飼い主に似るって
ナナシさんを引きずりながら戻ってくると、マイラとか言う黒マントとドロシーさんがガンを飛ばしあいながら会話をしていました。ドロシーさんをメル初の死人にするんですって、笑っちゃいますね。
ドロシーさん自身はそれを聞いて氷の城の時のトマトのごとく笑うだけ笑うと「冗談にしては笑えない」、とマイラに向き直ります。それを見たスノウ姫が何か言いたげな視線を送っていました。
2ndバトル最終戦開始です。


19


「ドロシーちゃんか!戦うトコ見るんは初めてやのォ。」

ロコちゃん戦でさっきまでぶっ倒れていたナナシさんが起き上がり、ドロシーさんの戦いを観戦します。まだ本調子じゃ無いのですから横になっていればいいのに。

「私も!!あ、ミツキは修練の門で見てるよね?」

「実はもう一つのARM発動の為に少し手伝って貰っただけなので、正直な話見たこと無いと言った方が正しいんですよね。」

今日はここにいるメンバーはお互い見たことの無い戦闘ばかりの日ですね、ドロシーさん→ナナシさんだけはヴェストリの地底湖で見ているようですが。

試合に集中しましょう。まずはドロシーさんが小手調べに『リングアーマー』と言う低級ガーディアンを発動します。あ、これARM発動の練習の際にお世話になった奴です。

『リングアーマー』は一直線にマイラに向かいます。が、あと数歩と言うところで突如動きが止まります。足元を見ると何か液体のような物が纏わりついています。

「奇遇でしたねェ。私もガーディアンARM使いなのですよ。私のガーディアン『バキュア』!!」

『バキュア』と呼ばれるガーディアンはアメーバに目玉を付けたような姿をしていて形を成していませんでした。ガーディアン自体の破壊、無理そうですね。
『バキュア』は足元からそのまま『リングアーマー』を包み込み、破壊しました。

「へえ。結構レアなARMもってるじゃん。それ欲しいな。」

「差し上げますよ。あなたに私が倒せたならばね!!」

行け『バキュア』!!!とまあ某バトル時のようなありきたりな台詞を吐いてドロシーさんへと『バキュア』を向かわせます、対するドロシーさんはまたもやガーディアンを発動。ギンタ君のガーゴイルよりも巨大な『ブリキン』(今命名)は、『バキュア』じゃそう簡単には包み込めそうにありませんでした。一発だけ『バキュア』に攻撃を与えます、やはりと言うかなんと言うかダメージが与えられたようには見えませんでした。マイラが勝ち誇ったように同じような事を説明します。

一応絶望的な状況に置かれてはいるのですがドロシーさんは終始余裕そうでした。

「ドロシー……笑ってる…?」

「不思議と余裕そうですよね?」

スノウ姫と顔を見合せ、お互い言葉を止めます。次はどう出るのでしょうか?と、少し楽しみながら試合に目を戻すと、一瞬だけでしたが、ドロシーさんの目付きが変化しました。氷の城でドロシーさんと初めて出会ったときの目付きと同じでした。

「……気の毒な事になりそうな彼の為に念仏を唱える準備でもしましょうか。」

「え?ミツキ、それってどういう…」

スノウ姫の問いかけが全て終わる前にドロシーさんが『ブリキン』をARMに戻す。

「おや?観念しましたか。次は…あなた自身を包み込んであげましょう。そして死ね。メル初の死者となりゲーム終了だ!!」

血走った目付きのマイラの言葉を無視し、ドロシーさんはディメンションARM『ジッパー』を発動。空中に文字通りジッパーが表れ、自動的に口を開けます。
『ジッパー』の作る空間に片手を突っ込み、ドロシーさんは心底楽しそうに数え歌を歌いながらARMを漁ります。「神様の言う通り」のところは「あんたを殺すARM」でした、物騒ですね。

「これでもないなあ……これも違う……ん!やっぱコイツよね」

いつも通り語尾にハートを付け、『ジッパー』から1つのARMを取り出します。チェーンに犬のような物を型どったチャームが付いていて、今まで見た中だとおっさんの持つ『修練の門』に出てきた熊耳メイドのブモルさんのARM状態に似ていました。まさかあれから犬耳メイドが出てくるんでしょうか?ははっ…ドロシーさんに限ってそんなまさか。

「ほう?それは何のARMですかな?ウェポン?ガーディアン?どのみちあなたは…『バキュア』に包み込まれて死ぬのです!」

勝ちを確信しているのかくくく…と笑いを抑えきらず、マイラは合図を出して『バキュア』をドロシーさんに向かわせます

ドロシーさんと『バキュア』の距離が2メートルも無い、という所で彼女はARMを発動させました

「出ておいで『トト』。」

ドロシーさんのすぐ頭上で空中にヒビが入り、何もない空間が現れ『バキュア』はその中に吸い込まれたかのように飛び込みました。

少しして空間の中で品の無い何かを食すような嫌な音が響きます。味方が出しているとにわかには信じられない禍々しい魔力をそこから感じました。

食事が済んだのか最後に何かを飲み込む音が響いた後、空間からARMが粉々になって吐き出されます、それを見てマイラが声をあげた。

「おいしかった?トト」

ドロシーさんの声に答えるように『トト』と呼ばれるガーディアンが空間をさらに広げて姿を現します。

「なぁんかドロドロしてて………マズイなあ……」

犬です、目が金色に光り、尾はいくつにも別れ牙は剥き出し、全身は薄く青みがかった灰色。
犬は飼い主に似るって言うじゃないですか、あれって本当なんですね。本人の前じゃ言えませんが超おっかないです。

「ARM…壊しちゃったじゃない」

バカ犬っバカ犬!!と『トト』…さんを叩きます、『トト』さんは食べていいとばっかり思っていたようで必死に謝罪していました。

「ま。いらなかったけどね。あんなシュミ悪いの。」

「喰った!!?バキュアを喰っただと!!?」

「ガーディアンARM『レインドッグ』。名前はトト。お気に入りのコだよ。」

食いしん坊でねェ……、と続けると命の危険を感じたのかマイラは即座にギブアップを宣告します。もうARMを持っていないそうです。ガーディアン一体でよくもまあガーディアン使いを名乗れた物です。

そんな訳でポズンが試合を終わらせようとする所でドロシーさんが待ったをかけます。まだ終わらせない、と

「ゴメンね。私、皆のように優しくないんだ。」

自身の頭に指を差し、不気味に微笑みながら少しだけ舌を出すドロシーさんは妙に色気がありました。マゾヒストと言う訳ではありませんが自分が男なら惚れていたかもしれません。

「覚えておきな…私は魔女ドロシー!トト……
食べな。」

マイラは最後に「え…」とだけ言葉を発し、『トト』さんの腹の中に収まる為いくつものパーツに分解される事となりました、最初は頭から。
チェスの兵隊側は3人共絶句していました。

そんな光景に耐えられないのかスノウ姫は顔を反らし、「ひどい…っ…殺す事なかったのに!!」と批難します。

「そいつは違うで、スノウちゃん。これは戦争なんや。明日はキミが殺されるかもしれへん!コレは遊びやない。ドロシーちゃんはそう言いたかったんと違うかな。」

「向こうは誰もが殺意を持って動いていましたし、お互い危機感を持つべきでしたね。」

味方の中だと優しすぎるスノウ姫とナナシさんとかナナシさんとか。

会話中はマイラが食される音がずっと響いていました

マイラの存在した形跡が跡形も無くなるとドロシーさんは『トト』さんをARMに戻し、人1人殺してなんかいないように軽く台詞を発した

「アラアラ。チェス初の死人になっちゃったわね。」

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