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中忍試験


 中忍選抜試験の三次試験。一次、二次は実力ある者を選別するものだが、三次は更に各里の忍の評論会を兼ねているため、五大国の里の長たる五影も集い、お互いの雛鳥を見せ合う場となる。下忍の成熟具合は里の戦力、経済力と比例する。観客席には、応援に来た保護者はもちろん、依頼相手を吟味すべく目を光らせている他国の者も大勢居る。故に試験の参加者らは、“ただ戦う”以上のプレッシャーも感じているはずだ。

「あ」
「あら」

 客席で一人開始の挨拶を待っていたら、最近あまり見なかった顔がやって来た。サクラさんと、いのさんと、シカマル君の奥さん。薬作りで籠りっぱなしなのと、材料調達や食材の買い出し、それとサラダの修業を見るくらいでしか外に出ないから仕方ない。

「久しぶりねぇ!」
「あまりにも見ないから、働きすぎで倒れてるかと思ってた」
「あはは……まああんまり変わらないかな」

 お腹が空いたり用を足すぐらいでしか研究室を出ようと思わないせいで、たまに寝起きまでそこでしてしまう。これはもう倒れてると言っても過言でない。
 各々が近くの席に腰掛けた時に、思い至って声を出す。

「あ、そうだ」
「?」
「サクラさん、最近サラダの面倒を見てくれてるんだよね。お礼にも行けずにごめんね」
「ああ、そんなこと。いーのよ、畏まらなくて。私が好きで教えてるんだから」

 にこやかにあっけらかんとそう言ってくれる。飲み込みが早くて修業をつけるのが楽しいくらい、とまで。それには私も頷いて、肯定の言葉を続ける。

「うん。サスケくんの遺伝子すごいよねぇ」
「なに言ってんの! チャクラコントロールの正確さとあの集中力の高さは、どう見てもアンタ譲りよ」
「そうかなぁ、ふふ」

 そうして話している間に、三次試験開会の挨拶が始まった。太い眉にまん丸な目、まつげ、おかっぱと、極めつけの、豪快に袖が破れた全身緑のトラックスーツ。これでもかと特徴を詰め込んだ男の人が、審判と司会を兼ねるよう。
 試験の説明を受けるため整列する受験者たちの中に、サラダも居る。あの格好の男の人から、きちんと真剣に話を聞く姿に、やっぱり真面目なところはサスケくん譲りかなと思う。私ならあの格好が気になってそれどころでなかっただろう。

 ああ、懐かしいなぁ。昔、サスケくんが中忍試験で闘うのを、こうして見たことがあったっけ。あの時初めて披露された千鳥、驚いたなぁ。サスケくんの使う性質変化は火遁ばかりだったから、雷遁を使えるようになっていたこと、そして何よりもそのスピードと威力に、感嘆のため息をもらしたものだった。あの頃からサスケくんは本当に強かった。


 初戦は、ボルト君と、雲隠れの忍との試合。つまり、サスケくんが師匠として修業をつけた成果が見られるわけだ。他人の子供の試合が楽しみだなんて不思議だ。

 雲隠れの子は爆発する風船ガムを操る忍だった。それをリングに所狭しと浮かべられてしまい、ボルト君がどう対処をするのかとよく見る。下手に触れれば爆発、さらに誘爆し、とても危険。空間支配に長けた忍は厄介だ。
 これ以上状況を悪くされる前に何か手を打たなければ、と思う間に、ボルト君が腕を振るった。放たれた手裏剣は見事に風船の隙間を縫い、最後には大きく曲がって相手の口元の爆弾ガムを貫いた。顔前で起きた爆発に、チャクラコントロールを失った風船は次々と破裂。勝敗は呆気なく決した。客席は拍手の音で包まれる。

「……あれは……」

 サスケくんの手裏剣術によく似ている。アカデミーの頃からよく曲げて投げていた手裏剣。高い回転数と絶妙な角度によって成される曲芸は、いつ見ても息をのむ美しさだった。

(……でも、最後にあんなに急に、勢い付いて曲がるなんて……)

 ただの手裏剣術でないことは確かだ。手裏剣に、何か性質変化を加えた特殊な術でも仕込んでいたのだとしたら、それは素晴らしいものだ。だけどまだ師として教え始めたばかりのサスケくんが、単純な手裏剣術にチャクラを込めるよう指導するものだろうか。サスケくんなら、「まずは基礎」とばかりに技術をみがかせて、忍術は後回しにしそうなものだけど。

「碧、どうかした? 難しい顔して」
「え、あ、ううん。……たぶん、思い過ごしだから」

 確信のないことを言いふらすことはない。今は彼の勝利を祝福しよう。
 周りの歓声や拍手に混ざり、私も手を叩く。後でサスケくんに聞いてみればいいことだ。


 次はサラダの試合。私の声の大きさでは試合場まで届かないだろうから、せめて熱い視線を注ぐ。
 相手はこれまた雲隠れ。電光掲示板には『うちはサラダ vs タルイ』と表示されている。

「一回戦、二試合目……はじめっ!」

 合図と共に、雲隠れが跳び掛かる。サラダはその動きをよく見て、易々とかわした。瞳は紅く輝いている。
 写輪眼を持ってすれば、正面からの殴り合いは簡単に制することができる。相手が何か絡め手を用意していようとも、その眼を欺くのは容易なことではない。
 敵の攻撃を何度かかわし続け、相手の隙を見る。『アレ』は掠りさえすればいい。脚に巻いたホルスターに差したクナイの柄、その輪にさっと中指を掛け、引き抜く勢いのまま回転させ、相手の脚に掠める。

「っと、あぶねぇあぶ、ね……?」

 回避して着地した途端に膝から力が抜け、崩れ落ちそうになる相手。サラダはその隙だらけの顔面に向けて、クナイを握る拳をぐっと構え、腰を捻った。あれはもしかして。

「はあああ……ッラァアアーー!!」

 力強い打撃音と、吹き飛んだ雲隠れ。彼がぶち当たった壁は衝撃音と共に大きな凹みを作り、対戦者はずるずると力なく倒れた。

「よしっ」
「勝者、木ノ葉隠れ、うちはサラダ!」

 危なげない勝利に、サラダの確たる実力を見た。
 すごいすごいと手を叩いて喜んでいると、隣でサクラさんが自分のことのように大喜びしている。

「サクラさん、今の」
「碧、あれって」

 同時に飛び出した確認の言葉。そして嬉しさに笑い合って、お互いの教えが活きていることを確信する。あの怪力パンチは、間違いなくサクラさん直伝のものだ。

「言ったでしょ、大したチャクラコントロールだって」
「そんな気はしてたけど、まさか本当に教えてるなんて」
「それよりあれよ! あのクナイ、絶対に薬を仕込んでるでしょ。それもおっそろしく即効性の高いのを!」
「私はレシピを教えて側で見てただけ。調合したのはサラダ自身だよ」

 タルイとかいう雲隠れの忍。顔面の骨が折れ、脳震盪を起こし、背中を強かに打ち付け、片脚に筋肉弛緩剤を食らって。忍として復帰できるまでにどれくらいかかるだろう。後で雷影様にお見舞いの薬を届けるようにしなくてはならないな。



 


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