うっかりさんと自惚れ屋
先日の雨の中での話です。
トムさんの死にショックを受けているギンタ君はほとぼりが冷めるまであの場所にいて貰うことにし(バッボもいますし)、私とアルヴィス君は肩を並べ雨天の下レギンレイヴ城に戻りつつ3rdバトルで誰がロランの相手をするかについて、議論していました。苦手な相手との会話は少し緊張しますね。

「何れは通る道とは言うが、今のギンタをナイトクラスと戦わせるのは危険だ。」

「ガーゴイルがあるとは言え負けたらゲーム終了の試合に出すのにはまだまだリスクが大きすぎますよね。と、言うか1stバトルの時点で既に切り札見せてるので相手に対策取られてて然るべきと言うか。」

ふむ…と腕を組みつつ考える人のポーズで発言する。

「と、なると相手をするのは大分絞られて来るな。敗戦後にガイラさんが鍛えたとは言えルーククラスに負けているジャックは論外、スノウも止めておいた方が良いだろう。」

「ナナシさんは今日のあれで疲労しきってとてもじゃ無いですが明日バトルに出れるほど回復しそうにありませんし、ルール上出れませんがおっさんは犬の中ですし…」

「するとオレかドロシーか…」

まあルーククラスを瞬殺し、1日試合をせずに体力温存はバッチリなアルヴィス君かビショップクラスを一方的に虐殺し、所有ARMが多く戦術の幅が広そうなドロシーさんの二択になりますね。

「…それかお前の三択になるな」

ハハハ私が入ってますよこのうっかりさんめ


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と、こんな会話をし、ドロシーさんも参加しないとなり半ば絶望していましたが、おっさんが奇跡的に復活しトマトの権力…贔屓でバトルに参加しているので、内心「いよっしゃああああ!」と叫びながらガッツポーズを取ってます。
おっさんはここ数日エドの中にいたのでやる気はあるようですしこりゃもう安心ですね、今日はいい夢が見れそうです。

「ナイトの兄ちゃん!出てこねェのかい?どいつが相手でもいいんだぜ。」

おっさんがロランを片付けてくれれば大分楽になるので出てこい…出てこい…と念を送ります。
あ、ロランと目が合いました、自身に指を指し「ボク…ですか?」とでも云いたげに笑いながら首を傾げます。そうです、あなたですよ。あなたに出ろと言っているんですよ。とだけ視線を送り、すぐ反らす。
あと可愛くないのでやめてください。あれ?デジャヴ?

「どいつもこいつもビビッてんのか!?だらしねーんだよバーカ!!オレが……こんなポンコツ即効倒してやらァ!!」

と、私の努力も虚しく、さらに空気を読まずターバンを被ったルーククラスの方が一歩前に出てきたので

お前じゃねーよ

と口汚く思考してしまいました。
早まらないで下さいターバンの方、彼は「伝説の男」だの「ダンナの右腕」だの「クロスガードNo.2」と言われているんですよ?あのトマトと過去に引き分けているんですよ?そんなおっさんとたかだかルーク級のあなたが釣り合うはず無いじゃないですか。自ら勝ち目の無い戦場に向かうのは脳みそすっからかんのパッパラパーな人がやる事ですよ?

「そしたら意気地の無えロラン!!お前が格下げされて…オレがルークからナイトに二階級特進する事になるだろうな!!」

「そうなったら…仕方ないですよね。がんばってくださいねアリババ…!」

頑張って下さいね。じゃねーです、おっさんがやらなかったら私かアルヴィス君が相手しなきゃいけないんですよ?敵にとってはその方が都合いいのでしょうけどこっちとしちゃ冗談じゃありません。さっきも似たような事言いましたが勝ち目がほぼ無く下手したら殺される相手に向かうだなんて愚者のする事です。
普通、ここで指揮を取るのは立場が一番上のあなたですよね?ひょっとしてターバンの方を捨て駒にする気ですか?うわ鬼畜。

そんな私の考えなど露知らずにロランはへらへら笑ってますし、海賊っぽい人は幻滅したかのようにロランを見てますし(いいぞもっとやって下さい)、パノはあいつはごめんだとさりげなく押し付けてますし、白い人は何も言いませんし、怖い人は怖いままですし。
アリババは「ぎひっ…」とか変な笑いをしながらおっさんを殺したらハロウィンも悔しがるだろうと自惚れてます。じゃあ殺してみて下さいよ。

「威勢のいい若造だな。勇気だけ高く買ってやるぜ。」

おっさんも喧嘩買うの止めて下さい、ああもうポズンが試合開始の合図をしたのでどうしようも無くなったじゃないですか。
まったくアルヴィス君といいおっさんといい格下を相手にするの大好きですね。格下狩りのクロスガードとか陰口叩きますよ?
仕方ないので試合に集中しましょう。

ポズンの開始宣言と同時にアリババはガーディアンARM「魔人のランプ」を発動。てっきり人型のガーディアンが出てくると思ったら出てきたのはアラビアンな話に必ずと言ってもいい程出てくるランプ、見た目そのまま。おそらくランプをこするとガーディアンが出てくるのでしょう、多分。段階を2度踏まないといけないとか少々面倒ですね。

「教えてやるぜ伝説の男アランさんよ!オレをルークと思ってなめるな!」

魔人のランプをおっさんに向けつつアリババは続けます。

@チェスには人間によってクラスが存在
A階級に「強さ」が比例してるとは限らない
Bルークだってビショップより強い奴はいる
Cロランみたいなアホナイトもいる
DARMの使い方によっちゃ金星もとれる(例:ロコちゃん)

と、まあ長ったらしい前置きを終え、ようやくアリババが本題に入りつつランプを擦り始めた。

「そしてこのARMは…大金星を取れるARMよ!!!出でよランプの精!!!」

全身真っ赤でいかつい顔したガーディアンが出てきました。見た目だけなら大金星でしょう。ですがその見た目に反して魔力が大して感じられないせいか正直弱そうです。例えるならバトル漫画によくある細身のキャラの噛ませ犬になる大柄の男のような。

………別にガロンの悪口ではありません、決して。

あ、ランプの精と言うくらいなのであのガーディアンは三つ願いを必ず叶えてくれるチート性能持ちなのでしょうか?、それでおっさん相手に余裕があると、取り合えずそう予想しときましょう。

「こいつはオレのシックスセンスとの波長が一番合う!!ナイトの人間だって簡単にあつかえねえはずのシロモノよ!!わかったか?オレはてめえ「あーわかったわかった。」

おっさんはいつも通り表情を崩さず葉巻を吸い腕を組み仁王立ちし、

「来い」

とだけ言った。

そんな余裕かましてるおっさんを見てスノウ姫が腕を忙しくバタつかせながら「だ、だめだよエド!!!そんなヨユウ見せちゃ……ナナシさんみたいに負けちゃうよーっ!!」と叫びます、彼女も結構言いますね。

「た、確かにあの魔人強そう…」

「そうですか?まあナナシさんの時と違って相手の出方を理解したうえでの行動に見えるので大丈夫じゃないでしょうか?」

「いや……お前達はまだ………わかっていない。あの人の怖さを!!」

おっさん信者のアルヴィス君がそう言うなら、まあ、私達は理解していないのでしょうね。

とかなんとか言っていると「ヨユウかまして死にやがれ!!」とアリババが叫び、ランプの精はおっさんに向う。

「やれやれだ………」

おっさんはそれだけ言うとランプの精を拳一発で粉砕。細切れになったガーディアンは少しの間宙を漂い、消滅する。
正直予想以上でした。

頼りにしていたランプの精があっさりお亡くなりになったので、アリババは恐怖でまともに動けない模様。おっさんが近づいても「ひっ…」だの「うそ…!!?」としか言わず、おっさんの「ランプの精」の時よりは加減された軽い一撃がガードのされていない腹部にまともに入る。

「てめーは三つ。間違ってた」

倒れたアリババが悲鳴をあげるにも関わらず彼の首もとを掴み引きずりつつおっさんは火口へと歩を進める。

「一つ目。ARMってのは完全にシンクロするのに時間がかかる。集中力…シックスセンス……魔力を戦闘中に練り上げる。別の意思を持つガーディアンならなおさらシンクロが必要だ!始めっから奥の手出してるてめえは…アホだ。」

火口まで大分距離があるので、二つ目以降の二人の会話は聞こえませんでした。
唯一聞こえたのはおっさんがアリババを火口に投げ捨てたときのアリババの悲痛な叫び声だけ。死体はまたもや完全消滅しました、これで2度目なので近い内に3度目もきっとあるでしょう、まる。





「すげーぞオッサン!!魔人を一発で倒した!!」

アリババに勝利後、ギンタ君が戻ってきたおっさんを賞賛します。昨日の今日だからでしょうか、ギンタ君はおっさんがアリババを火口に投げ捨てた事に対して何も言いませんでした。素なのかわざとなのかはわかりません。

「あんな魔力もろくに通ってねぇモン、風船と同じだからな。」

「お前、今日から一睡もするな。役にたつ。」

「できるかヒゲ丸!!」

おっさんが手早く一勝を上げ、残り5人となりました。ギンタ君が負けるという展開にならなければあと3人倒せば勝利確定です。

もう一度引きずりますがルーククラスにおっさん使うとかホント勿体ない。

「やっぱアリババじゃダメだったね」

「次は私が出まっす」と、パノが一歩前に出た。

「アレ?あいつのチームは倒したのにまた出るのか?」

ギンタ君は未だにルールを完全に理解出来ていない模様。アルヴィス君が馬鹿にしつつ個人的に勝利した人間は次のゲームにも出られると説明を入れる。

相手がパノ、と言うことはおそらくこちら側からはジャック君がリベンジの為出るのだろうと思ったら案の定ジャック君が名乗りを上げた。

「えーっ?キミー?一回、私に負けたじゃん。たいした事ないんだからひっこんでなさい!」

「オイラが怖いスか?」

ジャック君の挑発にパノは微妙に間を取る。すかさずギンタ君が「オイ!お前っ!!」と声を掛け、

「ジャックをこの間と同じに思わない方がいいぞ。」

とジャック君の後押しをしました。凄くいい顔で。


「……オッケー。相手したげるよ。こんどは殺す気でね。」

パノのこの言葉でジャック君との間に緊張感が生じ、前回とは違い今回はお互い武器を構えたまま試合に入ります。


「第二戦、ジャックVSパノ!!始め!!!」

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