10/23 Wed 23:30:26


(水柱様は機嫌がいい)

「…ねえ、何の話をしてるの?」
「!すみません!なんでもありません!」

私を見ながらひそひそと話す隊士に後ろから声をかけると、目を泳がせながら走り去ってしまった。これに限った話ではなく、最近すれ違う隊士から好奇な目で見られている。いい気はしない。せめて原因さえ分かればと話しかけに行くのだが、決まって逃げられてしまう。

「どうした、随分と不機嫌そうな顔をしているな。」
「…そっちは随分と機嫌がよさそうだけど。」

今日も仲良く二人揃って水柱が声をかけてきた。普段の模範となるような威厳のある立ち振る舞いと違い、錆兎は眉を上げながらも口元は緩んでいるし、義勇に至ってはむふふと効果音が出そうな笑顔だ。嫌な予感しかしない。

「とてもいいことがあった。」
「鮭大根が美味しかったとか?」
「それ以上に。」
「…へえ?」
「不機嫌なお前に良い事を教えてやる。」

―水柱二人を恋仲におく一人の隊士がいるって噂、聞いたか?
Giyu Tomioka&Sabito






10/23 Wed 22:50:23


(水柱様は機嫌が悪い)

「一体どういうつもりだ?」

口を揃えて二人の水柱は言った。吊上がった眉に思わず委縮しそうになる肩を気力で押さえつけた。どういうつもり、と言われましても。同期が柱に就任したことを祝いたくて、”水柱様”と呼んだだけなのに。怒られる謂れはないはずだ。

「気に食わないことでもあった…?」
「ああ、心底気に食わない。」

錆兎は堂々と自分の感情を口にするが、義勇は静かに目を細めて睨んでいる。左右に並ぶ二人の表情を行ったり来たりして見ても原因など分かるはずもない。とりあえずその場凌ぎの謝罪をしたら、見透かされていたようで更に怒気が強まった。

「…二度と水柱様などと他人行儀な呼び方をするな。」

やっと口を開いた義勇が吐き捨てるように言った。賛同するように錆兎も首を縦に振る。

「でも、立場が…。」
「そんなものは関係ない。俺達がいいと言っているのだから他人に何を言われようが気にするな。」
「…まあ、お前が対等な関係を望むのであれば叶えてやるが。」
「え?」

―恋仲ならば対等だろう?
Giyu Tomioka&Sabito






10/15 Tue 23:35:29


(恋柱の継子が欲しいA) ※覚醒後

「甘露寺さん、いつになったらあの子貸してくれるの。」
「(きゅん)それとなく話してるのだけれど本人は行かないの一点張りで…。」

甘露寺さんの屋敷に暇を見ては通いつけて1か月が経つ。目的は割烹着のあの子だ。恋柱の継子である彼女を気に入った僕は、何としてでも手に入れたくなった。師匠である甘露寺から許可が出れば外堀は埋まったも同然と考え、仲介役をお願いしている。今日もまた、その相談で屋敷を訪れている。

「断る理由は?」
「霞柱様のような麗しい方の隣を歩くのは恐れ多い、って。」
「僕が嫌だとは言ってないんだね。」
「そうねぇ、それは言ってないわね。」

僕自身は嫌われていないようで安心した。まだ勝算はある。

「…この際直接誘ったらいいんじゃないかしら?やっぱり女の子は直接誘われた方がきゅんきゅんするものよ!」

手を組んで重い壁る様な仕草を取った甘露寺の姿は恋する乙女そのものだった。あの子もそうなのだろうか。迷って唸っている僕を知ってか知らずか、甘露寺は任務から丁度返ってきたあの子を呼んだ。待ってよ、まだ心の準備ができてない。
Muichiro Tokitou






10/14 Mon 22:46:15


(恋柱の継子が欲しい@)※覚醒後

師匠のパンケーキ作りの手伝いをしていると玄関の戸を叩く音がした。お昼時の来客は決まって蛇柱様。私が出るよりも師匠が出迎えたほうが喜ぶだろうと、フライパンを握る師匠に自分が代わると声をかけた。ぽつぽつと表面に泡が立って来たらひっくり返す合図。薄く切った木べらを差し込んでひっくり返すと、茶色い焼き目が綺麗な丸を描いていた。二枚、三枚と同じ調子で焼いていくが、師匠はなかなか戻ってこない。蛇柱様であれば召し上がっていくため家に上がるはずだが。今日は違う方がお見えなのだと解釈し皿にパンケーキを積み上げていった。


「あら、たくさん焼けたわね!」
「師匠お戻りになられたんですね。…あ。」
「今日は時透くんが来てくれたの。三人で食べましょ。」

戻ってきた師匠の傍らにいたのは霞柱様であった。霞柱様は挨拶もそこそこにじっと私と、私の手元を見ている。何か変なところがあっただろうか。やがてゆっくり近づいてくると私の隣に並んだ。

「それ、いつも着てるの?」

霞柱様が指さしたのは、師匠の趣味で作られた西洋の割烹着。ひらひらと装飾が付いたものであった。

「いいえ、調理の時のみです。」
「ふーん。…いいなぁ。」

霞柱様は男性だというのに明らかに女性向けであるこの割烹着が着たいのだろうか。でも、彼は一見女性に見えるぐらい童顔であるし。私はまだこの時、「いいな」が何を指して言ったのか気づいていなかった。
Muichiro Tokitou






10/08 Tue 22:58:13


(継子に手を出したいB)

「いい加減離してくださいね冨岡さん。怒りますよ。」
「無理だ。」
「いい歳して拗ねないでください。」
「拗ねてはいない。」

今日から柱稽古だ。早速宇髄さんのところへ向かおうと支度をしていたら、冨岡さんの腕が腰に巻き付いて離れない。屋敷のあらゆる出入り口には掛けられており、徹底的にここから出す気はないらしい。

「稽古ならここでも出来る。」
「他の柱の方に稽古をつけてもらえる機会はまたとありません。」
「…俺では不満か。」
「そういうわけでは…。」
「ならば問題ないな。」

行くなとは言わず、行かせない方に誘導する言葉運びはこの人が一番得意としていることを忘れていた。回された腕がゆるゆると腰を撫でてきたから叩き落として、締めた隊服の襟首を寛げる。どうせ屋敷から出られないならば堅苦しくする必要もないのだ。
Giyu Tomioka




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