拝啓、カミサマ | ナノ
38
黒歴史たるあの名で呼ばれ取り乱しつつも、渡された写真の中に一枚だけ、俺となまえちゃんの写真が混ざっているのを見つけた。瞬間的に全部、全部…記憶の中を駆け巡った。


「………思い出した、」


夢に出てきていた女の子の顔も、五年前のやりとりも…無邪気に笑いかけてくれたのは誰でもない、なまえちゃんだったじゃないか。黒歴史を封印するあまり、なまえちゃんの存在まで自分の中から消していたなんて。他愛も無い話をして、周りに渦巻く影を感じて、こんな少女に、とさえ思っていた様な。そんな事を少しずつ思い出して…


「何でこんな大事な事忘れてんだよ、俺は」


こんな昔の写真、まだ持ってたなんて。


「手遅れにならねェ様、早く行け」
「有難う…ございます!」


みっともないけれど、ダサいけど、消したい過去だけど…なまえちゃんは全部知った上で、俺を愛してくれていたのだ。それなのに、あぁ…俺は何て酷い事をしてしまったんだろう。
好きで、大好きで、愛し過ぎて。そして一言では云い表せない程、愛されていた。
無我夢中で走って、走り続ける。早く屯所に帰って一目散に伝えなければ。そう、ちゃんと…自分の言葉で。嘘偽りの無い、愛してる、を。
でもそれは、云えなかった。彼女の部屋に居たのは、そこに居る筈の無い恋敵だった。


あ!山崎氏ィ!
(何でトッシー!?)(忍び込んでみたでござるよ!)(忍び込むなよォォォ!)
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