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「アハハ、」
「こっちは真剣なんだよ!?ちゃんと、」
「いや、ちょっと懐かしくて、ね」
貴方は知らなくて良い。私が墓場まで持って行く話だ。
「昔話なんて、女から聞き出すもんじゃないわよ」
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「沖田さん、」
「何でィ、また暗い顔しやがって」
「なまえちゃんの、背中の事…」
あぁ、見たんだなアレを。まぁ仕方ねぇでさァ、結婚したらどうせ見てしまうんだ。
「忘れたくても忘れられる甘いモンじゃ無ぇ。お前に知る覚悟はあんのか?」
「知ってるんだったら教えてください!じゃないと俺、」
「死んでも言うなって言われてンですけどねィ。」
「………言えよ、」
久し振りに見たドス黒い山崎…こりゃ、云わずに此処で死ぬかアイツに殺されるかの二択。
「テメェらが最後に会った日、覚えてやすかィ?」
「え?気付いたら屯所帰ってた日ですか?」
「その日…暴漢にあっちまったんでさァ。ま、山崎は知らねェでしょうけど」
「…それで何があったんですか、」
俯き身体が震えている。何も出来なかった自分自身への怒りですかねィ。
「なまえは、お前を護る為に剣を握った。そして斬られた、それだけの事でィ」
「何で、何で、そんな事って…!」
「血塗れになりながら俺に電話してきたんでさァ。お前を連れて帰れ、ってな」
「クソがぁっ!」
そりゃこんな事聞いたらそう成りまさァ。俺も電話掛かって来た時はそんな感じだったしねィ。
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気付いたらあの日は屯所に帰ってた。気付いたら側に居なかった。ただ日常に戻ったのだと思っていた。たかが十五歳の女の子に、重過ぎる。
あの子を壊しそうだった此の想いも。乱れていた此の考えも、甘かった…軽過ぎた。
「沖田さんは全部、なまえちゃんの事…」
「あァ、零から百まで全部。普通の女に成りたがってた事も叶わない。成れないんでさァ。アイツはそんな白くない。アイツはもう、テメェで真っ黒なんでィ、」
細胞が、神経が呻く。必死に頭で想っても止まらない。
全てを受け入れる覚悟、出来やしたかィ?(何だって、受け入れてみせる)