まさかの長男
さて、攻撃を仕掛けようとする所でピノが聞いてもいないのに勝手に自分語りをはじめます、謎ポーズを決めながら。

「よく聞け女。…俺はなぁ、ロドキンファミリーの長男なんだ。」

はあ、さいですか。
……ん?ロドキンファミリー?1stバトルの?


18


彼の説明はこうです、ロドキンファミリーは4人で1チーム。パノとは双子で彼は兄、長男なのに"ピ"ノ、お腹が減る名前ですね。
本来なら先日のゲームは4vs4バトルで彼も参加する予定だったとか。

「普通は3vs3になっても年功序列でオヤジ、俺、パノの3人になる筈だろ!?それなのにレノのアホが『兄ちゃん、ここは公平にジャンケンで決めようぜ!』とか抜かしやがって…」

で、負けたと。勝ったレノが調子に乗ってピノを煽るところと、それを見てパノが慰めるところが目に浮かぶようなそうでもないような。どうでもいいですが声マネ下手ですね。

「ジャンケンなんて無視して普通に年功序列で押し通せば良かったのでは?」

「ふっ…馬鹿かお前は、ロドキンファミリーは揉めたら公平にジャンケンで決めるのさ、それが掟さ恨みっこ無しだ。」

馬鹿に馬鹿と言われました。大体恨みまくってるじゃないですかあなた。
って、昨日のバトルはその掟とやらのせいで遅れたんですか?戦争を(ry

「そもそも4人で1チームなら今日みたいな日に出ればいいじゃないですか。事前に人数ごとのチームを作ってはいなかったのですか?」

「だってファントムが…『大丈夫!きっと4人対戦になるから!』とか言うから…」

1/6の確率で変わるものに何が「大丈夫!」なんでしょうね、アホなんでしょうか1ナイトは。と、言うかはじめから初戦はロドキンファミリーだけ出すつもりだったんですか。絶妙に計画性の無さが露になっていると言うかなんと言うか。

「ダイス降ったレギンレイヴ姫には文句を言わないんですね」

「ば、馬鹿!あの人は俺のよ…じゃなくて、いずれは俺がレギンレイヴを支配下に置く計画を立てているんだ!そんな恨むとかで、出来る訳無いじゃないか!」

うわ、わかりやすい。まあ容姿端麗ですしお姫様ですし男性にとっての理想の形と言えばそうなんですが。
と、自分勝手な解釈をすると驚きの方向から声があがります。

「おい!ピノ!そんな事オレは聞いてないぞ!」

戦闘不能でぐったりしていたフーギがチェス側から急に声をあげ(なんか必死でした)、ピノと共に「はっ、うるせえバーカ」などと頭の悪そうな罵りあいをしています。ひょっとしてフーギも惚れているんですか?まさかの二人目、モテモテですねレギンレイヴ姫。そう言えばこの試合全国放送されてるんじゃありませんでしたっけ。きっと恥ずかしさのあまり今頃顔押さえて部屋に籠ってますよレギンレイヴ姫。ところで、

「もういいですか?」

いい加減試合を始めたいのですが。
ポズンもさっさと始めろよと言わんばかりにこっちに視線を送っていますし。

「…はっ!そうだ、お前を使って昨日のウォー(ry、ウェポンARM『フレイムブレード!』」

長ったらしいキメ台詞を吐いて(待ってあげる私はひょっとして優しいのでは?)ピノは文字通り炎を纏った大剣を出し、昨日のレノやパノのごとく突っ込んできます。
剣は降り下ろされ、突かれ、回転斬られ、そのすべての動きを目で追い、ギリギリを狙って避けます、いつだかに比べて余裕で体も追い付けています。

「お前…逃げんじゃねーよ!びびってんのか!?」

「あまり頭をカッとさせると毛髪が抜け落ちますよ?実際、倒す方法を模索しながら避ける際にあなたを観察していたのですが、後頭部が薄くなっていましたね。遺伝ですか、若いのにお気の毒に。」

「俺は禿げてねえしオヤジのはスキンヘッドだ!!!」

そんな事を言いつつ後頭部の確認を始めるピノ。確認の際、手のひらに残る抜け落ちた毛を見て動揺するピノ。滅茶苦茶気にしてるじゃないですか
と、こんな下らない舌戦で馬鹿は簡単に隙を見せてくれたので瞬時に間合いを詰め、構える隙も与えずARMを持つ腕を蹴りあげる。
いともたやすく『フレイムブレード』はピノの手から弾かれ、そのまま回転しつつ頭上高くに吹っ飛んだ。
ピノが次の行動をとる前に足払いを仕掛けると、不安定な砂漠フィールドと言う事もありあっさりと転倒する。

そのままドロシーさんに初めて会ったときに頂いた『リングダガー』を発動させ、ピノに馬乗りになり、ダガーを首筋に当てる。

同時に『フレイムブレード』が少し離れた場所に音を立て、地面に刺さった。

「降参しません?このまま頸動脈を切って死んで貰っても構わないのですが、あなたに手を下すと後々ロドキンファミリーの報復で面倒な事になりそうなので。」

ダガーの刃先を皮膚が少し切れるよう食い込ませ、無駄に動かれないようさらに行動を制限する。

「い、嫌だ、と言ったら…?」

「在り来たりな返答ですね、お望み通り答えてあげます。」

ちらり、と横目で離れにいるメンバーを視界に入れ、そのまま目線をピノへと戻す。
不本意ながら顔を近づけ、誰にも聞こえないようにある事を耳打ちした。

「いつか双子の妹さんが試合に出てきたら私が相手をします。敵討ちと称し簡単に相手になってくれるでしょう。今のように時間を設けず、死んだあなたのもとへ遠慮なく送ります。一人づついなくなれば、あなたの家族の報復も怖く無くなると思いませんか?」





「チョロかったです。」

ポズンの勝利宣言と同時に、メルのメンバーのもとに戻ります。

「ミツキちゃん、あいつに何言うたん?」

「あの人凄く怖がってたように見えたよ?」

「薄毛煽りの効果が想像以上に高かったので、むしるぞと言っただけです。単純な精神攻撃だけでギブアップするだなんて、今後もこんな楽な相手が続くといいのですがね。」

「薄毛治療用のホーリーARMも存在するのに…、そんな事で敗北宣言するなんて馬鹿な敵ね。」

「…!いやいや若い男にとっては結構死活問題なんやでドロシーちゃん…」

「若い人以外にも死活問題じゃないかなナナシさん…」





「ピノ、随分と情けない負け方をしましたね。」

ピノが戻った矢先にマイラから辛辣な一言を浴びせられる。ピノ自身口答えをする気はあったようだが、情けなかったのは事実だったので何かを言いかけても口をつぐんだ。

「お前、後頭部ヤバイんだってな、ちょっと見せてみろよ」

「ヤバくねえっつーの!!」

「ところで…次はロコ出たいです。いいですねマイラ?」





スノウ姫、私、と現在勝ち越しをしている。次も白星を得る事が出来れば2ndバトルも勝利を納める事が出来ます。
その次の相手は氷の城にいたロコちゃん、ちゃん付けされるのが嫌だそうです。
残りはナナシさんとドロシーさん、よっぽどの事が無ければ大丈夫とは思いますが。

「自分。いかせてもらうで。」

ナナシさんが次のバトルに出ると名乗りをあげました

「理由!!自分、女のコ大好きやの!!」

キャハっと語尾につけます、なんか前にもありましたねこんな事、ドロシーさんが「何がキャハだ!!!」とキレてます。

「それでは第三試合を始めましょう。

ナナシvsロコ

2NDバトル!!第二試合…始め!!!」

ポズンの宣言で試合が開始された

ロコちゃんは外見で判断すると、あまり肉弾戦は得意で無いように見えます。
それと名前詐欺のトマト同様重そうな荷物を背にしているので、速攻で突っ込めば終わらせる事が出来そうです。見た目で判断してはいけないとはいいますが、ナナシさんがどう対応するのか見物ですね。

「さーて。どっからでもきーや、おじょーちゃん
レディーファーストや。お先にどーぞ。」

にわかには信じられない台詞を敵に吐き、腕を組み、砂漠の真ん中でマフラーをなびかせ仁王立ちするナナシさんを見て、頭が痛くなってくる。

とりあえず下手に攻撃を仕掛けず様子を見るという選択をしたのだと自分に言い聞かせます、きっとそうです、そうであって欲しいですね。

スノウ姫はこの予想を遥かに下回る行動に呆気に取らわれていますしドロシーさんは呆れてバカと評してますし自分は顔が引きつっているでしょう。
こんな絶好のチャンスを相手が逃さない筈がありません。

「ロコもなめられたものです。少し怒りました。」

一発で決めてあげますから、と背負っていた鞄を地に置き、ロコちゃんは中身を漁り始める。

「お!!なんやねん!おもちゃでも入っとるんかいそん中に!!」

わはははと笑う姿を見て、この人本気で言っていたのだと確信しました、さっきの考えが馬鹿みたいです。
あと結論を言うとナナシさんは馬鹿です。

「んー…これにします。呪いの七つ道具の一つ…『ネグゼロ』!!動きを、封ず!!!」

ピキーン、と音がした気がしました
あれだけ余裕ぶっこいていたナナシさんが急に冷や汗を流し始めます、体が動かないと言っています。

「あの女……ダークネスARM使い!!!」

「自業自得だとは思いますがどう見ても状況は悪いですね。」

追い討ちをかけるようロコちゃんは鞄からARMを次々と出します、『呪いのワラ人形 』、『スパイク&ハンマー』。文字通り日本のホラー物によく出てくるアレです、と、言うことでやることは一つ。

「ちょっ…ちょっとまてええ!!何する気や君ィ!!?」

「レディーファーストですから。」

スパイクが一つ、藁人形に打ち込まれました。ナナシさんが叫んでいます、ギャグ調に。

「ドロシー!!アレ、もしかして……」

「ダークネスだわね!!呪いのARM!!それを使うたび術者にも……災いをまねくARM!!」

しかしロコちゃんの使っているARMは彼女にとっては災いでは無いとの事、副作用は「年齢低下」、使う度若返るので、彼女はあれでも32歳だそうです。
彼女どころか世の中殆どの女性にとって災いでは無いでしょうね、私は勘弁ですが。

さて、2本目が打ち込まれました、大体の人間はこの時点でショック死するそうです。まあ一般人レベルならそうでしょうね。

「スパイクはあと3本。何本もつのか楽しみです。」

無機質にロコちゃんは3本目を打ち込みました、ナナシさんはちょっとキツそうです。耐えかねてスノウ姫がギブアップしろと叫びます。

「そーなァ……ギブアップしたろかなあ……
ドロシーちゃんがまっ裸、見してくれたらの!」

「するか!!!」

こんな当たり前の答えを引き出す為のセリフは裏を返せばギブアップする気ははなから無いと言う事でしょう。
ナナシさんはドロシーさんに拒否されたのでもう少し粘ると自力で金縛りを少し解除しました、腕だけが自由になります。化け物か何か?

ロコちゃんはこれを見て焦ったのか4本目のスパイクを即座に打ち込みます、ナナシさんはロコちゃんに指をさし、魔力を込め始めます。
最後のスパイクが打ち込まれると同時にナナシさんの雷のARMによって藁人形は炎上、使い物にならなくなりました。
スパイクを5本打っても生きていたナナシさんのせいか雷のARMのせいか、はたまた両方なのか、彼女は目を見開き硬直しています。
2度しか見ていませんが普段表情の乏しい彼女にしては珍しい表情でした。

「この雷をブチあてたいのはキミやない。ペタとかいうアホゥや!!だから今日は……この辺に…しといたる………」

と、だけ口にしてその場にナナシさんはぶっ倒れました。普通2本で死人の出るスパイクを5本耐えたのですから当然の結果でしょうね。

「勝者!!!チェスの兵隊ロコ!!!」

ポズンが勝利宣言をしたのを確認し、直後にこれから邪魔になるであろう倒れたナナシさんの回収に向かった。

これから戦うドロシーさんや少し疲労の溜まっていそうなスノウ姫にやらせる訳にはいきませんから。





「あなたは実に馬鹿ですね」

某青狸ロボットの有名な台詞です、深い意味なんてありません一度使ってみたかっただけです。

ナナシさんの意識が無かったのでヴェストリの洞窟のギンタ君の時のように背負う形で回収をします。
彼の時とは違い、体格に差がある故に完全に背負うことは難しかったので足だけ引きずるような形になりました。片足だけ掴んで引きずっても良かったのですが、疲労してる人間相手にやるのは常識が無いので。
歩き初めて時間も経たない内にナナシさんは意識を取り戻した。

「……あれ、ミツキちゃん?」

「おはようございます、調子悪そうですね。」

「うーん……、力がまったく入らんわ……、ミツキちゃん抱きしめるチャンスなのに。」

「このクソ暑い中それやったら落としますよ。」

「……それにしてもミツキちゃん優しいんやなあ。」

「冗談言う元気があるなら大丈夫そうですね。」と返すつもりが、「優しい」だなんて吐き気を催す発言を聞き、思わず舌打ちをしそうになる。悪意の無い発言にする物では無いとはわかっているので、どうにか堪えた。

「それは私にとって一番縁の無い言葉なので適当な事を言うのはやめてください、背筋が凍ります。これから戦うドロシーさんの邪魔になると思ったので回収しただけです、勘違い甚だしいです。」

そもそも優しいとか優しく無いとかで動いているつもりはありません。
合理的で有益かそうで無いか、それだけです。
と付け加える。

「……だってドロシーちゃんの為思うてやったんやろ?充分優しいやん。」

「……。」

優しい連呼に虫唾が走ったので腕を離し、ナナシさんを地面に落とします。ビターンとよく聞く音が響いた気がしました。

「ミツキちゃん、痛いんやけど…」

「聞こえません」

180度反対側に周り、片足だけ掴みあげそのまま引きずる形を取ります、砂に残る軌跡が二本から半回転して一本になりました。

「砂が服に入り込んでめっちゃザラザラするんやけど…」

「聞こえません」

ほら、私は優しくなんてない。
身の保身の為、人を殺すつもりで動いていた私が、優しいなんてある訳ない。
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