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ずずず…と、あの時と同じような雰囲気の部屋の中、机を挟んだ目の前には局長、そして横には副長。只ならぬ空気の中、私達は打ち合わせ通りに話を進める。勿論、局長にも伝え済みだが少し不安もある。本当に騙されてくれるのか、これに対してどう出てくるか…最悪のパターンも幾つか考えていたけれど、今はこの場に集中しよう。
「トトト、トシとなまえちゃんが!!こここ、婚約だってぇ!?」
“棒読みにも程があります、局長…”
“だって仕方ないじゃないか!”
「えぇ。山崎さんに振られ、許嫁とも婚約破棄。そんな中で副長の気遣いに心揺さぶられまして…」
「…そういう事だ」
「えっ?で、でも万事屋は良いのか?」
「良くねェよ、良くねェよなァ〜?」
「テメェはどっから出てきやがったんだ…」
部屋の向こうで総悟のニヤけ顔が眼に浮かぶ。だが私にとっては想定内である…残念だな、総悟め…彼は既に買収されているのだよ。
「銀時は一回退いたじゃない、ゲームオーバーよ」
「…だそうだ」
「つーかさ、ホントにコイツの事…好きなの?」
「………。」
「あっれ〜?言えないのォ〜?」
銀時が副長に突っ掛かると咄嗟に筆を走らせ、こんな感じのことを言え!と指す。副長は私のこと何とも思っていないだろうから誤魔化し気味に。
「は、恥ずかしくて言えるかよ…」
「ふーん、まぁいいや」
「みゆき?」
「ん?」
去り際に続けた言葉は演技か本音か、逆光で表情は判らなかったけれど…声が少し震えていたのは確信出来る。
今度こそ幸せになれよ、(…ありがとう)(ところで追加報酬とかあり?)(オイコラ…)(成功したら、ね)