5-2 「ピィーーーッ」 「………」 我武者羅に働く真白の上空に、集合を告げる伝鳥が現れた。 暗部装束のままで、直ぐに火影の屋敷へ向かう。 「……失礼します」 「ああ、来たか、真白」 火影は執務の手を止めた。 「…如何様な御用件でしょうか」 見張られるようになったこの一週間、休むことなく働いていた真白。 それ故に心は少し荒んでしまい、口数もめっきり減った。 仲間達、特に友子が酷く心配している。 「少し、やってもらいたい事がある」 「………」 「お前には辛いかもしれないが、先手を打っておきたくてな」 「……?」 面を着けているので見えないが、真白は眉を顰めた。 変に前置きがある時は、碌な事がない。 しかし敢えて口を挟まずに、火影の言葉を待った。 「……例の音忍に、会ってもらいたい」 「!? …どういうことですか…?」 一週間前、会うなと言ったばかりなのに、どういうつもりなのか。 更に眉間に皺を寄せた。 「向こうに情報を聞き出される可能性があるのなら、こちらが先に聞き出せば良い。そう思ったからだよ」 「……それは、嫌です」 そんな事をする為に、今まで会っていた訳ではない。 そんな事の為だけに、サスケに会うのが嫌だった。 「…そいつに会える、最後のチャンスかもしれないぞ」 「!」 「それでも、良いのか?」 『真白が音忍と会っている』という噂は、木ノ葉全体に広がった。 何も知らない人からは、指差され、「スパイだ」などと囁かれる。 その度に真白は嘆き、そして悩んだ。 何故責められるのか。 自分はただ、一人の男性と愛し合っているだけなのに。 それとも、何かどこかで道を踏み外しただろうか。 そんな筈は、そんな筈は… 日に日にやつれ、荒んでいく真白。 そんな真白を心配した周りが、何とかならないかと火影に縋った。 火影も同様に真白を心配していたので、前に述べた建て前を作り、会わせることにした。 そうすれば、少しは元気になると思ったのだ。 真白はそれに、少し考えて答える。 「…やって、みます」 「そうか、やってくれるか」 火影はホッと息を吐いた。 この答えをくれなければ、きっと真白の仲間にどやされていただろう。 「じゃあ、今日はもう休みな。しばらく休暇も取らせる。疲れているだろう?」 「…はい。…では…」 真白は火影の前から姿を消した。 火影はもう一度溜息を吐いた。 「真白…お前は本当に、良い仲間を持ってるよ」 一人になった部屋で、呟いた。 真白は家に帰ると直ぐに、紙を結び付けて鳥を飛ばした。 それはもう、秘密の手紙ではない。 それと同じ頃。 「…サスケ君…貴方最近、木ノ葉の忍と会っているそうね」 「! ………」 「カブトが教えてくれたわ…」 「悪いね…サスケ君」 サスケは大蛇丸に呼びつけられていた。 殺気が滲み出ている大蛇丸と、その傍らで薄く笑うカブト。 そのカブトを睨みつつ、サスケは殺気を放つ。 「こちらの手の内を知られたら、どうしてくれるつもりなのかしら」 「…そんな話はしてねえ」 「これから侵略する国の子と仲良くなられちゃ、困るのよ」 「君はあの子を助けたいと思うだろう? 重要な戦力である君が戦ってくれないと、とても困るんだよ」 「俺はそんなものを手伝う気はさらさらねえっつっただろ」 「…まあ、最初からそう言うと思っていたけれど…」 大蛇丸は目を細め、サスケを見据える。 その視線を、サスケは臆することなく無視した。 「……サスケ君、その子ともう一度会いなさい」 「!? …何故だ」 大蛇丸の提案に、サスケは聞き返した。 口から笑い声を零して、大蛇丸は言う。 「その忍を利用して、向こうの情報を聞き出しなさい」 「…何だと…」 「木ノ葉の戦力、財力、現状、何でも良いわ。聞き出しなさい」 「……断る…と言ったら」 「これは命令よ。断ることなんて出来ないわ。…もし裏切るような事があれば、貴方と、その忍を殺すわ。二人まとめてね」 「! ……チッ」 サスケ一人なら、まだ何とかなったかもしれない。 しかし、ただの暗部である真白が、力の戻った大蛇丸から逃げ切れるとは思えない。 サスケには、自分以外を連れて大蛇丸の手から逃れられる自信はなかった。 嫌々ながら、渋々了承する。 出来れば、そんな事はしたくない。 酷い罪悪感が、サスケを襲う。 こんなにも早くばれるとはな… どうせカブトは、あの時から気付いてやがったんだ…くそが ……真白……巻き込んじまったな…畜生… 俺が…もっと強けりゃ……! ガツッ、と苛々を壁にぶつける。 壁を殴った拳からは、じんわりと血が滲み出ていた。 「……真白…」 一振りして血を飛ばすと、サスケは部屋の中に入った。 [←] [→] 戻る [感想はこちら] |