拝啓、カミサマ | ナノ
41
意識を失うな、自分自身を保て。総悟に託して逃げてきた。今ここで帰ったら確実に…


「一生城の中、かな」


フラフラになりながら血塗れの背中で歩き続けた。唯一、城下での知り合いの処へ。せめて傷が治るまで…少しの間だけでも匿って貰いたくて。


「お登勢、さんっ!…お願い、」


ドンドンドン!と扉を叩く。返事は無い、まぁ夜中だし。それでも私は帰りたくない、否、帰れないから叩き続けるしかなかった。


「うっせーな!ご近所迷惑だろーが!って、エェェェ!?」



--------------------
----------



血塗れの女がそこに居た。背中斬られて着物が着物でなくなった…今にも死にそうなツラをした女。俺を見た瞬間、気を失って…とりあえず部屋に入れ、ババァを呼ぶ。


「なんだい、こんな夜中に。しかも女連れ込みやがって」
「知らねェよ、こんな女。つーかテメェの知り合いじゃねェのかよ」
「はぁ!?」
「ババァの名前呼びながら扉叩いてたぞ。ソイツの顔、見て解らねぇのか?」
「!!!」
「…知り合い、か?」
「銀時、この娘死なせるんじゃないよ。あと、暫く匿ってあげな」
「はぁぁぁ!?」


俺はらしくもなく看病した。ババァのあのツラ、何か隠してるだろうが、敢えて聞かない俺も俺だ。それから一通り傷が塞がっても一丁前に治ってもコイツはまだ此処に居た。


「押掛け女房かよ、」
「銀時さん?それは無い、有り得ないです」
「つーかホント何者なのお前?何様なのお前ェ!?」
「そんな事より、いつになったら教えてくれるんですか?」
「まーたソレかよ、教えねーってんだろ全く」


毎朝毎朝、剣の教えを乞われる。強くなりたい、護るべきモノを護りたいのだと。


「お家賃半年分…」
「…!!しゃーねェな!」


半年分なら、ま、いっか。


「まずはアレだ、基本から」
「基本は良いです。身につけてるつもりだから大丈夫」
「だったら別に要らないんじゃねーの?」
「貴方の…白夜叉の剣を知りたい」
「何でソレ知ってんの、お前」


ムキになって木刀を振りかざす。ニヤリと笑ってかわされる。叩けども振りかざせども、何度でも。


「お前、充分強いじゃん」
「足りない、まだ、足りないの!」


狂気、とも受け取れる気迫と表情に圧倒された。


「ん、ありがと」
「…もう良いのか?」
「うん!大体は掴めたしね。後は頭で整理するだけ」
「頭でって…ンな事言ったってなぁ、」
「私、頭だけは良いんだからー!」


そう言い残して部屋を後にした。夜になっても…帰ってこない。


そう、その女は二度と戻って来なかった
(オイ、アイツどうした)(はぁ?帰ったさ、)(家賃半年分ンンン!)
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -