08
私にとって実家は暖かく迎えてくれる家族がいる場所…なんてもんじゃなかった。家に帰るなり母上はやっと辞めてくれたのねだの、征治郎君が待ってるわよだの…結局私の事なんて何にも分かっちゃいない。ちなみに征治郎は許嫁、認めてないけど。父上は婿養子だからか母上に逆らえず何とも言えない顔をしていたけど、話があると言われ応接間に連れられた。
「なまえ、」
「今日は辞めて帰ってきたんじゃない。休暇貰っただけよ」
「…そんなところだろうとは思っていたよ。なまえが一筋縄じゃいかないのはきっと私の遺伝子だね」
何だよ遺伝子って。そもそもそんな事、大人しい父上に言われるとは思ってなくて吃驚だよ。
「なまえが心配でね、実は万事屋さんと言うところで真選組での生活を報告してもらっていたのだよ」
「(銀時め…)」
「もちろん身分は隠してね。それで彼に言われたのさ…」
「………。」
「“なんつーか今のアイツはらしくねェ。おっさんが心配すんのも分かるけどよ、俺は前のアイツがの方が好きだ”…とね」
銀時が前の私、つまり素の部分を知っているのは私の元カレだから。一月くらいで喧嘩別れしたけど、素の私の方が好きだと言ってくれたのは嬉しかった。だけど父上がこんなに意見を言うのは本当に珍しい。
「父上は変わったわね…」
「変わったのではない。なまえには私のようになって欲しくないからさ」
「え?」
もしかしたら父上も昔、好きな人が居たのに母上と結婚したのか…
「そう言う事なのだよ」
「父上も…なのね」
「母さんには私から言っておくから安心しなさい」
そう言われ父上に思いっきり頭を下げた私は部屋を飛び出した。
行く宛なんて何処にも無いのに(ありがとう、父上)