ケチャップの作り方(想定)
ギンタ君といいアルヴィス君といい、こんな雨ごときじゃ髪型崩れませんね。
とかどうでも良い事を考えつつ崖の下のギンタ君を一目入れ、すぐに目を反らす。

「キミは…あまり悲しまないんだな」

メルヘヴンに来て初めての雨の中、唐突にアルヴィス君が背後からそんな事を言い出す。トムさんの事だと理解するのにそう時間はかかりませんでした。

「あなたは私が今死んだら悲しみますか?」

「何を言って…」

「疑っていたんですよ、私はその人の事」

あなたが今なお私を疑っているように
……無理無いとは思ってますが。

「…ですがね、アルヴィス君。
その時は逃げる事に必死で気にもとめていませんでしたが、私は彼が亡くなる少し前に友達になってくれと言われたんです。
初めてだったんです、そんな事を言われたのは。」

特に何かを言ってくる気配は無いので一息ついて続けた。

「ギンタ君程では無いにしろ…多分それで少しは情が生まれたんだと思います。ちょっとは嬉しいなって思えたんだと思います。
だから少しだけ悲しいとも思っているのでしょうね。」

雨のせいで泣いてもいないのに目から水滴が滴ります。勘違いされたら嫌ですね、と考えながらアルヴィス君に向き直り、話を続けた。

「まあ、もういいです。過ぎた話ですから。
ところで明日、誰があのナイトクラスを相手にしますか?」


23


3rdバトル当日です、先日長いこと雨の中にいたにも関わらず、ギンタ君もアルヴィス君も私も風邪をひくことなく済みました、健康って素晴らしい。

今日の選出メンバーは2ndバトルに出なかったギンタ君、アルヴィス君、ジャック君、昨日に続きスノウ姫、私。
出場枠は6人なのであと一人足りません、レギンレイヴ城の兵士の方達もナナシさんかドロシーさんは出ないのかと疑問を口にしています。

「ワタシ今日その気じゃないのよねー」

いつも通り語尾にハートマークを付けぶりっ子モードのドロシーさんと

「自分はこのコとイチャイチャする日や!」

女性一人に肩を回すナナシさん、女性の方は満更でもなさそう。
いや、昨日のロコちゃん戦で全神経がボロボロ状態なので休んだ方がいいとは思いましたが、なんでしょうか。

「なんかイラッとしますね」

嫉妬とか可愛い感情じゃ無いですよ?こっちが一応生死をかけたバトルをしている中、遠回しの遊ぶ発言に苛立ちを覚えると言うかなんと言うか。

「同感っス」

うんうんと首を縦に振り同意するジャック君。彼の感情はおそらく少しの嫉妬と羨ましさでしょうか。

話を戻しましょう、6人目の話です。

「心配ないよっ。ちゃんともう一人いるんだから!!出ておいで6人目!!!」

ベルちゃんがオホンと咳き込む真似をし、腕を降り下ろしビシッととある一点に指差します。

「おはよう諸君。」

はい、集中線をバックにひっさびさにおっさんの登場です、腰に手を当て葉巻を咥えてます、相も変わらずおっさんです。

この予想外の登場にポズン、ガイラさん、その他大勢が驚いてます。
「前回のウォーゲームでダンナの右腕だった男」だの「生きていたのか」だの「すげえ」だの「メルにこんな隠し玉がいたなんて」だのの声が聞こえます。勝手に殺すな。

「起きるのおせーんだよおっさん!!」

「フンっ。文句があるなら寝るのがおせえ犬にいうんだな!!」

かつての同志との思わぬ再会にガイラさんがおっさんに話しかけ、会話に発展、謝罪。テストに失格して参加出来ないとか。

「そう。そしてあなたも参加できません。」

飛び入り参加はやはり不可能なのかおっさん復活の大声援の中、ポズンによって水を差される。

「テストを受けていないのですから。いかに前回の実力者とは言え認める訳には…」

おっさんにガンを飛ばされポズンが冷や汗かきながら「お前の参加枠ねーから!」(要約)と言います。そんなポズンを無視し、おっさんはレギンレイヴ城の城壁塔に首を向けた。

「おい。そこのトマト!!」

オシャレトマトことハロウィンがおっさん復活をどこからか嗅ぎ付けたのか城壁塔に立っていた。ちょっとでも押したら転落確実なかなりギリギリの位置に。あんな身動きが取りにくい格好であんな所にいるとか正気の沙汰じゃありません。誰かがトチってコケてうっかり後ろから突き落とさないでしょうか、ロランとかロランとかが。

「6年前は引き分けだったな。どうよ?決着つけたくねェか?」

おっさんの交渉にハロウィンがファントム辺りに通信で了承を得ているのか沈黙している間、アルヴィス君にこっそり確認を取ると、ハロウィンはナイトクラスで6年前におっさんと引き分けになったのは事実だとか。
予想はつきつつもにわかには信じがたかったのですがやっぱあのトマト相当強かったんですね。

確認が終わったのかハロウィンがポズン!!と呼び掛けポズンが応答に答える。

「今ファントムからの伝言が届いてね。偶然だがオレと同じ答えが出た!特例としてアランのウォーゲーム参加を認める!!!」

流石トマト、リコピンたっぷりなだけあって話がわかる、そこに痺れはしないし憧れもしない。おっさんは今はエドですが細かい事も気にしない。テストしてないおっさんがokならハズレとか酷い理由で失格したガイラさんも参加させましょうよ、戦力が増えることには困りません。ね?民衆の方も同じ事言ってますし

「そいつもファントムとの意見が一致していてねェ…ヒュヒュ……『ジジイに用は無い』!!」

やっぱトマトはトマトでした。ショックで顎が外れかけているガイラさんをジャック君が慰めつつ修行をつけてくれた事に感謝しています。痒いところに融通の効かないトマトを誰か後ろから突き落としてケチャップにして下さい。

「それではこの5人を………火山群フィールドへ!!アンダータ!!」





はい、今回は火山群フィールドです。
今回からフィールド予告は無しだったので服装対策出来ずに暑いの何の。

「ほえーっ!!ホントに火山だ!!」

「ほえーホントに火山ですねー」

火山なのはいいのですがここは一体何処なんでしょうね。見渡す限りの「真っ赤」は、嫌でも視界に入るのでそれだけでも暑苦しいです。

「あのさ、火口におちたら死ぬ?」

「多分」

「でしょうね……」

火口に落ちて生きていられるのなんて漫画じゃあるまいし普通いませんよね。
あ、生きる屍さんなら平気かも。

「ねえ。チェスのメンバーはいないの?」

スノウ姫の問いかけにポズンは後ろめたそうに

「それがそのぅ。一人…寝坊した人がいまして………」

と答える。寝坊…チェス側から喧嘩売っといていざ試合になったら寝坊ですか。
ビビってるんですか?

「寝坊!!!チェスが寝坊だってよ!!!」

何が面白いのかわかりませんがギンタ君はお腹を抱え涙を流し、笑いすぎなくらい笑っていた。
寝坊したチェスってまさかロランじゃありませんよね?いくら彼が実力者だからと言ってナイトクラスがそんな抜けたことしたら普通に解雇されるんじゃないでしょうか。

「あ!!来たようですね。」

今回はアンダータで普通に登場。沙漠フィールドの時みたいに派手に火口がらバーッっと現れると思っただけに残念です。
出てきたのはターバン被ってる人、船長っぽい人、ジャック君に勝利した子、明らかに人間に見えない白い人、それとなんか怖い人…滅茶苦茶睨まれてます。私何かしましたっけ?

あれ、ロランいないじゃないですか!やった!やっぱチェス側も難易度上げすぎって気付いたんですね!!

「5人しかいねえ!?あと一人は……!!?」

「ここで転んでいるわ……」

パノが指差す方向に視線を向けると誰かがすっころんでました、つられてギンタ君も転びました。ああ、貴重な脳細胞を自ら殺しに行くなんて。

「み、みっともないトコ見せてしまいました……し、しかも寝過ごしてしまって。」

この声にしゃべり方は…
5人しか揃っていないのにいないと決め付け浮かれた私がバカでした。

「きょ、今日の戦いの事…考えていたら眠れなくて………今日はよ、よろしくお願いします……」

にっこにっこ笑ってるのは言わずともわかりますロランです、しかも寝坊したとか。重役出勤ですか?いいご身分ですね。ふざけてるのでロラン解雇しましょうよチェス。
ギンタ君は「昨日の変なヤツだ!」と言って、「うーん。ホントに悪い人に見えないなあ。」とスノウ姫はどこぞのかわいいうさちゃんのような顔をしています。

「おぼえてるかアルヴィス?」

「はい。6年前もいた男です。」

「あの時は確か…ルークかビショップ級だったが、ナイト級になってやがる!」

6年前…って少なくともその時のロランはギンタ君より年下だと思うのですが。ロコちゃんは例外中の例外ですし。ピアス付きって事はウォーゲームに参加出来る程の実力だったって事ですし…なんか凄い人生送ってますね、彼。敵なのでどうでもいいですけど。

「あの時は何もできねえ子供だったお前がウォーゲームに出てるくらいだ。時間は確かに動いてるって事だな。」

おっさんが指をパキポキ鳴らしながら一歩前に出る。

「イキナリオレ様が出てやる。」

チェス側から見ればラスボスが登場したようなものですね、当たった方はロランだろうが誰だろうが御愁傷様です。
と、同時におっさんと言うスーパーウェポンがメルに入った以上、3rdバトルで一番強いであろうロランが相手になってそのまま倒される事を祈ります。
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