ガキィン、キィン、と何かがぶつかり合う音。
「アーチャー!!」
女の叫び声の後に続いて闘っていた赤い外装の男の頭に黒い男の回し蹴りがクリーンヒットした。ズドンッ!!と凄まじい音を立ててコンクリートに罅をつくる。
「なんだよ、こんなモンか」
詰まらなそうに男は刃物をくるりと回した。そして次に狙いを定めたのは勿論、
「キレイな顔してんねェ」 「!!」
一瞬で間合いを詰められ遠坂凛は息を呑んだ。闇にその男の赤い瞳が妖しく光る。ぐっ、と睨みを利かせせめて呑み込まれないように、とすれば男は目を見開き、笑い声をあげた。
「いンや殺す気なんざねぇから安心しな、お嬢ちゃん」 「――!」 「あの赤いのも数分すりゃ元通りだ」
そう言って後ろで倒れているアーチャーを指差す。既に起き上がろうと腕に力を込めていたところで男は口笛を吹いた。
「脳みそシェイクくらいにはなってる筈なんだがなぁ、いやぁお見逸れしました」
完敗、完敗、と両手をあげる男にアーチャーは睨みを利かた。しかしまだ立ち上がれない。
「余所見してんじゃないわよ!!」
目の前の男がアーチャーに視線やった事を良いことに魔術刻印により直ぐ使用できる「ガント」を左腕を突きだし打ち込む。
―――取った!
そう、遠坂凛は思った。 がしかし現実はそう甘くはない。
「こんな危ないモン人に向けちゃあ駄目だぜ?」 「!!」 「凛ッ!!」
突きだした左腕を掴み男は遠坂凛との距離をぐっと詰めた。 ちゅ、と軽いリップ音を鳴らしその頬に口付ける。は、とアホ面している遠坂凛の顔を見て男は吹き出した。
「口にして欲しかった?」 「――!」
漸く理解した遠坂凛は顔を赤くして単純に暴れだす。男はクスクス笑いながらその場を飛び退いた。
「可愛いお嬢さん、今度はもっと俺を楽しませてくれよ?」 「だ、誰が…ッ!」 「あ、ちゅーしてくれても全然構わないぜ!寧ろ待ってる!」 「するかーっ!!」
ガオーと顔を真っ赤にして怒る遠坂凛と今にも飛び込んできそうなアーチャーに「また"後で"なー」と言ってその身を翻して、男は去っていった。
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