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浴衣でお祭り 4/4


 運動神経がいいって、輪投げや的当てだけじゃなくて射的まで上手いんだな。いや、こういうのは『要領がいい』っていうんだろう。物事のコツを見極めるのが上手くて、順応も早い。景品は全部「荷物になる」って断ってたけど、貰っとけばいいのにね。

「これ以上お前に餌付けしちゃ、ぶくぶく太っちまうからな」
「うっ、うーん……そだね」

 というか、餌付けだと思って『あーん』してたのか。ペット扱いは相変わらずだ。
 私のほうはからっきしで、どれもこれも振るわない結果だった。コツを教えてくれるでもなく、バカにしたように鼻で笑われるばかりで、知ってはいたけど優しくない。悔しい。

「さて、そろそろいい時間か?」
「えっと……うん、そうだね」

 巾着からケータイを取り出して時間を確認する。花火大会が始まる十五分前。移動や場所取りを考えればちょうどいい時間だ。

 花火会場は、すぐ近くの大きな湖。周りにはぐるりと囲うように林があり、花火は対岸から打ち上げられる。空に上がるのを見上げるのもいいけど、水面に映る花火を見るのがおすすめらしい。
 すでに会場は人だかりで、湖に近づきすぎないよう設けられた柵の周辺は満員だ。花火が上がり始めれば、もっと人は増えるだろう。

「すごい人だね」
「そうだな……こっちだ」

 サスケくんに手を引かれて、人の少ない方へ連れていかれる。木々の繁る林の近くにはまだ人が少ない。でもいずれこのあたりも人だかりができるだろう。
 お祭りからどんどん離れて、喧騒が遠ざかっていく。湖を回り込むように林の中を進んでいくと、徐々に足場もでこぼこしだして、明かりもなく暗い場所まで来てしまった。

「こ、こんなところまで来てもいいの?」
「ああ。調べたところ、いい穴場らしい」
「“穴場”……」

 その言い回しには覚えがあった。サスケくんは、初めてのデートで行った、カップルシートしかない隠れ映画館のことを指してそう言っていた。そこはただの映画館ではなく、『いかがわしいこと』をしても怒られない、特殊な施設だった。

「(どこでそんなこと調べてるんだろ……)」

 サスケ君の持つ謎の情報網を恐ろしく思いながらも、そこへ連れてこられること自体はそれほど嫌だと感じていないあたり、私も私である。
 虫除けスプレーはしてきたけれど、ここまで草木の繁る場所でさえ効くのかどうかは分からない。それは製薬会社さんの企業努力を信じるしかないとして、サスケ君のことはどこまで信じていいのか。本当に大丈夫だろうか。

「この木の根、座れそうだな」
「そっちの岩のほうがきれいじゃない?」
「おお、そうだな」

 なんだかんだ順応している自分、すごい。
 岩に腰かけたサスケくんに続いて座ろうか、と思ったけれど、下着を身につけていないことを思い出す。大丈夫だとは思うけど、座ると滲んでいるものが襦袢に染みてしまうのではないかという危惧が過って、座るのを躊躇ってしまう。

「? どうした」
「あ、あの……パンツ、そろそろ返してくれる……?」
「…………そういやそんなことさせてたな」
「えええーっ!?」

 忘れてたのー!?
 私が声を上げると、少し離れた場所から土を踏む音がした。暗くて全然見えないけれど、他にも誰か居るらしい。
 遠ざかっていく足音は複数あって、たぶんあちらもカップルなんだろう。本当に『穴場』なんだな……と呆れるような感心するような心地で、サスケ君に向き直る。

「前と違って屋外だからな。何も知らない一般人に見付かると面倒だ、なるべく静かにしろ」
「はい……」

 そういうスリルはよくないってば……。

 すると、ヒューという音がして、直後にパッと明るくなった。湖に花火が映り、ほんの一瞬遅れてドォンと音が響いた。

「わ、始まった」
「すげーな」

 会場よりも打ち上げ場所に近いから、より迫力のある景色。空に上がった花火は木々の葉に隠れて半分も見えないけれど、湖の静かな水面には綺麗に反射してよく見える。おすすめの見方なだけはあるなぁ。

「きれー……」
「……」

 赤や黄色や緑の花火に、キラキラと輝く湖。大きな光がパッと花開く度に、その美しさに心踊る。芸術的な造形美が次々と打ち上がり、遠くの会場から歓声が聞こえてくる。

「すごいね、大迫力」
「フッ」

 腰掛けにしていた岩から立ち、サスケくんが距離を詰める。私が手に持っていた巾着を預かられ、岩の上に安置される。そんなことをされるということは?

「(もしや……)」
「パンツを返してほしいんじゃなかったか?」
「あ、……そうだった」

 花火が始まったことに気を取られて、頭から抜けてしまっていた。パンツがないことはそんなにどうでもいいことではないはずだけど、一応これを見るために来たのだから仕方ない。
 でもサスケ君は案の定というか、花火がメイン目的ではない様子。浴衣の上から、お尻の形を確かめるように手を滑らされる。

「っ、」
「ん? 敏感だな」
「い、いつも通りだよ……」
「ああ、そうだな。“いつも通り”敏感だな」

 誰のせいだと思ってるんですか。サスケくんが喉で笑う声を聞きながら、ざわざわとくすぐったいようなそうでないような感覚のするお尻を、もじもじと動かす。少なくとも二年前の未経験だった頃よりは、ずっと敏感になっていると思う。

「ほんといい尻だな、お前は」
「んん……好きだねお尻……」
「ああ」

 お前のは特に。そう囁きながら、太腿の付け根から臀部へと指を這わせる。熟知されている性感帯をなぞるように擦られれば、ビクッとして体を縮こませてしまう。

「うう、(パンツ穿いてないのに……人が居るのに……)」
「……感じてるのか、こんなところで」
「、……」

 堪えるようにクツクツと笑うサスケくんの声が耳をくすぐる。恥ずかしくて、だけど否定することのできない事実に、股の奥がじんとしてしまう。

「お前は、こういうことをする才能があるよな」
「な、なにそれ……」
「電車の中で俺に触られるのも好きだろう?」

 ここへ来るまでの電車では、サスケくんは私に『スキンシップ』をすることはなかった。されるかな、されるだろうな、しないの? されたい……などと思っていたことが透けて見えていたのだとしたら、相当恥ずかしいことだ。そしてそうでなくても、前回のデートでは行きの電車内で弄られて……。今さら言い訳のしようもない。変態嗜好の淫乱なのだ、私は。

「うん……好き」
「クク、正直でいい子だな……」

 抱き寄せられて、耳元へ唇を寄せられる。ドキドキと高鳴る胸の音は、花火の音に掻き消されてしまう。いやむしろ、花火の音が鼓動にまざって、余計に高鳴る気さえした。
 浴衣の裾がめくられる。襦袢が見えて、それも順にめくって横へ避けられる。

「自分で持ってろ」

 言われて、その通りに従う。自らの陰部を晒すように裾を持ち、そのまま無防備に立つ。暗くて見えにくい、とはいえ花火の光でチカチカと明るくなるので、視認はできる。
 恥ずかしさに顔が熱い。サスケくんは私の前に立ち、そのいやらしい格好を舐めるように見回す。ニヤつく顔を隠そうともせず、興奮した面持ちで私の首に手を伸ばした。

「、」
「よく似合ってるぜ。とてもよく、な……」

 チョーカーをなぞるように指を滑らせ、私をぞわぞわと感じさせる。涙型のチャームが揺れて、金具が小さな音を立てた。ああ、これは『首輪』で、それをした私は、

「サスケ、く……」
「どうした? 触ってほしいか」

 じんじんと熱い陰部。本来身につけているべきパンツもなく、夏の夜の空気に触れて、そこが濡れていることも分かる。私の喉を撫でるサスケくんを見上げて、恥ずかしさに潤んだ目を伏せながら、小さく頷いた。

「ん、」

 唇にやわらかいものが触れて、次いで生暖かいものが割り開けて侵入してくる。サスケくんの舌は唾液にまみれて、私の舌にねっとりと絡みつく。高い所から低い位置へ、重力に従うようにサスケくんの唾液は私の口の中へとろとろと注がれ、やがて喉を下っていく。そのぬるい液体は味でもにおいでも、まるで媚薬のように私を興奮させる。

「随分うまそうに飲むじゃねえか」
「はぅ、……うん……」

 実際のところは決して美味しいものではない。だけど『飲めてしまう』という時点で、相当特別なことだ。
 サスケくんは私が開帳したままにしている裾の内に左手を伸ばし、脚に指先で触れる。腿の外側を撫で上げながら、右手で私の顎を逸らさせて、首筋に顔を近付けた。

「っ、」

 チョーカーをなぞるように舌で舐められる。うなじから鎖骨へゆっくりと下がり、軽く歯を立てる。コリ、と皮膚の薄いところを刺激されて、ビクリと体を震わせてしまう。
 お尻に到達した左手は臀部を揉みしだく。感触を楽しんだら前へ移動して、躊躇いなく私の陰部に触れた。

「はは、びしょびしょだな」
「ぅ、」

 サスケくんの想定よりも濡れていたらしいそこを広げ、一本の指で愛液を伸ばすようにして遊ぶ。ピチャピチャと水の音がして、私の羞恥心を煽る。

「聞こえるか? いやらしい奴だな、お前は」

 辱しめるように囁いて、耳元で笑う。濡れた指先を私の鼻先に差し出してにおいを嗅がせ、かと思うとサスケくんは自分でその指を咥えて舐めた。

「ぁ、」
「こんな淫猥なにおいのする露は、ちゃんと舐めて綺麗にしないとな」

 言いながらしゃがんで、私の股の間へ顔を近付ける。つい一歩下がるけど、すぐ後ろに木があってそれ以上は下がれない。サスケくんはそれを喉で笑って、再度距離を詰めた。

「んっ、や、……!」

 体ごと割って入るようにして両足を広げさせられ、さらに両手で陰唇をめくって膣口をあらわにされる。どろどろに汚れたそこにサスケくんの舌が這い回って、愛液を舐め取られていく。

「はぁ、いやらしいな……溢れてくるぜ」
「あっ、やだ、言わないで……!」

 サスケくんに辱しめられるたび、ナカがじんじん熱くなって、どんどん蜜が溢れてしまう。気持ちよさに声が漏れてしまうのを、片手で押さえたいけれど、サスケくんの命令で裾を広げ持ったままではそれもできない。サスケくんの舌がクリトリスを掠めるたびに、腰をビクつかせながらも声を上げないように堪える。

「こんなとこで、びしょびしょのまんこ(、、、)を舐められて気持ちよがってるなんて、どう考えても変態だな」
「んんっ、ん、」

 半ば木に凭れかかるようにして、くずおれないように立っている。側の湖には上がり続ける花火が映っていて、花火の破裂音はサスケくんの声を一部掻き消した。遠くから花火を楽しむ人たちの声がして、近くではリィリィと虫の鳴き声がしている。反論の余地もないサスケくんの言葉には、最後の抵抗として肯定を返さない。
 快感と羞恥に涙の滲んだ視界では、サスケくんの顔はよく見えない。だけど陰部に掛かる呼気は熱く速く、サスケくんもかなり興奮していることが感じ取れた。だから私の息も同じように上がってしまって、熱で頭もぼんやりしてきた。
 じゅるる、と液体を吸う音がして、サスケくんの舌が一瞬退く。愛液を飲み下したんだろう。そんなところから出た体液を『飲む』なんて、ダメなのに、うれしい。

「ふっ、ぅ……っ!」
「クク……そろそろいいか」

 私の股から顔を離して、私の襦袢の裾で口元を拭いた。(ひどい) 立ち上がりながら帯に提げた巾着を開き、中から何かを取り出す。正方形で薄く、ビニールのような音……たぶんゴムかな。サスケくんはちゃんとゴムを持ってきててえらいなー。

「(……財布にも入れてあるって言ってたっけ)」
「後ろ向いて、裾捲り上げて待ってろ」
「はい……」

 言われた通り、背後にあった木のほうへ向いて、浴衣の裾を……お尻を丸出しにするように…………

「ぅー……」
「今さら恥ずかしがるのか? ククク」
「だ、だって……」

 横に避けるだけならまだ、すぐに戻せるし言い訳もきく(ような気がする)。だけど完全にお尻をさらけ出すように裾を捲り上げるとなると、簡単には戻せないし、見られたら終わりだ。そう遠くないところに人が居ることは分かっているので、暗闇とはいえ躊躇いは生まれる。
 サスケくんは後ろから私のお腹へ右手を回し、左手を裾の中へ入れた。硬く猛ったモノを浴衣越しに私のお尻へ擦り付けながら、クリトリスを弄る。

「っ、あ、」
「入れてほしくないのかよ?」
「ひぅ、っ……んっ!」

 ビリビリと甘い刺激が走って、腰はビクビクと震え、ナカもひくひくとうずく。それに反応するようにサスケくんのおちんちんもピクピクと脈動して、私に興奮を伝える。それがナカへ入ってきたら、と思うともっとゾクゾクして、腰が砕けそうなほどの快感に襲われる。

「あぅぅ……ッ!」
「ほら、正直に言ってみろ。入れてほしいんだろ」
「っ、ほし、い……!」

 情けないほど震えた声で言えば、サスケくんは嬉しそうにクツクツと笑った。

「かわいいじゃねえか」
「ぁ、」

 クリトリスから手を引いて、その手で浴衣の裾をぐいと捲り上げた。晒されたお尻に夜の空気が触れて、濡れた陰部が冷たい。裾を纏めて「持ってろ」と言われたので、左腕で抱えるように持つ。サスケくんは自分の浴衣も捲って、さっきゴムを着けた陰茎を私の膣口へ添えた。
 花火がドンドンと激しく上がっている。目玉の連続打ち上げなのか、遠くの歓声が一際沸き立つ。

「向こうも盛り上がってるみたいだな」

 湖に映る花火を見るような余裕はなく、視界の端でとりどりの色の光がチカチカしている、程度の認識しかない。私の意識の九割は、私の陰部で愛液を塗りつけるように擦り当てられる硬いモノに向いていて、残りの一割は持っている裾を落とさないようにすることだ。
 私がろくに返事もしないから、サスケくんはまた喉で笑って、それから押し込むように腰をこちらへ動かした。

「んぅッ、!」
「フ、お待ちかねのモノだぜ」

 ぐじゅ、と侵入してきた陰茎は、入れたことを喜ぶようにまた脈動する。慣らすように浅いところで前後し始めて、時々わざと抜いては、挿入を繰り返す。

「んッ、……あぁ……ッ」
「お前は入れられる瞬間が好きだな」

 サスケくんの言う通り、入ってくる度にビクリと腰が跳ねてしまう。繋がれたことを悦んでいるのか、単にそこが性感帯なのかは判別がつかないけど、気持ちいいのに違いはない。
 次第に奥へと進んでくるサスケくん。さらけ出した私の腰を手で押さえて、大きな音を出さないようにじっくりと攻められる。そうして与えられる甘やかな快感に、自力で真っ直ぐ立っていられなくなってきたから、空いた右手を正面の木に当てて体を支えるようにする。

「ぁあ……ッ、ンン……!」
「あまり大声を出すなよ。誰かに聞かれちゃ困る」
「はゥ……っ、わか、てるけど……ッあン!」

 ぐるり、掻き回すように動かされて、喘ぎ声をあげてしまう。サスケくんは言ってることとやってることが矛盾していて、わざと私が声を出してしまいそうなことをする。必死で堪えるけれど全部は抑えられなくて、漏れ出る声が暗闇に響く。
 近くはないけど遠くもないところから、私たちとは別の声が聞こえる。あちらも抑えたような喘ぎ声で、私の声も同じようにして向こうに聞こえているかも、と思うと、ギュッとナカに力が入った。

「ん、あんま締め付けるなよ」
「だっ、てェ……!」

 恥ずかしくて、だけどやめてほしくなくて、頭もカラダも熱くて、くらくらしてきた。もっとぐちゃぐちゃに乱してほしいのに、ここじゃそんなお願いもできない。我慢と我慢で余計にうずいて、うう、と唸り声を漏らすことしかできない。

「見ろよ、花火が綺麗だぜ」
「んんゥ……ッ」

 言われて、すでに雑音でしかなかった花火へ視線を向ける。菊だか牡丹だか分からないけど、火花を丸く散らす花火が水面に映る。

「花火を見ながらのセックスってのも、ロマンチックで悪くないだろう?」
「ふッ、んんッ、……んゥッ」

 ズンズンと奥を突かれて、襲い来る快感に声を堪えるのに必死で、目に映る景色に感動を抱く余裕はない。揺さぶられるのに合わせて腰をくねらせ、快感から逃れるように、または快感を貪るようにして、サスケくんの喜悦を誘う。

「クク、やらしいなァ、紫静」
「ヒグッ、ンゥ……! ンンあッ!」

 一層激しく、パンパンと音が響くのも構わずに腰をぶつけられる。思わず声を上げてしまったから、俯いて唇を噛んで辛抱する。迫る絶頂に思考が白んでくる。

「ッ、ふグ、ンッ!」
「イキそうなんだろう、なあ?」
「ンンッ、……ッッ!」

 サスケくんの問いに、言葉で返せないのでガクガクと頷く。すると木に突いた右手に何かが触れて、顔を上げればサスケくんの手が重ねられていた。

「あ……ッ!」
「かわいいな、紫静。イかせてやるよ」
「アッ! アンんッ!」

 気持ちいいところを的確に突かれて、ゾクゾクと快感が走る。堪えきれないで弾け出た声に、サスケくんは笑う。ああ、もう、ダメ、

「イッ、く……ッ、イクゥ……ッ!」

 ナカのじんじんする感覚が高まって高まって、目眩に近い感覚を覚える。涙が滲んでもやがかった視界では、花火の光が乱反射して、眩しくてなにも見えない。与えられる快感に身を委ねて、これ以上ないほどの気持ちよさに、頭が真っ白になる。そうして快楽の頂点に達して、ビクンビクンと腰が跳ねる。膝の力が抜けてくずおれかけるのを、サスケくんの左手が支える。

「はァっ、お前のイクとこ、何回見ても飽きねえな」
「あァァぅ……、」

 ナカで、大きくなったおちんちんがビクビク跳ねている。それですら気持ちよくて、イッたばかりのナカがひくひくしてしまう。
 味わうように、いっぱいまで入れたおちんちんを、ぐりぐりと押し付けられる。奥まで入った先っぽが子宮口へコリコリと当たって、サスケくんはそれが気持ちいいらしい。
 重ねていた右手をするりと滑らせて、顎をなぞり、首筋へやる。そこを掴んで上体を反らさせられ、うなじに掛かる髪を除けられたと思うと、サスケくんの熱い息が首筋に掛かった。

「紫静……」

 とろけそうなほど熱のこもった声で名前を呼ばれて、噛み付かれる。痛くはない。だけど気持ちよくて、また腰がビクビクと震えて、いやらしい声をこぼしてしまう。サスケくんは自分が贈ったチョーカーを着けた私の首を、しきりに甘噛みしながら、奥を擦る。こんなことをされたら、うれしくて、イッたはずの膣がうずいてしまう。

「あッ、サスケく……!」
「はァッ、ハッ、」
「! ッイァ……ッ!」

 不意に強く噛まれて、痛みにギュッと目を閉じる。滲んでいた涙がこぼれ落ちて、頬を伝い首筋に垂れ、噛み付いているサスケくんのところへ流れた。

「ああ……ッ、紫静……ッ!」
「っ、んん……!」

 ナカにあるモノが大きく跳ねて、サスケくんは腰をビクつかせながら呻く。激しく息を乱して、うなじに噛み付いていた歯を離した。
 ああ、サスケくんがイッてる。私とエッチして気持ちよくなって。うれしい。うれしい……。

「はぁ、はぁ、」
「はー、……はー……」

 サスケくんはすぐには出て行かずに、射精が終わるのを待つように入れたままにしている。その間にまたうなじに噛み付いて、今度は強く吸い付かれる。キスマーク。位置を変えていくつも付けられていくのを、大人しくされるままに受ける。そんなことをしなくても、私はとっくにサスケくんのものなのに。

「紫静、」
「ぅ、」

 少し無理に首を後ろに回され、キスされる。そんなに体が柔らかくないので、入れたままではちょっとキツい。それでもなんとか舌を絡め返して、事後の余韻に浸る。
 キスを終えると、ナカからずるずるとサスケくんが出ていった。息を整えながら振り向くと、サスケくんはゴムを外してそれを地面に放り捨てていた。べしょっと落ちた、白濁液が先に溜まった、しわしわのゴム。暗い中を凝らしてよく見ると、ゴムが入っていた正方形のビニール袋も同じく打ち捨てられている。いかにもここで青姦しました、という証拠をわざと残すようで、まだ鎮まりきらない膣がむずむずとうずく。

「サスケくん……ポイ捨ては良くないよ」
「フ、いいだろ。誰かに見付かったら、俺たちがここでセックスしたことも分かるわけだ。興奮しないか?」
「……そんなこと……」

 私は嘘が下手なので、言い淀んでしまってすぐにバレる。サスケくんはそれを喉で笑いながら浴衣を整えている。

「あ……」
「? なんだ」

 そういえば、浴衣がぐしゃぐしゃだ。裾は伸びてしまったし、合わせも歪んでいる。私は着付けも自分ではできないし、乱れた浴衣の直し方もよく知らない。こうなることは分かっていたのだから、きちんと予習しておくべきだった……。(いやそれだと喜んで襲われに行くみたいじゃない……?)

「なかなかいい眺めだな」
「! う、あんまり見ないで……恥ずかしいから」
「仕方ねーな」
「?」

 サスケくんは正面に立って、私の浴衣に手を伸ばした。

「っと、その前に」

 帯に提げた巾着を探って、小さな布を差し出される。それを見て私も、あっ、と思い出した。

「(パンツ取り上げられてたの、忘れてた……)」
「先に穿いとけ」
「はい……」

 パンツを受け取り、少しだけ体を横に向ける。片足ずつ下駄を外して、爪先を通し、お尻を隠す。うう、ティッシュとかゴミ袋とか、用意しておくんだったな。濡れたままでちょっと気持ち悪い。
 穿き終わると、またサスケくんに向き直る。たぶん、着崩れした浴衣を直してくれるのだろう。男物と女物では多少着方は違うらしいのだけど、直し方は大差ないんだろうか。

「ここと……、こっちと……、それからこう、だ」
「わ、わ、」

 脇の下にある小さな穴から手を差し込んだり、おはしょりに隠れた帯紐の下を通すように裾を持ち上げたり、おはしょりを整えたり。

「いっそ始めから着付け直したほうが綺麗になるだろうが、もう帰るだけだから構わんだろ」
「う、うん……ありがと」

 花火はまだ上がり続けているけど、サスケくんの目的は果たしたので帰るらしい。確かに屋台も十分楽しんだし、なによりも疲れたので、帰ることには反対しない。
 岩の上に置いていた自分の巾着を取ると、早くしろとばかりに左手を掴まれた。こんな暗い場所ではぐれるなんて洒落にならないので、『迷子防止』はただの言い訳でもないなと思う。
 まだ微かに聞こえる、別のカップルの物音。お互いに干渉しないよう、林の中をなるべく静かに通り抜ける。私たちがしていた音も、こんな風に聞こえていたのだろうか。思い出して顔が熱くなったのをサスケくんに気付かれないように、なるべく後ろを歩くようにした。



 親にも友達にも、「お祭りデートどうだった?」と聞かれたけど、「タノシカッタヨ……」とぎこちない返事しかできなかった。『アレ』をしっかり堪能(、、)してしまった事実は曲げられない。
 よくないことをしていると思うほどに気持ちよくなってしまうのは、サスケくんの思う壺? それとも私が勝手にそうなっているんだろうか。何にせよお似合いの変態カップルだわね……たはは。



(181108)
紅さんのリクエスト


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