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At an end of white darkness


いつまで経ってもサスケからの返答がないことに真白が不安を覚え始めた時、暗部の姿をした者が現れた。


「!」


クナイを取って咄嗟に身構え、暗部面を睨む。


「真白! やっと見つけた!」
「私は、帰りません!」


サスケの上着を掛けた腕は少し震えている。
それは寒さの所為ではなく、仲間と戦い傷付ける事になるかもしれないという恐怖からだった。


「そんな事言ってる場合じゃない!!」


相手の暗部はしかし、そんな事はどうでも良いと撥ね退ける。
それに疑問符を返すと、その人は続けた。


「あんたと一緒に居たあの男性が、雪崩に巻き込まれたのよ!」

「……え?」



ナダレ ニ マキコマ レ タ ?


真っ白になった。
頭の中が、雪で一杯になったようだった。

『ナダレ』が何か分からなかった。
『アノヒト』が誰の事か分からなかった。
『マキコマレル』の意味が分からなかった。

分 か り た く
 な か っ た の に



「…嘘……嘘よね!?」
「…」


クナイを落として、思わず駆け寄って問うた。
“今のは嘘だった”という言葉が聞きたかったが、かつての仲間は黙るだけ。
絶望感が押し寄せる。


「……そ、んな…」


冷たい雪の上に膝をついて、ただ呆然とする。
その真白を見かねて、暗部が話し始めた。


「…私達も、音の奴等と同じ様にあんた達二人を追ってたのよ」


淡々と語る。
しかしその中に、感情らしきものも見られる。


「でも山の途中で見失って…。しばらく様子を見てたら、音忍の大群…五十人は居たわ、それが雪の中を進んで行ってたのよ」
「え…? 待って、待ってよ…」

そんな話、知らない。


「そんなの居なかった…!」
「本当に居たのよ、真白」


言い聞かせるような口調で、言った。
真白は、俄かには信じられなかった。
自分の所には一人として敵は現れなかった。
だからそんな事を言われても、信じられない。


「それで、そいつらの後を付けて行くと…あの人が一人で…」
「………一人、で…」


そんな
そんなつもりじゃ、なかったのに
私が死んで、サスケが生きる筈だったのに

口に残った兵糧丸の味が、胸を締めつけた。


「…助けに行こうと思ったんだけどね…。…直ぐに、雪崩が起こって…」


雪崩が迫っていると、彼に向かって叫んだ。
しかし彼は後ろを振り向きもせず戦って。
雪崩を避けようとした音忍共々道連れにして、雪の波に飲まれてしまった。

結果、敵は全滅した。


「……サ、スケ…」


弱っていた自分の所為でこんな事になってしまったのだと、自分を責める他ない。
自分を責めるしか、この遣る瀬無さは晴らせない。

私の所為だ…私の所為でサスケは、サスケは…っ!!

カタカタと肩を震わせ、悲しみと罪悪感に打ちひしがれる。
瞳からは涙が溢れた。


「…あ、あ…っっ! サスケェ…っ!」
「…!」


雪に落ちればそれを溶かし、凹みを作っていく温かい液体。
次々と流れるそれらを止めてくれる人は居ない。
傍らに立っていた暗部はしゃがんで、真白の肩を持った。


「今、“サスケ”って言ったけど…『うちはサスケ』の事?」


女の質問に、真白は嗚咽しながら小さく頷いた。
すると暗部が首に巻いている通信機から連絡が入った。
電波が悪いらしく雑音が混じっている。


『今、例の男を発見した。火影様から預かった写真と照合しても、『うちはサスケ』に間違いない』
「了解。こちらも真白を発見したので、そちらに向かう」
『了解』


そう会話し終わると、真白にその内容を話し、他の暗部の元へ向かった。





木は薙ぎ倒され、岩は雪に埋まり、そこには何も無い。或る場所に数人の暗部が集まっている他には。
真白の足取りはかなり覚束ないが、仲間が手伝って何とか辿り着いた。
暗部達の中心に、傷だらけのサスケが横たわっている。
しかし暗部の一人がその体の上に手をかざし、治療している。
死んでいるなら、その必要はない筈なのに。


「…生き、てるの…?」
「ええ。虫の息だけど…それでも奇跡的にね」


サスケがまだ生きているという喜びと、この状況で何も出来ない自分の不甲斐無さが織り交ざって、何も出来なかった。


「…っ、良か…っ!」


地に膝をついて、サスケの手を取る。
肩や腕から流れてきた血が付いていたが、そんな事は気にならなかった。
ただボロボロと涙を流して、この奇跡を噛み締めた。

手が少し、温かいのだ。


「…よし。大きな傷は塞いだよ」


治療を行っていた暗部の男はそれを止めて、こう言った。
真白の肩に優しく手を置く。


「でもまだ応急措置だ。本当に助けるなら、木ノ葉で本格的な治療をしなければならない。流石に骨や内臓全部は私一人では治せないんだ」
「…ここから木ノ葉までかなり距離がある。…油断は出来ないわね」


暗部面を着けた友子が、呟いた。
真白を見下ろして、続ける。


「真白、木ノ葉へ急ぐわよ。迷ってる暇はないって、分かるわよね?」


力なく頷く真白は、半ば諦めたような感じでもあった。
木ノ葉へ戻ってしまえば、サスケがこうなった意味がなくなってしまうような気がするから。

暗部の一人が大きな狼を三頭口寄せし、それぞれに二人ずつ乗るよう指示した。


「急ぐから、振り落とされるなよ!」


真白は友子と乗り、サスケは狼に乗り慣れている男に担がれた。
男はサスケより背が低いので辛そうだったが、仕方ない。

三頭の狼は、木ノ葉へ向かって雪山を駆け下り始めた。




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