雷鳴と様子見 ゴロゴロドオォン。地下で研究資料の整理をしていると、そんな音が響いた。雷だ。音の大きさからしても結構な近さだ。 停電したら困るなーと思いながら、椅子に座ったまま部屋の隅にある非常電源装置のほうをちらりと見る。赤いランプが点灯しているので、正常に動いてくれていることが判る。材料や完成品の薬を保管している大型冷蔵庫や、材料の魚類を飼育している水槽のポンプなど、止まると困るものもあるので、彼の存在は重要だ。ちなみに研究データの入っているパソコンちゃんは、ノート型でバッテリー駆動のため、停電には強い。(ただしネット通信中は要注意) すると出入口から、鉄板を叩く鈍い音が数回響いた。返事をする間もなく、金属の擦れ合うか細い音がして、一つの気配が顔を覗かせた。振り返って階段のほうを見やれば、数段だけ下ったところで足を止め、こちらを窺うサスケくんの姿。 「……」 覗き込むようにして前屈みに、天井壁の切れ目から、斜めに傾けた顔をこちらへ向けている。ゴロゴロと地鳴りのような音が地上のほうから響く。 何をしに来たのかは察しがついていたので、嬉しく思いながら「大丈夫だよ」という意を込めてひらひらと手を振る。それを見届けると、何も言わないままサスケくんは戻って行った。 ふふ、と笑みがこぼれる。心配性というかなんというか。 いつ頃から平気になったのかは少し曖昧だけど、雷に対するトラウマは大分昔に克服している。もちろんサスケくんもこのことは分かっているはずなのだけど、それでも一応、念のため、様子を見に来てくれるのだ。 それがどうにも嬉しくて、頬が緩んでしまう。ああ、うん、ダメだ、抱きつきに行こう。 椅子から立ち上がりながら文書データを保存して閉じ、休止モードにしてノートパソコンを閉じる。白衣が浮き上がる勢いで体を翻し、スリッパの音をパタパタと立てながら階段を駆け上がって、閉じられたばかりの鉄扉を引き開けた。 (180529) [←] [→] [絵文字で感想を伝える!(匿名メッセージも可)] [感想を届ける!] |