クスクスと華やかな笑みを湛えるアフロディーテさん。
フッと軽い笑みを口の端に浮かべるシュラさん。
そして、ムッとした顔で頬杖をつくデスマスクさん。
均衡の取れた三角形。
「キミに彼女が出来たら、世紀末が来るな。」
「滅亡の日は近い、か?」
「テメェ等、好き勝手ぬかしやがって。」
そこから離れてポツンと存在する点と点。
そんなアイオリアと私は、黙って彼等の話を聞いているだけだった。
ただし、心の中では、どうにかしてこちらの話に持ち込もうと、隙を伺いながら。
「アイオリアはどう思う? この蟹に恋人なんて出来ると思えないだろう?」
「そうだな……。」
三角形の一角、アフロディーテさんが、思い掛けずアイオリアに話を振った。
その刹那、僅かに私をチラリと見て、それから、おもむろに口を開く彼。
その視線は合図だ、私には分かった。
「そういうお前達には、恋人はいないのか?」
「俺達に?」
アフロディーテさんとシュラさんが、視線を交し合う。
一方は瞼を伏せて苦い笑いを、一方は表情は変えずに片眉だけクイッと上げて。
「残念ながら、私とシュラにもいないよ。言ってて悲しくなるけどね。」
「そうか……。だが、仲の良い女官なら居たらしいではないか?」
「は? 女官だぁ? 誰の事だよ?」
「確か名前は……、『浅香』とか言う。」
「っ!!!」
その一瞬で、空気が変わった。
突然の疾風のようにザザァーと音までも聞こえてきそうな気配。
三人が三人とも鋭い視線をアイオリアに投げ掛け、半瞬後には、直ぐに視線を逸らした。
私達の周囲の空気が、ピリピリと張り詰めている。
先程までは、風に穏やかに揺れていた薔薇達が、今は鋭い緊張の中で固く震えているように思えた。
「お前達、やはり……。何か知っているな?」
「どういう意味だ、アイオリア?」
「何故、ココで彼女の名前を出した? 私達から何を探ろうとしているんだい?」
崩れたバランスの代償は大きい。
この張り詰めた空気の中で、呼吸が苦しくなる。
そして、無意識に震え出していた私を、テーブルの下で手を握っていたアイオリアが気付いて、更に強く握り締めてくれた。
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