コンコンコン、お隣さん | ナノ


▼ 17、からかうのが面白い隣人ちゃん

あれ、なまえちゃんかな

仕事の帰り道、今日は自分の家に帰る予定だった。陣平ちゃんと近いと言えば近い、遠いと言えば…遠くも無いか…そんな曖昧な距離にいるけど今は職場に近い駅にいる。ちなみに基本的には独身寮に入る事になっているけど、まあ自分たちで部屋を借りれる人とか、実家が近い人たちは最初こそ寮にいるけど寮の外でも生活できそうな人たちはわりと早めに外に出される。俺と松田はそんな感じの中の一人

訓練が終わって、同じ職場の人のところでDVDを借りて、それから家に歩いて帰るところだった。その途中、自宅よりも一つ前の駅前を通った時に辺りをキョロキョロ…というよりも周りの景色を楽しんでいるように顔を動かして髪を揺らしている子を見つけた。横顔を見ればなまえちゃんだってすぐにわかる…それでも自信は無い。若干不審者に間違われる可能性もあったが少しだけ後をついていったのは…わざとではないよ…。人が多い駅前から少し進んだ時に、何かを落としたらしいなまえちゃんらしき人物がしゃがんで何かを拾い上げた。それにふーっと息を吹きかけてパタパタと掃っていた。どうやら落としたのはスマホのよう

なぜかパッとこっちを見たなまえちゃんに気づいて足を止める

「萩原くん」

「あ、こ、こんばんは」

別についていってたわけじゃないけど、一瞬うしろめたさを感じてしまったあたり…これがストーカーの気分なのか、なんてちょっと冗談でも思ってしまった。彼女が笑ってこっちに歩み寄ってきてくれたけど、さっきの人込みとは違って今はちらほら人がいる程度、そうなると近づいてこられるのは困るので手を前に出して止まってほしいと伝えた

「あ、ごめんね、変な意味じゃなくて…さっきまで訓練してたし、一応シャワーは浴びたけどなんとなく…」

「…それなら、臭いって感じたらそっとタオルで鼻を抑えるわね?」

「傷つくからやめて…」

可笑しそうに笑うなまえちゃんはもう少しだけ歩み寄ってきて、今横を向いた時に見知った顔だと思った俺が視界に入ってきたからこっちを見たらしい。仕事だったのかと問いかけたが、多分違う、仕事帰りに飲んできたんだろうとわかってしまうほど、人が二人分くらいの距離でもお酒のにおいがした。

「飲んできましたー!」

手を挙げて発言する彼女に、酔っているのか問いかけたら、真顔で全然と否定されてしまった。どうやら大変な時期も過ぎたので単にテンションが高いらしい。結局この場所だと方向が同じなので並んで歩く事になった。と、思ったら途中で「じゃ、ここで」なんて言ってまた居酒屋に入ろうとしているなまえちゃんに目を丸くさせた

「ちょちょっと待って!?また飲むの!?」

だから歩いていたのかと合点がいった。酔い醒ましに歩いていたわけでは無いみたいで、単に飲み屋を探していたらしい

「だって飲み足りないんだもん。一緒に来る?」

行かない、と言うのは簡単で。ここからだと多分駅で電車に乗るわけでも、この子の事だからタクシーを使うでもなさそう…となると

「……じゃあ俺んち来る?」


なんて言ってしまった手前行くと言った彼女にやっぱり無しとは言えない。とりあえずコンビニでお酒とおつまみを買ってから俺の家へ行き、なんでもない、ただ汗をかいたからシャワーに入るだけだと思いつつ浴びさせてもらった。出てきた彼女はテーブルの上に置いたお酒とおつまみを飲み食いしながら、別に緊張した様子もなくスマホでゲームをしていた。とは言っても松田の家にいる時みたいなリラックスした感じも無いけど

「ごめんね、一人にして」

「いいよ、さっきから萩原くん気にしてたし、そんな中飲みに誘う私も私だった」

「お詫びに萩原研二、おつまみを作らせていただきます」

「ほぉ!?」

片目を瞑ってそういってみせれば、まるで料理出来るのが以外だと思われていたのか…そんな事は無い。降谷みたいに色々凝ったりもできないし、松田みたいに覚えればなんでもできるまでとはいかないけど、それなりに出来る。俺がキッチンへ行くと少し遠慮がちについてきて、キッチンに顔をのぞかせて入っていいか問いかけてきた。
笑って頷くと少し離れたところで俺の事を見ていた

「あ、お手伝いはしないから」

潔いけどね…。家に来て、彼女面して片付けをし始めたり、キッチンに自らたって何か作ろうとして家事出来ますよアピールする女の子と、なまえちゃんみたいに何もしませんな女の子…どっちがいいって言われたら俺はなまえちゃんのほうかな。自分が気を使わなくていいから、逆に楽だと感じる。別に彼女だったらキッチンに入ろうがご飯を作ってくれようがいいのかもしれないけれど、そうじゃない人もいるからね

「いいにおい…美味しそう」

ニンニクは使われたくないだろうけど、とりあえずただヤゲン軟骨を塩コショウと鷹の爪で味付けしただけのものを出す。彼女が両手を差し出してきたのでその上にお皿に乗せたそれを乗せると運んでいってくれた。そしてそのまま座る

「さ、萩原くんお箸ちょうだい!あれでもいいわよ、つくってするやつ!」

「つく?」

「あの、ほら、つく、って…するやつ…」

名前が出てこないらしく、人差し指と中指、親指で何かを持った仕草をしてテーブルにそれを向ける。あ、爪楊枝だなって思ったけど、つくって…ギャップだよね、なんて一人でクスクスと笑いつつもお箸を取りにいき、彼女に差し出した。ちなみにお箸をいっても割り箸だけど。彼女の前に座って、改めて二人でいただきますをして飲み食いを始めた。とくに色っぽい何かがわるわけでもなく、ただ二人で雑談をしていく
陣平ちゃんの話しになった時、彼女がなんとなく落ち着きが無くなった。あぁ、なるほど、聞きたいんだなー…なんて思った瞬間に自分の中でからかうというスイッチが入ってしまった

「どうしたー?なんかソワソワしてるけど」

「あの、さ…ま、松田くんと萩原くんって…いつから、なの?」

やっべぇ、なまえちゃん面白すぎる…。今すぐに顔を覆って大笑いしたくなった。俺と陣平ちゃんで何を想像しているのかわかんないし、別にそれに偏見は無い。ないけど俺と陣平ちゃんって…多分俺が漫画か何からだったら吹き出しに笑っていう文字が大きく出ていたと思うくらいには、笑いたい

「んー…いつからだろう、気が付いたらいつの間にか?」

「素敵ね…」

うん、何が?からかおうって決めたのは自分だけど今にも笑い出しそうでやばい、ちょっと失礼してなまえちゃんに一言断ってからすぐそこのベッドの上にある枕に顔を埋めて思い切り顔を緩めておいた。声を出せないのが残念だけど肩は完全に震えているはず。

「ねぇ」

なんて声が案外近くで聞こえて枕から彼女がいた方向へと顔を向けたら、本当に近くにいたのでお互い驚いて離れた

「ご、ごめん」

「いや俺のほうこそ…。それで、何?」

「うん、あの、どこまで行ってるのか聞いてもいい…?」

どこまで聞くのこの子…

「どこ…って、そりゃ恋人同士だったら…なあ?」

違うけど。否定も肯定もしてないのはこの子気づいてねぇんだろうなー…
ちょっとだけ真面目な顔で答えてみたんだけど、なんで照れてんの

「それでっ…ど、どっちが上なのっ…!?」

あ、そういう……。顔を真っ赤にして、スーツのスカートの上で拳を握りしめ結構、いやわりとな声量で問いかけられた。そこまで想像しちゃってんのかー。なんて冷静に思いつつ自分の中の優しさできちんと説明するべきか、このままでいてあげるべきかを少しだけ考えた。本来なら人には優しくありたいと思うんだけど…
なんてなまえちゃんをちらっと見てみたら、からかおうっていうほうにメーターが動いてしまう

「その時によって…」

「どっちも!?」

だいたいどっちがどっちとかよくわからないし、俺も松田も…そういう気は無いんだよなまえちゃん!女の子に乗られるのはいいかもしれないけどそういう事じゃねぇよな!?そうなるとやっぱりどっちつかずな返事するしかないんだよ!
あぁ、でもなまえちゃんが一人で楽しそうだ。これいつ誤解解くかなと思いつつお酒を飲み干している彼女を見ていた

「なまえちゃんってそういうの好きなの?」

その問いかけには一瞬止まって、それから眉を寄せてから首を傾げた。

「好きだったってわけじゃないの」

そう伝えてきてから、またおつまみを食べ始めて、お酒を飲み始める彼女はどうやらそれ以上は言わないらしい。それにしてもからいかいすぎたし遊びすぎた、この修正はいつやればいいのか、と思いつつもそうだからこそこうやって何も気にせずに遊びに来てくれているのかもしれないと思ってしまえばこのまま甘い汁でも飲んでいようかなって思ったりしてな

でも嘘ついてたのがバレたら「嘘つき!」ってなったりしねぇかな。うーん

「ちょ、なまえちゃん寝ちゃダメ」

「うん、帰るわ…眠くなってきた。お片付けはまた今度するわね」

どういう事だ。まあ酔うのは仕方ないか、テーブルの上にはなかなかの量の缶が置かれているし。とりあえずタクシーを呼んでなまえちゃんを送る事にした。一応寝たりはせずに起きていてはいるから、そのうちに彼女をタクシーに乗せて一緒に乗った。酔った人を乗せるのはタクシーの人は嫌がるんだけど、このおじさんもどうやらそうみたい。まあ気持ちはわかるんだけど、そんな露骨に嫌な顔しないでおじさん…
住所を伝えてから、こっちをちらっと見てきたので笑みを返しておいた
そのうち具合の悪そうでもなく、ちゃんと背もたれに背中を預けておとなしく外を眺めているなまえちゃんを見て安心したのか、見られる事なく家に連れて来てもらった。お金を払ってから、待たせるのは忍びないのでとりあえずはタクシーのおじさんとはさようなら、一応足取りがおぼつかないので部屋まで送り届けようと思って。彼女の部屋に辿り着くまでには項垂れて歩き始めて壁伝いに歩くもんだから、そうなると確実によそのおうちの扉に体を擦らせてしまう。それなら俺のほうに寄り掛かってもらったほうがいいだろうと思ってなまえちゃんの肩を抱き寄せた

「電動…」

「ん?」

「電動で何かやってくれる科学的何かが欲しい…」

「ねぇ、何言ってんの」

「ほら、あるじゃない?マシン作って、歯磨きとかご飯とか…」

「あー…うん、映画にあるようなやつな…。」

真顔で言うから何事だと思った。なまえちゃんが鍵を開けたので中に入るまではしてあげると、中に入ってすぐに段差に座って靴を脱いだ。

「大丈夫?」

「はい、あと最悪どうしようも無い時はそのまま寝ますので」

「そ、そう…。まあ気ぃつけてな?」

なぜか敬語になったなまえちゃんにそう伝えると、可愛い笑顔で親指を立てられた。不安は残るけど、とりあえずここに自分が残っていたからといってちゃんとお世話ができるわけでもないし。そのまま御礼を言って奥まで引っ込んでいってしまったので鍵を借りて外から鍵をかけてポストに入れておいた

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