コンコンコン、お隣さん | ナノ


▼ 06、隣人の友人はスーパーマン

カラオケに行った時の事、聞いてない事態にびっくりした。合コンまがいの何かって聞いてないんだけど。とりあえず室内に入る場所で固まっていると、友人に促されたので中に入った。いいんだけどね、別に…彼氏が欲しくなる気持ちもわかる、だって友人たちはいつも彼氏欲しい彼氏欲しいって言ってたし。好きな人が先なんじゃないかって考えたりする時期はもう終わりました

その時隣に座っていた人とはわりとお話していたと思うし、別に嫌な人では無かった。だからカラオケの途中に連絡先を交換して、それから友人が歌っている中、私の耳元に顔を寄せて「付き合ってください」なんて言ってきた。であったばかりです

「みんなと何度か遊んでからにしない?」

「うーん…でも女の子たちってつるむよね」

確かに。あっちでカップル成立なったならまだしも、そうじゃなかったら多分男そっちのけで結局女子だけでワイワイしてそう。しかも時間があまり合わないから久しぶりに会った感覚に合コンに行っても女子同士でうっかり話していて終わる事がある。だからカラオケにしたんだろうな、カラオケなら話すのを諦める気持ちも少しだけ出る。カラオケ行ったなら歌わなくちゃ!っていう気持ちになるわよね、わかるわ

「二人で遊んだりもしたいし、お試し…っていうか二人で遊ぶ理由?に」

断るのもだんだんめんどくさくなってきた。嫌いでもなんでもないし、ただ今の私の趣味は萩原くんと松田くんの観察なんだけど。だからこそ私は仕事が忙しい事とか伝えたのに、それでもって食い下がるからやっぱりめんどくさくて「形だけでもいいなら」と伝えた。それは安易に彼氏彼女っていう甘ったるい関係じゃない事は現時点では無い事は伝えた。了解してくれたのでふーっと胸を撫で下ろす。帰り際、お祭りに誘われたので夜だったら大丈夫だと伝えてその場は別れた
出会ったばかりでこうなるって事は、多分第一印象で何かを決めたんだろう。仕事だって断るための事じゃなくて実際忙しいんだとわかってくれればいいかな。この間痛い目見たばかりなのに結局こんな事している。でもあの元彼もー…いや、そいつの話しはいいや

ふっと見た時に萩原くんがいたから少し頭を下げてから歩き出すと萩原くんがこっちへ来た。松田くんのところへ行くのかと、どうしたんですか?よりも先にうっかり聞いてしまったのはちょっと失態だったかもしれないけど、気にしてないみたい。

告白されたから付き合う、多分キープみたいな事をしてしまっているんじゃないかと思う。もし振った後に好きになってしまったら?なんて…とりあえず色々考えた末、軽いんだろう、と…まあ、学生の頃そんな事があったからこうなってるんだけどね…。好きだったんだって気づいた時にはもう遅し、その彼は別な子の彼氏〜っと…。とりあえず色々あるのよ

萩原くんと少し談笑をしてから別れた。本当に松田くんの家に行くんじゃなくて送ってくれただけなんだ。優しい人だな。男運が無くなったと思ったのは短大を卒業してからだけど、松田くんと萩原くんと出会って男友達運は急上昇している気がする。友達って呼んでいいのかわからないけど


夏祭り当日まではメールのやり取りをしていた。わりと普通のカップルじゃないかと思う、付き合いたてのカップルみたいに、私が仕事遅くなっても電話を寄越す。お風呂が出来るまでの間に話しをして、出来たら電話を切ったりして。メールも何が好きとかおすすめのお店とか?とりあえず他愛もない話しを続けていた
当日は友達に浴衣を着せてもらった。友達って、腐女子の友達だから事情もついでに教えたりしては楽しそうに笑っていた…腐女子でも恋愛は大事だよね、なんて言って

恋愛にもなってないけど

待ち合わせ場所に向かい、彼と合流してから出店を回った。出店は私にとって色々なものが食べられるパラダイスみたいなもの。浴衣だからってなんぼのもんじゃい!って感じでビール片手に焼き鳥を食べたり…あ、引いてる引いてる。なんて思いながら少しはセーブしてあげていた。まあ、飲んでるおっさんみたいなの連れて歩きたくは無いか…そして次にまた違う種類の串焼きに出会って注文するために並んだ

「よく食べるね」

「うん、食べるの好きよ」

「それで太らないのってすごい」

「そういう体質なの…」

「見た目可愛いのに…」

ありがとう、と皮肉で返した。それはその彼が皮肉げにつぶやいたから。その後は串焼きを食べてからせいぜい鼈甲飴くらいにしてあげようと思って飴でごまかしながら歩いていると少しは満足らしく、笑顔が増えた。人混みを慣れない下駄で歩いていると、さすがに足も痛くなる。少しずつ私の足の速度が落ちていってしまうのは本当に申し訳ない、それに合わせていてくれていたけど、途中で足の痛さに足元をみて、顔をあげた時にはもう彼は見えなくなっていた。はぐれた…なんて思ってとりあえず端に寄っていき、階段の一番下に座って下駄を脱いだ。皮がめくれて擦れているそれ。自分の事ながら痛そう。最初から絆創膏でもつけていけばよかった、浴衣とお揃いで買った巾着の中を探っても入っていなかった。だよね、入れてないもん…

はぁ、とため息を吐いて自分の膝に肘をついて頭を抱えるようにして俯いたら隣を通り過ぎた階段をのぼった足がそのままバックして戻ってきた。誰だと思ってちらっと顔をあげると萩原くん…最近よく会うな…

「人違いだと思った」

「どうしてわかったの?」

「半信半疑だけどね。これ、この髪飾りこの間バッグにつけてたでしょ?」

今頭につけていたやつ…そういえばこの間持っていたバッグに挟んでいた。これを覚えてるってすごい…モテる男は違うわね!男にも女にもモテそうだ。私がすごいなって思っていると、私の足に気づいた彼が私の前に来る。ここで何をしているのかと聞いたら、人差し指を立てて口元にあてて「見回り」と小さな声で呟くと私の前にしゃがんだ

「痛そう…絆創膏持ってるから貼ってあげるよ」

私が何かを言う前にお財布の中から絆創膏を取り出した。常時持ってるの…?袋を破いて本当に言葉通りに貼ろうとしてくれていたので自分でやると言ったのに、結局つけられてしまった

「ありがとう。絆創膏持ち歩いてるの?」

「うん、じんぺーちゃんがよく喧嘩するからね、昔っから」

「流血するほど!?」

「あはは」

あ、笑って誤魔化した!
誰と来ているのかと聞かれたからこの間の人だと教えると彼氏が来るまで近くにはいるって言われて離れていかれた。あまり強引なイメージは無いんだけど絆創膏の事と言い、結構強引だなって感じた…でもそれはイメージであって、萩原くん本人じゃないもんね。携帯を開いて電話をしてみても出ない。絆創膏もついたので探そうかと立ち上がったら名前を呼ばれて振り向いた。階段の上から下りてくる彼

「急にいなくならないでよ!」

「ごめんなさい、余所見したら見失っちゃって」

「しかも探さないで座ってたの?」

さっきまで萩原くんがいたところを見ると、彼はもうすでにいなくなっていたので、私の前にきた彼を見やった。

「靴擦れしたから」

「だからって一人でここにいたら危ないじゃん」

「痛くてわりと限界だったの。探さなかったのはごめんなさい」

「なんだよもう…!俺は探し回ってたのに」

この人、なんていうか…探さなかった事自体に怒っているんだなーと思ったらなんとなくこの人に裂く時間がもったいないなって感じた。一人でここにいたら危ない、なんて私の事を心配しているような口ぶりだけど、実際はそうじゃない…よね?
これ私が悪い?なんてぐるぐる考えていたんだけど、もう…帰りたい。帰って自分の好きなもの食べて飲んでぷはーってやりたい。その気持ちばかりが前に進むけど、自分のわがままばかり言っているのもダメだろうと思ってもう少し付き合おうと、頑張る事にした。もうこの時点で彼とはお付き合い出来ない事は伝えようと思っていたし、あと少しの辛抱…なんて思っていたら階段の上から顔をのぞかせたのはこの間合コンに来ていた二人で、すぐにいなくなった。私が首を傾げると、気づいた彼が振り向き、それから私の手を掴んだ

「行こう」

「え、どこに?」

「足痛いんなら休憩しよう」

腕を掴まれて、階段の下の道を歩き出された。どこに行くのか、なんなのかわからないし、しかも休憩はさっきの所じゃダメなのかと思いながら引かれるがままに歩いた。腕わりと痛いわ、そんなに騒ぐほどじゃないけど
私は下駄を履いてのんびり歩いた時の音が好き。だけど今立てている音はまるで走ってるような音…実際走ってないけど、駐車場のほうまで行けば、車の中に入れられそうになった。歩いてきたんじゃなかったの?なんて突っ込みはともかくとして、なんか入っちゃいけない気がしていた。入れられそうなその場にしゃがみこんだら「ねぇ」という声が聞こえて顔をあげた

「さっき話し聞いてたけど、この子と何日でできるか賭けてるんだって?今日やれたら一万円貰えるって話しだったよね」

「そ、それは私にお金が入るの?」

「…そんなわけないでしょ?」

車と車の間に私はしゃがんでいて、萩原くんは後ろから来たから私の横側にいて、彼は扉を押さえた私の後ろにいる。萩原くんが私の質問にふっと可笑しそうに笑った後に手を差し出してきたのでその手を掴んで立ち上がった。振り向いたらいらだっている様子の彼がいて、この間の合コンにいた人たちが出てきた

「しっぱ〜い、しかも男に邪魔されてるし」

「うるせぇ、お前らだってすぐさま逃げられてただろ!」

「ナンパしたら連れた子たちだからいけると思ったんだろ。だいたい、お前も自分は大丈夫だ〜って言ってたじゃねぇか」

「ちっ…邪魔が入らなければ」

そういえばあの日最初カフェだったのに途中でカラオケって言われたんだったって理解した。ナンパしたらあの二人がひっかかってこういう状況?なんて。ちょうどよく隣の車が出て行こうとしたので萩原くんに連れられて後ろに引っ込んだけど、車がいなくなったせいで回りが広くなってしまった。それでも帰宅する人たちや今からお祭りに行く人たちもいたので人の目が気になったんだろう。その人たちは歩き始めたので私はここではっきりさせておきたい

「アドレス消すからね」

「…好きにしろよ!」

一度足を止めたと思ったら走り出したその人、萩原くんがふふっと可笑しそうに笑ったので萩原くんを見た

「なに?」

「ううん?つるむ人が違うなら彼も違うかもしれないのになーって」

「どういう事?」

「あの子なまえちゃんが好きなんだなーって事」

「…よくわからないけど、二回も、でもこの間のことも合わせると三回か…いっぱい助けてくれてありがとう」

「どういたしまして。まだ仕事中だから送れないんだけど、一人で大丈夫?タクシーとか使ってね?」

「うん、ありがとう」

萩原くんと別れて道路まで歩いた。もちろんタクシーは使うつもりで、通りがかったタクシーを発見し、手をあげて自分の住所を言う。まだお腹もすいているからやっぱり家の近くのコンビニでおろしてもらう事にした

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