07
副長が珍しくフォロ方さんだ。つい泣いてしまった私に休めと言ってくれて、その言葉に甘えた。退に苗字で呼ばれた事に、あぁもうこの人は本当に私なんて好きじゃないんだと痛感させられる。
「…いきなり泣いてごめんなさい。やっぱり私、」
「相当山崎が好きなんだな」
「………思ってたよりも重症みたいです」
「みょうじ、一旦実家帰れ」
副長の一言に言葉が出ない。実家に帰るだなんて冗談じゃない、だけどこのままじゃ仕事にもならないし…どっちを選んでも迷惑が掛かるのは目に見えてた。
「今のみょうじじゃ直ぐ斬られるのは明白…他の隊士にも迷惑なんだよ。それに隊士は足りてるし新しい女中も来週から来る」
「邪魔ですよね…はっきり言って浮かれてました、すみません」
「アァ、邪魔。副長命令だ」
「………。」
フォロ方さんだと思ったらやっぱり副長は副長だった。
--------------------
----------
“帰れ…”本当はそんな事を言うつもりなんかじゃなかった。山崎と別れたコイツに優しくすれば何とかなると思ってた、けど違う。コイツは山崎しか見えてねェし、甘やかしても無駄なだけ。
こんな状態で斬られでもしたら…俺は自分を許せないだろう。側にいて慰めて優しくして…あわよくば自分のものになればいい…でもそれは結局何も生み出さねェ、憐れなだけだ。そして一瞬青ざめたみょうじが差し出した一枚の紙切れ、
「何かあったら連絡下さい。携帯じゃ出ないと思うんで実家に…」
綺麗な文字で書かれたそれは唯一の連絡先だった。
不器用な男(そんな顔されたら好きだなんて云えねェ)