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「待て!早まるな!」
「コイツは私の獲物よ。だから手を出さないで頂戴」
「分かった!手は、出さない!だから銃を降ろせ!」
低い声で、そしてギロリと睨みつける。こんな処で死なせる訳にいかない。
「次、手出したら本当に死ぬわよ?私、」
いつだって覚悟は出来ている。この人を…山崎退を護る為なら。私は拳銃を降ろし退に上着を被せた。
「さぁ、続きをしましょ、」
言葉を紡ぎ出した途端、ドーンと大砲の音。退の次は総悟かと眼を向けたけれど総悟じゃない…そこに居たのはトッシーだった。
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「はぁはぁ…みょうじ氏ィ!駄目でござる!死んじゃ嫌でござるよ!!」
トッシーかよォォォ!何で来るんだよォォォ!!今のアンタは足手纏いにしかなんねぇよ!
「こりゃぁ凄えや。とんでもねぇ面白いモン見られたぜ」
「ったく、何やってんすか。アンタってやつは、」
なまえちゃんは呆れながら、爆風に巻き込まれて這い蹲っているトッシーに近づいて其処に跪いた。それから見た事も無い表情をして、
「…人を斬るのが怖いなら、此処に立つな。躊躇うなら、揺らぐなら…お家へ帰りな、トッシーちゃん、」
ドス黒い声色で吐き捨てた。それから見覚えの有る煙草に火を付け…
「………ったく、減ってたのはお前のせいかよ。後で買って返せ、クソガキ」
「あら、暴露ましたか。ちゃんと倍にして返しますよ、バラガキさん」
「とんだ不良少女だな、」
「ふふ、お帰りなさい…副長」
「「…!御用改めであるッ!!!」」
右手に拳銃、左手に剣。今迄の彼女では想像のつかない速さで。
「山崎ィ!」
「ハイッ…!」
「惚れた女くらい、テメェで護りやがれクソ野郎!」
「退!!」
「!?」
「振られようが嫌われようが、そんな事もうどうだって良い!生きて欲しい…ただ、それだけよ!」
そう笑いながら、浪士を斬る。反面真剣に、俺なんかの為に…
「何なんだよコイツ!めちゃくちゃ強ェじゃねぇか!」
「…コイツ、まさか!」
「あら、今頃お気付きです事?」
「あーあ、暴露たか、こりゃァ」
「有り得ないだろ…頭だけじゃ無ェのか!?」
「…私を頭脳だけのボンボンだと思わない事ね!」
たった一人、居ると聞いた事が有る。裏で徳川家をも動かせる頭脳、そして剣の腕も確かな人物。そうそれは…まさしく闇に舞う蝶の如く。
「まさか、黒蝶の…」
「白夜叉仕込みの剣、せいぜい味わいなさい!」
瞬く間に、二人でこの数をやるなんて。血塗れになりながら全滅させたなんて。
「立てる?大丈夫…じゃなさそうね」
「へ?」
「肩、腕回して、」
ひょい、と軽々しく持ち上げられる。
「よっ、と。動いちゃ駄目だから、ね」
彼女の何処にこんな力が有るのだろう。俺は意識が朦朧とする中、動かない身体を委ねて…
壊れそうだった此の想いごと全部護られた、そんな気がした(つーか黒蝶って何だよ、)(レディース時代の通り名ですよ)(ダセェ…)