シャカさんの退室で、シーンと静まり返った執務室。
その静寂を破って、アイオリアがボソリと呟いた。


「つまり、こういう事か? 黄金聖闘士、全員にアリバイがある、と。」


そうだ。
これで全員にアリバイが成立する事になる。


ムウさんとアルデバランさんは、白羊宮で聖衣の修復をしていた。
サガさんとシャカさんは双児宮にいた。
カノンは海界に行ってしまっているし、デスマスクさんはお弟子さん達と修練中だった。
ミロとカミュとアフロディーテさんは、シオン様と一緒に、この執務室にいた。
童虎さんは中国に在住していて、そもそも聖域にはいない。
アイオロスさんは長期の国外任務中。
シュラさんは昨日からの外地任務で、未だ戻ってこない。
そして、アイオリアは私と一緒に行動していた……。


「どういう事だ、一体?」
「ねぇ、アイオリア。やっぱり、偶然だったんじゃないの?」
「そうだね、人為的な痕跡が何もなかったんだろう? だったら、私も自然なものだったと思うよ。」
「それにしては、偶然が過ぎる。あのタイミングは、計ったとしか思えん。」


私とアフロディーテさんの言い分にも、まだ耳を貸そうとしないアイオリア。
険しく眉を顰めたまま、強く首を振る。


「俺も事故だったんじゃないかと思うな。」
「お前は、あの現場を見てないからそう思うんだ、ミロ。あれは……、まさに浅海を狙ったとしか思えない崖崩れだった。」


私は小さく溜息を吐いた。
アイオリアは強情だ。
一度、言い出したら、なかなか意見を変えはしない。


でも、アイオリアの言い分も一理あるとは思う。
確かにあのタイミング、偶然にしては出来過ぎていた。
あんな巧みなタイミングで、崖崩れが起こるだろうか?
もし、崖自体が脆くなっていたと言うのなら、もっと早くに崩れていてもおかしくはないし……。


「もう、何が何だか、まるっきり分からないわ。」
「ここにきて、お手上げかな?」
「お前が言うな、ミロ。」


諦めと困惑の入り混じった溜息が止まらない私。
それを同情の入り混じった眼差しで見つめる三人。
アイオリアは納得出来ないといった表情で、ムスッとして黙っている。
全てが八方塞りで、成す術もなくなってしまった。
これから、どうすれば良いのか?
何処に向かっていくべきなのか?
それすら分からなくなって、ただ溜息ばかりが零れた。





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