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Under the intense rain


二週間の間を空けた夕方。
一羽の鳥が、或る屋敷の窓の縁に止まった。


「…明日か」


鳥が足に付けていた紙を読んで、サスケが呟いた。
明日、火の国の領土にある、木ノ葉から離れた峠に行こうという内容。
その秘密の手紙に同意を示す返事を書き足して、鳥の足に結び直す。
頭を一撫ですると、窓の外へと放した。


気晴らしに、と部屋を後にすると、大蛇丸の手下の音忍数人が、何やら楽しそうに話している。
サスケはそいつらを無視して、横を通り過ぎようとした。
が、


「なあ、明日木ノ葉に行かねえか?」
「そうだな。最近鬱憤も溜まってるし、殺りに行くか」
「だったらあの峠の辺りだろ。あの辺は平和ボケしてぼんやりした馬鹿共がよく歩いてるからな」
「それで決まりだな」


汚い声で笑いながら、そんな話をする。
その内容に驚いて一瞬止まったが、また何も無かったように歩き出した。


「……不味いな…」


殆ど音にならない独り言を呟く。
今ここでこいつ等を殺せば、騒ぎになってしまうだろう。
そうなれば大蛇丸かカブトが理由を訊いてくる。
俺がそれに答えなくても、適当な事を言っておいても、どうせ疑う。
どう転んでも、不味い。

取り敢えず、今日はどうする事も出来ずに黙っているしかない。
カリ、と親指の爪を噛みながら唸った。

そんなサスケの様子を陰から見る人影があった。






次の日。
よく晴れて、散策をするには丁度良い天気だ。
集合場所は峠の近くの大木の下。
サスケはその場所へと急いだ。
昨日物騒な話をしていた音忍たちが、もう居なかったから。
そいつ等よりも早く、真白を見つけなくては。

大木の下で、名前を呼ぶ。


「…真白!!」
「わっわっ! シィー!!」
「…真白…」


木の上の、葉と枝の間に真白がいた。
跳び下りて、サスケの横に立った。


「さっき近くに人が居たんだから、静かにしないと見つかっちゃうよ」
「! 音忍か!?」
「え、ううん。木ノ葉の人。知り合いだったから…」
「…そうか」
「…どうかしたの?」


どこか焦った様子のサスケに真白が聞いた。
サスケは周りを気にしながら、手短に事を話す。


「…だから、今日はもう帰った方が良い」
「…仕方ないね。残念だけど…」


仕方ない。
そうは言っても、やはり少ししゅんとする。

サスケはしょげている真白を見て、とても愛しいという感情が湧き上がるのを感じた。
一度糸が切れた後は、どうにもそういう気持ちを抑えられない。
抱きしめて、額にキスをした。


「…また直ぐ会える」
「…うん。そうだよね」


どちらからともなく、軽いキスを交わす。
また直ぐに会える事を願って、二人は別れた。
足早に駆けていく真白を見送り、サスケも音へ戻る。


しかし、何事も無く終わったかに見えたこの日の出来事は、とんでもない運命の始まりだった。






その日の夜。
夜空に星が煌く時刻に、命からがら逃げて来た女の姿があった。
その女性は仲間の元へと走っている。


「! 大丈夫か!? 一体何があった!」
「はぁ…はぁ…音忍に…襲われて…」
「音忍だと!?」
「…ええ…なんとか逃げ切ったけど…奴等、何人も居て…、今までしつこく追われてたの…。
あっ! そうだ…あのね…」


急に声を低くして、ひそひそと話し始める。
仲間たちと頭を寄せ、内緒話のように。


「逃げてる途中で見ちゃったのよ…」
「何を」
「木ノ葉の忍と音の忍が、抱き合ってキスしてるところを!」
「嘘!?」
「マジかよ…」
「で、その木ノ葉の忍…女の方なんだけど、どっかで見たと思ったら、あの真白だったのよ!」
「真白が!? …正気かよ…」
「相手は敵国の忍でしょ? 本気なのかしら…」
「とにかく、明日本人に訊くしかないな」
「そうね」


忍たちは姿を消し、その場に人は居なくなった。
寂しく風が吹いて、木々の葉を揺らしている。






朝、火影邸に呼び出された真白は、訳も分からないままそこへ向かった。
面を着けて来ないように指示され、少し嫌な予感がする。

火影の居る部屋の前に立ち、数回ノックをする。
直ぐに返事があり、一言断りながら中に入った。
中には、火影様はもちろんのこと、暗部の隊員や、御意見番まで居た。


「…何か、御用でしょうか…」


どこか怖い雰囲気で、空気に威圧されながらも真白は尋ねた。
皆が神妙な面持ちだ。


「…真白。私はお前を信用している。信頼しているよ」
「…有難き御言葉」


火影の言葉に頭を下げ、礼を述べる。
何故こんな前置きがあるのか。
真白の嫌な予感は募る。


「…この者達から、或る話を聞いた」
「……話…ですか」
「そうだ。その話が、問題なんだよ」
「………」


暗部の一人が一歩前に出て、話し始める。


「昨日、峠の大木の下で、真白が音の者と密会しているのを目撃致しました」
「!」
「…そういう事だ」


見られていた。
嫌な予感は、的中してしまった。


「…その顔だと、この話は嘘ではないようだな」
「…!!」


しまった。
そう思ったが、もう遅い。
面を着けさせなかったのは、こういう訳か。


「悪い事は言わない。止めておけ」
「………」
「相手は敵国の、『忍』なんだ。しかも、悪賢い音忍なんだぞ」
「! なっ…」
「今は何もなくとも、その内にこちらの手の内を探ってくるつもりかもしれない」
「…っ…」
「こちらの戦力や作戦が向こうに漏れてしまうと、困るのは我々だけではない。この国の者全員だ」


火影様や、他の者の言い分も分かる。
そう思うのは、当然の事だから。
真白も一度は疑ってしまったくらいだ、無理はない。


「…彼は、そんな人じゃありません」
「分からないぞ。演技をして、騙しているのかもしれないじゃないか」
「でもっ…」
「とにかく、今後はその音忍に会わないように」
「! そんな…!」
「分かったな?」
「………はい」


有無を言わさない皆の言葉に、反論なんて出来ないまま、約束させられた。


その後、何度も鳥を飛ばそう、抜け出そうと試みたが、いつも見張りが居て、出来なかった。


折角、やっと、覚悟をしてサスケと愛し合うと決めたのに。
全部、全部嘘だったなんてこと、ないよね…サスケ…!


不安を拭い去る事も、疑いを止める事も、出来ない。
そんな自分が、本当に悔しい。
再びサスケを疑ってしまうなんて、と嘆く。

一人になって考え込むと、どうしても悪い事ばかりになってしまう。
そうならないように、真白は休むことなく任務に明け暮れた。




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