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海行くで! 1/11


 夏休み一週間目にして計画通りに課題が進んでいないので、うんうん言いながらプリントと向き合っていると、携帯電話がヴィンヴィン震え出した。メールか通知の類かと思って三秒放っておいた、けれど振動が止まる気配がなく、そこでやっと電話が掛かってきていることに気付く。はっとして慌ててそれを手に取ると、画面には『サスケ君』の文字と、コール中の表示。急いで受話ボタンを押して、耳に当てる。

「はいもしも」
『もっとすぐ出ろ』
「すみません……」

 勉強に集中するためにマナーモードにしていたのだけど、それを説明したところで意味はないだろう。そこまで怒られるほどのことではないと感じていながらも、相手の神経を逆撫でしないようにとりあえず謝るようにしているのが、なんだか上司に逆らえない部下のようで、こんなところで処世術を学びたくないなと思う。

『まあいい。お前、盆前の週末、暇か?』
「え? うん、特に予定は入ってないけど……どうかしたの?」
『兄貴が、事務所所有のプライベートビーチに行かせてくれるってよ』
「じっ! プラッ!?」

 待って待って待って。ウェイ(ト)ウェイ(ト)。
 サスケくんのお兄さんといえば、今やハリウッド映画出演の噂すらある、超やり手俳優の『八多カラス』さんだ。そんなスゴい人が所属している事務所の、プライベートビーチ。おそらく撮影なんかに使われる場所なんだろうけど、そこへ私をご招待? 今度の週末に? ウェイウェイ。待って。

「な、なんでまた……?」
『高校最後の夏休みだろ、単なる息抜きだ』
「はえぇ……そんなことで……」

 聞くに、別段特別な招待とかではなく、撮影のない時間帯や日取りであれば、事務所関係者の家族は自由に使わせてもらえるものらしい。嘘かと思うほど太っ腹だ。
 しかし恐縮であることに変わりなく、そしてどんな格好で出向けばいいのか、思考が追い付かなくて真っ白だ。

『関係者用の宿泊施設もあるから、宿の心配もないぜ』
「おっ、お泊まり!?」
『日帰りじゃもったいないだろ』

 これは、手土産、良い手土産を用意しないとダメなやつだ! おか、おかーさーん!

『俺の家から車で行くから、一泊分の荷物用意して来いよ』
「ひゃ、ひゃいっ! がんばりますっ!」
『は?』

 やることが、山積みだ。遅れている課題を遊びに行く分だけ巻きで終わらせないといけないし、外出用の服とか、日焼け止めとか、色々用意しないといけないし、水着は、水着は学校のでいいんだろうか? でも芸能事務所のプライベートビーチでスクール水着はおのぼり丸出しで恥ずかしいのでは? おか、おかーさーん! たすけて!
 これは大変なことになったと、電話が切れるや否や勉強机から飛び出した。おかーさーん! お小遣いください!




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