッキリ言うところだよ」

「…察してくれ」


どこまでもヘタレで、意気地無しで、ネガティブ男なんだから。…まあ、そんなところも含めてユメヲの事が好きなんだけどね。ユメヲからキスしてくれるのは、気長に待ってあげる事にしようかな。

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リクエストBOXより
サイケまたしても*ユメヲ/女主/恋仲になって大分経つのに手繋ぎ止まりでキスまで踏み切れないユメヲに焦れったさを感じた夢主が自らキスする話

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