菩薩系番外 短刀達とほのぼの




いつもご飯を食べている大広間。
ここでは最近ある教室が行われている。


「はい、それではみなさんお好きな色を選んでくださいね〜〜」


ぽかぽかと暖かな昼間。

お昼ご飯を食べ終えて、今日の午後は久しぶりに全刀剣男士と私はお休み。
午前中に最低限やらなければならない畑仕事や雑務などの仕事は終えた。

大広間にある大きな机の上にあるのは、Sanizonで購入した大量のアクリル毛糸。まとめ買いがお得!となっていたそれは、たしかに一個あたりの金額がお安く、えーいと衝動でポチってしまったものだ。

洗い物はこれがあるのとないのでは全然違う、と私は思っていて。…いやほんとですよ?すごくピカピカになるんですから!


「はーい!僕今日もピンクっ!!かわいいしっ!」
「じゃー俺っちは紺で行くかな。汚れが目立たなそうだ」
「ぼ、ぼくは、黄色で…虎さんたちは、白ですけど…」
「僕はこの緑にします!鶯丸様の茶器を洗いたいです!」
「主君に差し上げたいので、この薄紫にします!」
「僕はこの水色にします〜!!」
「…兄様の、髪の色。…これにする」
「俺はもちろん赤〜〜っ!!」
「じゃあぼくは、このしろにします!」


粟田口短刀の皆さんと愛染さん、小夜さん、今剣さんは思い思いの毛糸を持つ。
何回かやっているその作業。失敗続きで未だ完成はしていないけど、今日こそは、と、皆さん一段とやる気に満ちている。

人数分のかぎ針には名前シールで各自の名前が書いてあって、私のかぎ針はさにわ
その私用のかぎ針を持ち、うーん、と考える。
この間は一番最初から間違っている子が多かった。
今日は一番最初に編み方をお見せして、お手伝いをしながら少しずつ編んでいこうか。そちらの方が成功率も上がる気がする。

「では、皆さん。頑張りましょう」

笑いながらそう言って始まった編み物教室。
皆さん最初のうちはワイワイガヤガヤしていたのに、それは本当に最初だけで、今や無言で真剣に毛糸と向き合いながら編み続けている。皆さんいつもとは違う職人のような顔つきで、ちょっとだけ面白い。



「…おや、なにをしているのですか?」



しんと静まり返った部屋の中、そう声を掛けたのは、お昼ご飯食器洗い当番を終えた一期さんだった。

いつもなら粟田口短刀の皆さんはパアッと顔を輝かせながらいちにい〜!と寄っていくのに、今日は一味違う。



「………」
「……あ、いちにい、食器洗いお疲れ様」


毛糸とかぎ針から目を離さずに一期さんには目もくれず。乱さんが一言そう言っただけ。
あまりにも冷たいその反応に、ぴし、と一期さんが固まった。


「あ、あの、一期さん、
いま皆さんすごく真剣にスポンジを作っていて…!やっとやり方がわかったので夢中なだけなんですよ!」


「は、はは…主殿、良いのです…なにやら楽しみにしていたのは知っておりますから……はは…私はこちらで見守る事に致します…」


強がりながらも寂しそうな一期さんは部屋の隅っこでいじける様に正座をした。

なんだかキノコでも生えてしまいそうな雰囲気である。
…思っていたより、皆さん編み物にハマってしまったらしい。



「…あ、国俊こんなところにおったんか、蛍が探しとったで」
「あとで行く」


ピシッ

「…お小夜。…この間吊るした干し柿が…出来上がりましたよ…」
「お茶にしませんか?」
「ごめんね兄様、今それどころじゃなくて」

ピシッピシッ


「今剣!竹馬を作る約束を今こそ果たそうぞ!山から竹を刈ってきた!」
「いわとおし、すこししずかにしていてください。ぼくはいまいそがしいので」


ピシッピシッピシッ



キノコが5人。
黙々と編み物を続ける短刀さんたちを寂しそうに見つめながらお兄ちゃんたち5人は隅で膝を抱えて見つめていた。
私はというと、苦笑いしかできない。

短刀さんたちが、こんなに頑張っている理由を知っていたからだ。
それから数時間、キノコな皆さんと短刀さんたちを見守りつつも、私は自分のかぎ針へと視線を移した。




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「「「できたー!!!!!」」」




色取り取り。お花のスポンジを皆さん掲げて、嬉しそうに大きな声で歓声を上げる。


「これでみんなの洗い物、楽になるよねっ!」
「いち兄!見てください!上手く編めたんですよ!洗い物当番の時は、これを使ってくださいね!」
「ま、初めてにしちゃ上出来なんじゃないか?」
「…こ、今度は、寅さんのボールも作りたいです…!」
「……兄様、兄様の髪の色で作ったんだ。これ、使ってね」
「くにゆきー!!これで掃除楽になるぜ!一緒に当番頑張ろうな!」
「いわとおし、これはかるくこするだけでよごれがおちるそうです!
これならいわとおしもおさらをわらないですみますね!」



キラキラな笑顔で見て見てと自慢げに詰め寄る短刀さんたちに、キノコと化していたお兄ちゃん達は意味が分かっていないようでぱちくりと瞼を瞬かせた。

そう、この本丸の財政状況から、洗剤をお安めのものに抑えているので、今まで洗い物の汚れが落ちにくく大変だったのだ。

主に洗い物なんかは元々厨の高さから短刀さん達にはあまりお願いをしていない。

大変そうなお兄ちゃんを見て、私が趣味で一つ作っているのを見て。

お兄ちゃん達のために僕たちも作りたいと言い出したのが、このスポンジ教室の始まりだった。


「皆さんの為に、弟さん達頑張ったんですよ。褒めてあげてくださいね」


私がこっそりとそう言えば、お兄ちゃん達はキノコから一転、嬉しそうに笑いながら、それぞれが皆さんを抱き締めた。






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