11/20 Wed 20:49:16


(ご都合血鬼術:思考駄々洩れ編)

「おはようございます義勇さん!ああ、寝癖がついててなんて可愛っ…!あ!ごめんなさい違うのです、違うのです、これは口に出すつもりはなく!」
「…?」
「ふふ、大人なのに子供みたいで…っ!」

昨夜、任務に向かった私を待ち構えていたのは妙に大人しい鬼だった。死を受け入れたように一歩も動かなかったからあっさりと首を落としたまでは順調だったと思う。転がった頸は喚きこそしなかったものの、絶えず笑みを溢しており今まで出会ったどんな鬼よりも悍ましかった。ぞくりと背筋が凍るような感覚を覚えたが身体には何の影響もなさそうで、蝶屋敷に寄ることなく師範の元へ戻ったのである。それが間違いだったと気づいたのは寝起きの冨岡の顔を見てからであった。普段より癖のついた髪を見て、可愛い、子供みたいと思っていたらいつの間にか声になっていた。無意識に出たものかと口を手で覆って引っ込めたのだが、開いた口は意志に反して止まってくれない。ここまで来たら流石に他者の力が働いていると確信する。

「任務明けで寝ていないので失礼します!あ、でも義勇さんと一緒に寝た…ん…ぐっ…。」
「先程から自分が何を言っているか分かっているのか。」
「恐らく血鬼術の類かと思うのですが、思考が口から出てしまうようで制御できないのです!」
「そうか。」

弟子が厄介な術に悩まされているのに、そうかの一言で済ます師範こそ鬼だ。

「誰が鬼だと?」
「ああ!すみませんすみません!」

思考が読めない師範こそ血鬼術にかかればよかったのに、なんて思っていたら今度はげんこつが頭に落とされた。
Giyu Tomioka






11/12 Tue 22:02:02


(犬猿の仲)

宍色の髪が目の前で揺れるだけで不快でたまらない。特徴的な髪色は目線を逸らしていようがお構いなしに風景を形どる。気に食わないだとかそんな生温い感情ではなく、心の底から嫌いだと思っている相手に吐く言葉は針と例えるのが妥当だろう。

「邪魔なんだけど。」
「お前がそこを通らなければいい話だろうが。」
「先に通ろうとしたのは私だ。後から来たお前が譲れ。」

蝶屋敷の縁側にてすれ違おうとした私達だが、丁度掃除用の水の入った桶が置かれていたためにどちらかが避けなければならない事態に直面した。跨いでしまえばいい話なのに、互いに譲る気は更々なかった。本来ならば陽のあたる温かい縁側のはずが、凍り付くような空気が漂っている。

「俺は忙しい。お前に構っている暇などない。」
「こちらもこの後約束事がある。普段男だなんだと言う癖に女を優先させないのか。」

鼻で笑って煽ると、生意気な兎は「お前を女と認識していない」と宣った。何故だか心底腹が立った私は踵を返してその場を後にした。
Sabito






11/07 Thu 22:29:57


(婚姻を迫る水柱様A)

「お前に似合う髪飾りを買ってきた。」
「反物だ、身体を冷やさないようにしろ。」

街に任務に出るたび水柱様はお土産を買ってきては、私に有無を言わさず受け取らせる。髪飾りなんかはもう八個目で、一週間毎日付け替えてもおつりがくる。連れてこられた際に持って来た着物や草履なんかはもう箪笥の奥底に眠っていて、身につけるものは全て水柱様から送られたものだ。お二人の選ぶ品々はとても品が良いのだが、一つだけ欠点があるとすれば機能性を全く考えていないことだろう。

「水柱様、綺麗な着物をいただけるのはありがたいのですけれど、掃除をするのには向きません。」
「掃除ぐらい俺がやる。気にしなくていい。」
「袖も長いので料理をするのには不向きですし…。」
「…割烹着を用意しよう。」
「そうではなく…。」

断られることを知らないお二人は基本何を言っても無駄だ。諦めて受け入れる外ない。しかし、時には断らねばならないこともある。

「ああ、よく似合っている。次は白無垢にしようか。」
「では俺は紅を用意しよう。」
「あの、水柱様?」
Giyu Tomioka&Sabito






11/04 Mon 23:31:41


(婚姻を迫る水柱様@)

水柱が住む屋敷は人里離れた静かな竹林の先にある。訪れるものも少なく、俗世から乖離された彼らだけの居場所だ。そこに連れてこられたのは二週間前ほど前のこと。しのぶ様の元で修業を重ね、アオイと肩を並べて隊士の治療や訓練に力を注げるまでに成長した私は、漸く身を救ってもらった鬼殺隊にご恩を返せると思っていた矢先であった。

「俺と共に来ないか。」
「君に力を貸してほしい。」

治療中の炭治郎さんを訪ねていらっしゃった水柱様達に偶然お会いしたのである。力を貸してほしい、という言葉を真に受けて二つ返事で承諾した。しのぶ様には自分達から話すと言って、その日のうちに抱きかかえられて屋敷に運ばれてきたのだ。

「いつになったら契りを結んでくれるんだ。」
「俺達のどちらかを選べないのであれば宇髄の様に二人共でもいい。気にしないと言ったら嘘になるが。」

毎日のように婚姻を迫ってくるお二人にはほとほと困っていた。私が連れてこられた目的はあくまで治療や日々の生活の手助けであったはずで、夫婦になるためではない。はっきりと拒否を口にしても、恥ずかしがっているだけだと思われているのか効果はなかった。厄介なことに外との関りを一切遮断され、しのぶ様との手紙のやり取りも内容を精査されている。私のこの状況を気付いてくれるものはいないのだ。

「そろそろ俺達はここを出る。」
「いい子にしてるんだぞ。」

大きな二つの手が頭を撫でて離れていった。
Giyu Tomioka&Sabito






10/31 Thu 23:02:21


※Twitter log@

ハロウィン(冨岡)

「なんですかそれは…。」
「着せられた。」

黒い羽織に鎖鎌、髪に括られた骸骨。ハロウィンなんて興味ないと思っていた冨岡があまりにも気合を入れた仮装をしていたから驚く。聞けば宇髄やしのぶに「みんな着てるから」と言われ、されるがままに着せられたらしい。いつも無表情の冨岡が珍しく不服そうに眉を顰めているから堪えきれず笑ってしまうと、気を損ねたのか持っていた鎖鎌を手首に引っ掛けられて拘束された。

「ん…?冨岡さん…?」
「安心しろ、胡蝶からお前の分も貰って来た。」

冨岡の手に握られているのは冨岡とよく似た死神の衣装。お揃いなら悪くないかと思っていると、隊服のスカートに手を掛けられる。脱がそうとしていると気づいて抵抗するが、手首からは鎖が擦れる音が聞こえるだけ。

「着るためには脱がす必要があるだろう。動くな。」
「一人で着られます!」
「……。」


ハロウィン(錆兎)

「あまりじろじろ見ないでくれ…。」

悪魔の衣装を纏った錆兎が可愛くて見つめていたら耳まで真っ赤にして俯いてしまった。男たるもの浮かれて仮装など、と言っていたが冨岡に巻き込まれて着せられたらしい。衣装は精巧に作られていて羽や尻尾を弄って遊んでいると手を掴まれて顔をぐっと近づけられた。

「もう十分遊んだだろう、次は俺の番だ。」

開いた口から覗く舌が艶めかしく誘う。生唾を飲んで見入っていると抱き留められた。先程錆兎の衣装を弄っていた羽と尻尾のある場所、背中と腰の付け根を人差し指で突かれる。決して厭らしい手つきではないのだが耳元で囁かれるたび鼓動が跳ねる。

「俺が本当の悪魔だったならばこれだけではすまないぞ。」
Giyu Tomioka&Sabito




home