情なんて
「アクアちゃんがんばっちゃうよーっ♪」
あ ざ と い
「アクアちゃん」の私なりの評価です、本来はあまり良い意味で使われる単語ではありませんが、今回は一応誉め言葉として使っています。
追い討ちをかけるように彼女からは聴こえる筈の無いロリーンという効果音が聴こえた気がしました。
「なんぢゃ、あのブリブリは!!?アレが戦うのか!!?」
戦うのでしょうねぇ。
わーい。わーいと楽しそうに試合位置に進むアクアを一見し、ナナシさんが口を開きます。
「メルで残ってるのは……自分ら3人だけか。」
ギンタ君はギロムと因縁がありますし(と言うかギロムの一方通行)、ナナシさんは前科がありますし…そうですね、
「ここは私が出ま「あのコの相手はまかせてな!!」
ナナシさんが人の声に被せるように(わざとですか?)声を上げます、勝ち誇ったように発言してましたが正直、意味がわかりません。
「来たァーっ!!」
「言うと思った!」
「スケベ。」
「ロリコン。」
上からジャック君、アルヴィス君、ドロシーさん、腹いせに私。
「スケベとロリコンは納得いかん!!」
だって今までの相手がロコちゃんですし今回のあの子だってスノウ姫より年下に見えない事も無いのですが。
一字一句そのまま感じた事を伝えると。
「自分はカワイイ女のコが好きなだけや!!」
と、お決まりの台詞を返されたので
ラプンツェルのドリル何センチ位でしょうか、30センチはありますよね?あれで地面掘れない物でしょうかと本人が聞いていたら再び激怒しそうな失礼な事を考えつつ「フェミニストの鏡ですね。」と投げやりに会話を終わらせました。
一方ギンタ君の方はと言うとギロムが戦いたがっているそうなので構わないとのこと。
ここに来てからギンタ君の事ガン見してましたしね、ギロム。勿論今も。
「でもナナシ、2NDバトルでロコって女の子に負けたんでしょ?大丈夫かなあ〜っ。」
「そーゆー事言わんでええの!!女のコ相手にはな…それなりの戦い方があるんやで。」
39
「お先にどーぞ。レディーファーストや!」
試合開始時の第一声です、前と変わらず腕を組んで仁王立ち、そしてこの台詞。まるで成長していません。
ドロシーさんも頭を押さえて唸っています。
「あの馬鹿………!!前回負けた事全っ然こりてない!!」
「もっと言ってやってください!!馬鹿って!!」
馬鹿は死ななきゃ治らないって言いますけど、まさかそんな…ねえ?いや、でも…うーん…
それはともかくとしてアクアの方はと言うと。
「まあ!何て優しい人なんでしょ!!ありがとうございますぅ。それでは……甘えちゃおっかな〜ガーディアンARM!!!でてきて『アッコちゃん』!!!」
アクアが胸元から取り出したのはガーディアンARM『アッコちゃん』
発動し出てきたのは巨大なアコヤ貝(多分)のガーディアン。着地した勢いで氷が陥没しました。全体像が見えない顔が二枚貝の隙間から覗いていて唸り声を上げながらガチガチと音を鳴らしているのでなんというかすごく…怖いです。
アクアは引き殺すつもりなのか変わらぬ笑顔で「GO♪」と腕を突きつけながら『アッコちゃん』をナナシさんへと突進させました。
可愛い顔してやることがエグい。
余裕かましていたナナシさんは驚愕しつつもウェポンARM「グリフィンランス」を発動、あんなもの持ってたんですね。
飛躍して、上空から重力に任せ『アッコちゃん』を貫こうとするも傷一つ負わせる事が出来ず、動くアッコちゃんの勢いに振り落とされ、そのまま潰されまいと一旦身を引く。すると待っていましたと言わんばかりにアッコちゃんの謎に包まれていた貝の中身が露出され、中から大量の真珠が放出、ナナシさんを狙い打ちします。
「アッコちゃんは最高の防御力をもってるの♪必殺技『ぺルルアタック』の味はどうですか?カッコイイお兄さん。」
そんな訳でぺルルアタックの集中砲火を受けたナナシさんですが、煙が晴れると傷一つ負うこと無く、その場に立っていました。
「残念やったのォ。一発も当たらへんかったわ。」
「あら。まあ。」
アッコちゃんでナナシさんを倒すことを失敗したアクアは、ふむぅ、と俯き作戦を変更する事に、「アッコちゃん」を戻し、
やっ、と発動したのはスケート靴らしきもの。
「ウェポンARMか!?」
「そうは見えないけど……よくわからない敵ねぇ。」
スケート靴を氷上で出したら行うことは只一つ、アクアは「せーの」でナナシさんの周りを円を描くように何度も周回します「すぃーっ」と声に出しながら。あざとい。
釣られてナナシさん、ギンタ君、ジャック君もスイスイ言い出します、何楽しんでるんですか。戦争を(ry
彼女の目的がわかりませ…あ…
「わかりました。あれナナシさんの目を回そうとしてるんですよ。」
「回るか?いくらナナシがアホでも流石にそれは…」
ギンタ君とジャック君は隣で未だにスイスイ言ってるのでアルヴィス君とドロシーさんに話しかけるように言ってみると、返って来たのはそんな答え。ドロシーさんはと言うと顔をひきつらせながら
「あいつ馬鹿だからあり得るかも…」
と馬鹿をやたら強調して同意。3人で顔を見合わせドロシーさんに釣られるよう顔を歪ませると、遠くからナナシさんの「んな訳あるかい!!!」との突っ込みが。よく聴こえましたね、地獄耳め。
さて、そんな予想も意味があったのか無いのかある程度滑って気が済んだアクアは滑走をやめ、頭の巻き貝を外しました。
「行きますよォーっ。ナナシさん!」
息を吸い込み、そのまま巻き貝の先端部分に息を吹き込むと、合戦開始の合図のような音が辺りに響く。
直ぐに氷の下に現れる黒い影…どう見ても魚の類いです本当に(ry
現れた巨大な魚は頭上の氷を突き破り、油断をしていたナナシさんを一口で平らげると、再び氷下へ。隣ではギンタ君がナナシさんの名前を叫んでいました。
「ネイチャーARM『スピカラ』です。これでアクアは海のお友達を呼べるんですよ!」
先程のアクアの行動はその海のお友達を呼ぶためのマーキングだったんですね、成る程。
少しするとナナシさんを食した氷の下の魚影から血が流れ出て来ました、一応ルべリアのボスをやっているナナシさんがおとなしく噛み砕かれていると言うのもおかしな話なので大丈夫だとは思ってます。
それでも血液がどちらの物なのかは判断が着きかねますが。
耐えかねたギンタ君がもう一度ナナシさんの名前を叫ぶと、海から魚が再び飛び出ます。
その頭から何かの刃先が顔を覗かせ、それはそのまま亀裂を広げ中から無傷でナナシさんが出てきました。
「ギンタ、呼んだ?」
「海のお友達」を斬殺したナナシさんの持つ「グリフィンランス」、は斬れ味バツグンなのだとか。アッコちゃんでは失敗しましたが。
ナナシさんが無事に生還した事にアクアは震えだし首を斬られるのは嫌だと再び『アッコちゃん』を発動、そのままその中に入り込みます。これで敗けに(バトル)負けを(ジャンケン)重ねたら首飛ばされちゃいますもんね、そりゃ必死にもなります。ナナシさんが潮時だと呟くと、「アッコちゃん」が回転を開始しました。
「上等や。」
もの凄い勢いで回転しながら突っ込んでくる『アッコちゃん』ことアクアを目前にナナシさんは魔力を練り始め、あと数メートルと言うところでエレクトリックアイを発動。雷が直撃すると『アッコちゃん』は回転速度を徐々に落とします。動きが完全に停止すると、中からアクアが目を回しながら出て来てしばらくふらついた後、ついに倒れました。
「勝者!!!ナナ……」
そんな訳でポズンがナナシさんの勝利を疑いもせず宣言しようとしたのですが
「ちょっと待ちいーっ!!!」
と当の本人から横槍が入ります、目を向けるとバテましたと言わんばかりに仰向けに四肢を放り投げるナナシさんの姿が。
「自分ももーバテバテや。つー事は…両者ドローでええやろ?」
「あ、あなたさっきまでピンピン……」
「バテバテや文句あるか!?」
「ナ……ナナシさん…」
アクアを庇う故の行動なのでしょう、ナナシさんの要求に若干呆れながらもポズンは折れ、最終的に両者ドローと言う結果に落ち着きました。ポズン、あなたチェス側の人間(?)なんですからもっと喜んだらいいじゃないですか。
まあ、勝ち越していますし別にいいんですけど。
ところで、ちょっと引っ掛かる事があるんですよね。
殺しに快感を得ているあの姉弟が果たしてお情けでドローに持ち込まれたアクアの帰還を素直に喜ぶでしょうか?
ナナシさんが身を張ってまで助けようとした彼女の安否。
杞憂に終われば良いのですけどね。
「やるじゃねーかよナナシーっ!!!オレ見直した!!」
「意外と紳士ではないか!」
戻って来て早々ナナシさんに賞賛の言葉を贈るギンタ君とバッボ。ナナシさんは
「いやーんもっと言ってえーっ。」
と、妙な動きで喜びます。
「こいつが…女のコとやるナナシ流『それなりの戦い方』ですわ。アルちゃんも勉強せなアカンよ!」
「なぜオレに言う?」
ナナシさんとアルヴィス君の女性の扱い談義の隣、アクアのその後を私は見ていた。
唯一ドローに持ち込んだ彼女の帰還にやはりと言うかチェス側は明らかに、歓迎ムードとは言えない雰囲気。
「ちょっと待ってよ……なんか様子がおかしいっスよ…!!」
ジャック君の一言で、全員がチェス側の動行に目を向けた
⇔「どうして……なんでジャンケンなんですか!?アクア……ドローでしたよ!?」
「敵に情けをかけてもらって恥ずかしくないのかいぃーっ!?お前は負けたんだよ豚ぁあ!!!だから制裁なんだよォォアクアーっ!!!」
「……わかりました。ジャンケンに勝てば首斬りは無しですもんね?」
「ああ。そうともそうとも。ジャ〜ンケ〜ン……ホイ!!!」
「勝った…っ…」
首切りから免れた事にほっとしたのも束の間、氷柱がアクアを貫いた。
「オレが…グーだ。」
ギロムの、姉そっくりな笑い声が響く中、アクアは最後まで笑顔を絶やさずにナナシさんの名前を口にし息絶えた。