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星よりも君に願おう


「あ、そっか。今日って七夕なんだ……」
「ん?」

 サスケくんと学校から帰る途中、電柱に貼り紙を見付けた。そこには商店街に笹があり、短冊を配っているのでお願いごとをしよう、などと書いてある。

「願い事かぁ……うーん」
「行ってみるか?」
「ん、別にどっちでも良いよ。特に行きたいとかじゃないし……」
「そうか」

 試しに願い事を考えてみるけれど、特には思い付かない。勉強は自分ですることだし、欲しいものは無いし、……さ、さすけくんともなかよしだし……。ついこの前、その、二回目のき、き……、きっ、き、す……を、したところだから、うわあんなんだか恥ずかしいよ!

「……なに赤くなってんだ?」
「えっ、あ、ううんなんでも、ないよ。えへへ……」
「……」

 照れて誤魔化すように笑うと、サスケくんも少しほっぺが赤くなった。も、もしかして感付かれたのかな、恥ずかしいな。

「そういえばサスケくんは、何かお願い事はないの?」
「俺か? 俺は……強くなりたい。けどこれは星に願うようなことじゃねえしな」
「そっか……」
「お前は?」
「あたしも同じかな。医療忍術ができるようになりたい、けど」
「そうか」

 そもそもありゃあ裁縫が上手くなるように願うもんだからな。
 そう言いながらサスケくんは電柱の前からまた歩き出した。私もそれに付いて電柱から離れる。

「えっ、そうなの? 知らなかった……」
「織姫が裁縫、というか機織りだな。それが上手い女性だからな」
「へぇぇー、よく知ってるね、サスケくん」
「なんかで聞いたのを覚えてただけだ」

 すっかり感心して感嘆の息を吐いていると、サスケくんは照れ隠しみたいにちょっとそっぽを向いた。

「俺とのことは言わないってことは、それはもう叶ってるってことか?」
「う、……うん」
「……なら良い」

 照れて少し俯いて歩いていると、サスケくんの差し出した手が見えた。ちょっとびっくりした勢いで顔を上げると、照れてきまりが悪そうにサスケくんが待っていた。

「ぁ、」
「……早くしろよ」
「う、ん」

 急かされて半ば慌てて、サスケくんの手を握る。気温が暑いから生暖かい私の手と、同じく生暖かいサスケくんの手。一緒になると更に熱くなってしまった。なかなか慣れない、なあ。
 照れて恥ずかしくて暑い上に熱いから不快なはずなのにどうしてこんなに、

 しあわせなんだろう

「……お願いしなくても幸せになれちゃうってすごいなあ」

「……なんか言ったか?」
「あ、ううん。独り言だから気にしなくていいよ」
「……」


 星よりもきみに願おう




(日記再録 投稿日 2009.07.07 Tue)
19と20の間。


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