開けばザキ


<質問>

こんにちは。はじめまして。
私は現在妊娠中なのですが、子供の父親の事についてご相談があります。
実はそうとは知らず上司の子供を妊娠してしまいました。
その上司とは特に親しくもないのですが、今現在2人で任される仕事が多く、とても気まずい生活を送っています。
上司は私の妊娠については知っていて協力もしてくれますが自分が父親とは知りません。
私は一人で育てるつもりなのですが、先日その上司から暗に結婚しようと言われてしまいました。
子供の事を思えば上司と一緒にいるのが1番だと思うのですが、いかんせん私があまりにも上司の事をなんとも思っていなかったため、混乱しています。
長々と失礼しました。
私はこれからどうすればいいのでしょうか。
あたたかいアドバイスをお願いします。


<回答>
なんとも思っていない上司と子供を作る及びそれに至るまでの行為を平気でやるなんて最低です。









「で!?っていう!?」

思わず叩きつるけるようにソファーに投げた携帯はぽすりと柔らかい布地の上に着地した。
某質問掲示板にあらゆる重要な要素を省略して投稿した自分も自分だが元々それでどうにかなるなんて露ほども思ってないわけだから、こんなバカな解決法を試してみたのもホルモンのなせる技である。
時刻は夜中の2時。草木も眠る丑三つ時である。


(今日こそ普通に話をしようとおもったのに……)


あれ以来、同じホテルの部屋で暮らしているとは思えないほど静かな……というか本当に会話のない生活を送っていた。
最初の数日こそ、これもお互いの気まずさから来る対応で、時間が解決するものだという認識であったが……気がつけば朝の挨拶すらしない不気味な静けさは解決を先延ばしにしているうちに更に伸びに伸び、事件から2週間という長い月日が経っていた。
名前がこれは遂にどうにかしなければいけないと思ったのは今日の朝である。
優雅にソファーに座ってコーヒーを飲む先生と一言も会話をしないまま、牛乳をあっためていた時に、何かがトントンと肩を叩く気配がして振り返ると、心なしか少し困り顔のスタープラチナがトントンと指で名前の肩を叩いていた。


「えっと……あぁ!これ?」


スタープラチナが反対側の手に持っていたのはここ2週間の領収書の束、及びレシートが纏められたファイルである。
どうやらここ2週間の財団に請求する調査費のレシート管理をお願いしたい。
ということらしいが、これはそもそも仕事の話でありそれに関しては気まずいとかではなく直接会話するべきことではないのかと思うとなんだか嫌な感じがした。
自分達の今の関係性は間違いなく、仕事に支障をきたしている。

せめて今まで通りとも行かなくても……
普通に会話ができる空気に戻さなければならない。
今日いつもの調査とかいうものに出かけていく空条先生の背中を見ながら、そう決意した。今日帰ってきたその時こそ、自分から話しかけるのだ。


(……それにしても遅い)


かつてここまで先生の帰りが遅いことは無かった……と思う。
ソファーに横になって、大して面白くもない(というか田舎なせいで何回も同じ通信販売チャンネルが無限ループする時間帯のせいだが)テレビを眠気覚ましに睨みつけるように見つめている。
そうしていると不意にお腹がぽこりと鳴って、あぁ。今日も元気だなぁと小さく微笑んだ。


「ごめんねー、ママのせいで君も夜更かしだね」


話しかけてもピクリともしない息子。
チッなんだこいつ胎児の癖に反抗期か。
可愛い奴め。


(大体こんなことで臍を曲げるとか、空条先生は我儘よ。別に先生はふられただけじゃない。私なんて……)


名前はあなたの愛情なんて露知らず。一般的ではない妊娠方法で懐妊した結果、父親に成るといてくれた男性を突き飛ばしてカフェに逃げ結果突き飛ばした男性の子供を今も大事にお腹に抱えている。という複雑かつ奇々怪々な状況である。
それに現在、同じ部屋で暮らすこの男性と挨拶どころか2週間口もきいていません。

ここまでで自分の心労の方がデカすぎる。
抱える秘密が多すぎるし、先生が臍を曲げているせいでフラれただけの空条先生がものすごく軽傷に見えてくる。
久しぶりの夜更かしとホルモンの力も相まって最早ボルテージもマックス!妊婦の活動の源は怒りであると言っても過言ではないほど、名前は今滾っていて………


ドサリ。


廊下で大きな何かが崩れ落ちるような音がして、思わず両肩がはねた。
馬鹿なことを考えていた心臓が激しく脈打つ。
反射的に自分自信にスタンド能力を発現させて息を殺した。
前線に出ていないような錯覚に陥っていたが、この街自体がそもそも殺人鬼の潜む戦場
だったと思い出して、逃走経路を組み立てながら後ろ手にドアノブを開いて距離を取る。


「……!?空条先生!!」


意外なことに、廊下で崩れ落ちていたのはこの夜中まで自分が待っていた人物だった。
青い顔をした彼に負けないくらい青白い顔をした名前は、とっさに自分の防御のスタンドを彼の体に触れることで発現させる。


(空条先生が倒れるだなんて……一体!)


どんな強力なスタンド使いが!
しまった。いくら自分の能力が完全防御型であってもこの体調だ。それに誘拐されて長期発現となればスタミナ負けしてしまう。
今すぐ撤退して仗助くんのところに行かなければいけない。ときつい訓練で叩き込まれた思考力が警報を鳴らしている。
それでも、どうしてだが彼を放っておける気がしなくて、駄目だ駄目だと思いながら廊下に飛び出し彼を揺すった。


「空条先生!!大丈夫ですか!!一体何が!!」


揺すられた彼が苦悶の表情で息を吐く。


「空条先生ェッ………って…うわぁ」


その息は言うならばアルコールを通り過ぎてエタノール。
ツンときたその匂いに、名前は思わず彼を踏みつけそうになった足をどうにか引っ込めた。




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