09
「はァァァ?実家に帰ったァァァ!?」
「全部テメェのせいだろ」
なまえちゃんが実家に帰った。わざと別れたり、苗字で呼んだりしてから相当傷つけてしまったみたい…
「山崎、本当にみょうじの事嫌いになったのか?取り乱してるあたりそうとは思えねェ」
「………。」
「アイツ相当キてたぞ。発狂して元に戻ったろ…」
「元に戻ったとは?」
「テメェ知らなかったのか?」
副長が聞くのは“付き合っていたのに”の意図。“監察のくせに”と言う含みもあるんだろう…
「全く…」
「アイツ泣きまくるわ刀振り回すわ…大変だったぞ。挙げ句俺の首元に刀突きつけるし」
「そんな事あったんですか!?」
「アァ、予想以上に強かったから隊士にした。後で聞いたが…アイツ家のために、強ェのに弱い女のふりして花嫁修行に来てたんだと」
花嫁修行…?俺はなまえちゃんが元に戻った事よりそっちの方が気になった。俺じゃない他の男と結婚すると言う事じゃないか…そう考えたら何だかモヤモヤする。
「俺は…なまえちゃんを嫌いになったりしてませんよ」
「じゃァ何故振った」
「…壊して、しまう気がして」
「だからわざと?」
「はい…手遅れになる前にと」
俺が本当に壊してしまう事よりも、このまま彼女が結婚する方が手遅れになりかねないけど。
「お前が本当にアイツを好きなら止めてこい。さもねェと、俺がみょうじを奪う」
「そんな事させません!俺がなまえちゃんを!」
「だったら早く連絡しろ!」
不服そうに副長が投げ捨てた紙には綺麗な字で電話番号が書かれており、拾い上げて電話をかけた。
「お願いだから出て…」
なまえちゃんに謝らなきゃいけない、ちゃんと好きって言わなきゃいけない。何よりも、結婚なんかしないで…と。そして呼び出し音が数秒続き、ようやく出た受話器の奥の声に俺と副長は驚かざるをえなかった。
はい、徳川でございます。((と、徳川ァァァ!?))